9月20日、井手よしひろ県議が所属する県議会保健福祉委員会は、県立病院改革と医師不足対策に関する参考人を招致し、意見を聴取しました。
 午前中、福岡県の県立病院改革に関する携わった慶応義塾大学大学院の高木安雄教授からお話を伺いました。
県立病院改革のポイント
  • 公的病院は、「住民の暮らしと命を守る」「地域医療の確保」などを目的に設置された。しかし、民間病院による医療供給体制が整備され、自治体の財政が悪化したことにより、民間との不公正競争や税金との無駄遣いとの指摘が出され、官から民への大きな流れとも相俟って、病院改革が必要性が強調されてきた。
  • 福岡県の場合、県立病院は規模が小さく、医療機能が民間よりも劣っていた。また、医業収支比率が74.5%(全国都道府県立病院平均83.9%、茨城県76.3%)と低く、職員給与比が84.4%(全国都道府県立病院平均63.9%、茨城県78.7%)と高くなっている。人件費においては、看護婦長等(報酬:5等給、6等級)の該当者割合が59.1%と国の1.0%と比べて極めて高い現状がある。こうした非効率な経営の結果、福岡県の県立病院は累積欠損が134億2900万円(茨城県は40億4469億円)に上り、危機的状況となっている。
  • 福岡県の県立病院がこうした赤字体質に陥った理由は、1)病院の運営理念、活動目標、意思決定が明確になっていない。または、職員に周知徹底されていない。2)病院の運営・経営状況を評価するシステムができていない。3)責任体制が県立病院課と病院の二重構造の中で曖昧で、各病院の独自活動を鈍らせている。
  • 自治体病院改革の選択肢は、1.地方公営企業法の全部適用、2.地方独立行政法人への移行、3.PFI方式による病院経営、4.公設民営化方式、指定管理者制度による経営、5.民間への移譲、の5つがある。
  • 福岡県では、県立病院は実質的に倒産状況であり、4病院は「民間移譲」、1病院は「公設民営化」で改革することになった。

 午後からの参考人招致では、国立保健医療科学院政策科学部長の長谷川敏彦氏を迎え、医師の需要と供給の課題について意見を伺いました。
医師不足への対応策
  • 2000年頃までは医師過剰論が大勢を占めていましたが、最近では不足感や不足論が台頭してきた。(1986年には国の検討会で95年を目途に医師を10%削減の方針。94年には、10%削減方針を継続。97年に、医学部定員を削減方針を閣議決定。98年、10%削減方針継続)
  • 国際的に比較すると、医師数は先進国29カ国中26番目、看護師は30カ国中19番目、歯科医師は30カ国中10番目、薬剤師は24カ国中3番目となっている。
  • 医師の需要と供給のバランスを統計的に見て見ると、医師数の不足を裏付ける指標は見つけられない。
  • 近年の医師不足の要因を分析すると、1)高齢の医師の大量退職(軍医出身の医師と団塊の世代の医師退職時期)、2)若年医師の診療科のばらつき、3)医師の機能分化と集約を高めるために卒後研修制度のスタートなどの制度改正などが考えられる。
  • ワークスタイルの変化(パート、チーム、グループ)が起こり、医者と患者の関係が激変し、主治医制の崩壊に繋がる
  • 医師不足に対する対応策は、1.医学部定員の増加、2.外国人医師の導入、3.医師以外の医療行為(スキルミックス)、4.国民参加、5.医師の労働効率改善、などが考えられる