日立市郷土博物館で開催中の会館30周年特別展示「のびゆく日立」を鑑賞しました。
 この博物館は、昭和50年に県内市町村では初の公立博物館として開館し、今年で30周年の佳節を迎えました。その記念特別展として企画されたのがこの写真展です。日立市発展の減点となった日立鉱山の開業、そして日立製作所の発展など日立市の鉱工業のあゆみを柱に、人々の暮らしや都市景観の変貌を表す写真、100点あまりが展示されています。
 白黒の写真パネルの中から、人々の汗や工場の喧噪が聞こえてくるような錯覚を覚えました。何のためらいもなく前へ前へと突き進んでいた日立の姿を思い起こさせてくれる展示会でした。
日立市郷土博物館30周年記念特別展示
写真が語る日立の移り変わり「のびゆく日立」
●とき:2005年10月5日(水)〜11月27日(日)
 (休館日:毎週月曜日)
●観覧料:200円(20人以上の団体は1人150円)、高校生以下と65歳以上は無料
●日立市郷土博物館
 〒317-0055
 日立市宮田町5−2−22
 0294−23−3231
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写真が語る日立の移り変わり「のびゆく日立」の紹介文
 今から100年前の明治38年(1905年)久原房之助によって日立鉱山が開業され、5年後の明治43年には日立製作所が小平浪平によって創業されます。
 このときを境に茨城県北部の農山漁村であったこの地域は急速に鉱工業都市に変貌していきます。
 昭和の戦時下には人口において水戸市をしのいで県内第一の都市となり、茨城県で最大の鉱工業集積地となります。
 太平洋戦争下、「軍需都市」となり、アメリカ軍の空襲を受け、大きな多くの人命を失い、まちは廃虚と化しました。
 日立市が戦災の痛手からたちなおるのは昭和25年(1950年)以降のことです。
 戦災復興都市計画が着手され、産業活動も軌道にのります。
 昭和30年には合併があり、日立市は南北に翼をひろげ、「大日立市」に飛躍しました。人口が再び第一位となったのはこの年からのことです。
 昭和35年にはじまる高度成長政策によって日立市の産業も順調に発展し、人々の暮しも豊かさをまし、行政も市民福祉に力をそそぎます。この時期の日立市の標語が「のびゆく日立」でした。
 一方で昭和38年にはじまる貿易の自由化は、昭和56年の日立鉱山の閉山をもたらし、昭和60年の円高への誘導は輸出産業である製造業に影響をおよぼし、日立市の産業構造を変えつつありました。
 昭和45年以降、人口の伸びはとどこおりはじめ、51年には水戸市に第一位の座をゆずります。
 展示する100点あまりの写真は、明治38年の目立鉱山開業からはじまり昭和45年前後までとしました。
 写真はまちと市民の動きのすべてを網羅できていませんが、写真にしか表れないおおくの事象は、私たちの歴史の認識を深く広いものにしてくれています。
 写真は私たちに静かに語りかけています。
 それらに耳をかたむけ、現代の日立市をとらえかえしてみることはできるのではないでしょうか。
 本展がみなさんにとってそうした機会となることを願うものです。