10月7日に開催された県議会一般質問で、ジェンダーフリー教育の是非が議論され、公立学校で採用されている混合名簿について、川俣勝慶教育長より新たな見解が示されました。
 男女混合名簿は、学校の出席簿等の名簿を、五十音順に並べる際に男女一緒に並べるものです。男女平等や共同参画の立場から、県の策定した男女共同参画実施計画(県ハーモニープラン)の進捗を図る指標として取り上げられてきました。茨城県では、2007年4月現在で小中学校で約8割、高等学校で5割の実施率となっています。
 この混合名簿について、7日の一般質問では、自民党の小田木真代県議が、「混合名簿はジェンダーフリー教育の象徴である」と主張しました。これに対して、川又教育長は、ハーモニープランの指標から混合名簿の実施率を外す見解を示しました。その理由を川又教育庁は「男女混合名簿の推進は、いわゆる『ジェンダーフリー教育』につながるものと、誤解を受けることもある」からと述べています。混合名簿はジェンダーフリー教育ではないが、そう誤解されるから止めるという理屈には到底納得できません。
 そもそも男女混合名簿に対して、行政が異議を唱えたのは、2004年6月の東京都教育委員会の判断からです。それまで、ジェンダー・フリーという言葉については、一般的に「社会的・文化的な性差からの解放」という意味で使われていたものでしたが、「一部で『男らしさ』や『女らしさ』をすべて否定するという意味で使われている」とする見解を示しました。その上で、都立学校長に出した通知では「ジェンダー・フリーに基づく男女混合名簿を作成してはならない」と指示しました。
 小田木県議の質問では、修学旅行で混合名簿で男女同室が行われていたという他県の例を挙げることによって、男女混合名簿の功罪に全く触れることなく、混合名簿は「区別=差別」といった誤った認識であると結論づけています。
 井手よしひろ県議は、学校における男女平等、男女共同参画のあり方については、もう少し慎重で県民各界の意見を集約した議論が必要であると主張します。今日の県議会の議論だけで、男女混合名簿が葬り去られることだけは避けたいと思います。
小田木真代県議の質問
 ジェンダーフリー教育についてお伺いいたします。
 男女共同参画社会基本法の制定により、男女の特性を認めあいともに共生する社会の実現のための取り組みが行われているところであり、私も、正しい理解の下での男女共同参画社会の実現を望むものであります。
 しかし、近年、法律の都合のよい解釈のもと、性差を全く否定するような、また、男らしさ女らしさを否定するような過激な性教育やジェンダーフリー教育が、教育の現場において行われていることが、大変問題となつております。我が自由民主党ではこうした現状を捉え、「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクト」を立ち上げたところであります。 私もそのシンポジュウムに参加をしてまいりましたが、とても私には理解することのできないような教育が各地で現実に行われていることに大変驚きました。
 そこで本県の現状はどのようになつている他の先生方のご協力もいただきながら調査をさせていただきました。過激な性教育については、幸いなことに本県では行われていないものと理解することができましたが、ジェンダーフリー教育についてはいささかの疑問を感じたところであります。
 まず男女混合名簿の導入であります。本県では学校における男女浪合名簿の導入を男女共同参画実施計画の指標項目に掲げており、平成17年5月現在で県内小中学校では約8割、高等学校では約5割で導入されております。他県では混合名簿を使用して、修学旅行で男女同室などが行われており、全国的に問題となつております。学校における名簿はあくまで便宜上の区別であり、それを混合にすることは「区別=差別」といった誤った認識であり、ジェンダーフリー教育の象徴ともいわれております。
 また、運動会における騎馬戦についてでありますが、調査の結果、小学校で騎馬戦に女子が参加している学校は、154校、うち男女混合の騎馬戦を行っているところが53校、中学校では、女子参加が35校、混合が2校で、本県の小中学校で行われている男女混合騎馬戦の合計は55校をもありました。男女混合で騎馬戦を行う趣旨は、助け合い協力する心を育む、運動能力を高める、忍耐力を培う、などであります。このようなことは、男女混合の騎馬戦をやらなければ得られないことなのでしょうか。
 これまで教育庁では、本県においてジェンダーフリー教育は行われていないとのことでありましたが、今回の調査結果は、まさに本県においても行われていることを示しているのではないかと思います。ジェンダーフリー教育は男女共同参画の理念とは全く違うものであります。
 ジェンダーフリー教育については国会においても取り上げられ、中山文部科学大臣より、問題点が指摘されております。
 そこで、今回の調査結果の数値をどのように捉えておられるのか、本県のジェンダーフリー教育の実態と考え方について、教育長にお伺いいたします。
 また、男女混合名簿の導入が本県の男女共同参画実施計画の指標項目に掲げられていることについて、教育長はどのようにお考えになるのか併せてお伺いいたします。
(管理者の責任で文書起こしを行いました。正式な議事録では無いことをお断りいたします。)

川俣勝慶教育長の答弁
 ジェンダーフリー教育についてでございます。
 学校におきましては、社会科、家庭科、道徳、特別活動を中心に、男女の特性や違いを正しく受け止め、互いに相手のよさを認め合い、助け合って生活していこうとする、男女共同参画の視点で教育を行っており、画一的に男性と女性の違いを一切排除しようとする意味で用いられております、いわゆる「ジュンダーフリー教育」は行っておりませんし、また、行ってはいけないと認識しております
 議員ご指摘のありました、男女混合で騎馬戦を行うことでございますが、小中学校55校で行われており、そのうち、男女混合で騎馬を組む学校が、小学校で4校、中学校で1校、また、騎馬は男女別につくるが、男女の別なく戦うという学校が、小学校で49校、中学校で1校ございます。その主な理由といたしましては、男女が助け合い、協力する心を育てるためや、運動会の恒例種目となつているからということで、実施している学校が多くございました。
 しかしながら、小学校高学年から中学生の時期は、成長・発達のうえで、男女の性差が出てくる時期であり、また、心の面でも羞恥心が出てくる時期でありますので、方法はどうであろうと、男女で一つの騎馬をつくることや、男女の区別なく戦うことは、好ましくないと考えており、今後は、十分学校を指導してまいります。
 また、男女混合名簿については、平成8年に「いばらきハーモニープラン」において、男女共同参画社会の実現のための理解啓発の方策として、混合名簿の導入を因ってきたところであり、平成14年策定の「茨城県男女共同参画基本計画(新ハーモニープラン)」にも、指標項目としてそれを掲げてきたところでございます。
 しかしながら、男女混合名簿の導入の推進は、いわゆる「ジェンダーフリー教育」につながるものと、誤解を受けることもございますので、今後、指標項目につきましては、別の項目に替えてまいります。
 県といたしましては、男女が互いの違いを認め合い、互いに人権を尊重しながら、それぞれの個性と能力を生かし、共に責任を担うという、正しい理解の下での男女.共同参画の視点に立った教育を進めてまいる所存でございます。
(管理者の責任で文書起こしを行いました。正式な議事録では無いことをお断りいたします。)