11月9日、自民、公明、民主3党の有志議員が、宗教的に中立な新たな国立戦没者追悼施設の建設のあり方を検討する「国立追悼施設を考える会」を設立しました。同議連には約130人が参加し、設立総会には約80人が出席しました。公明党からは、神崎武法代表、草川昭三副代表、冬柴鉄三幹事長、太田昭宏幹事長代行、井上義久政務調査会長、東順治国会対策委員長らが出席しました。
 設立総会では、会長に山崎拓前自民党副総裁、副会長に公明党の冬柴、民主党の鳩山由紀夫の両幹事長がそれぞれ就任。山崎会長は、「わだかまりなく追悼するにはどうするか考え、真剣に議論して一定の結論を得たい」と述べ、宗教的に中立で、既存の施設との両立を前提に議論し、提言していく考えを示しました。
 この後、2002年12月に国立追悼施設建設を提言した当時の福田康夫官房長官の私的懇談会で座長代理を務めた、劇作家の山崎正和氏が講演を行いました。
 総会後の記者会見で、山崎会長は、議連として2006年度予算案に新追悼施設建設の調査費計上を求めるかどうかについて、「あり得るかもしれないが、白紙だ」と語りました。冬柴幹事長は、総会で福田元官房長官が私的懇談会設置の理由に関して「靖国問題で国際世論や国内世論から批判が出るからではなく、わが国に国立追悼施設がないのは国際的に見てどうかという問題意識からだ」と発言したことに触れ、「同じ考えだ。外国の元首が日本に来ても祈念や献花ができる施設がないとの指摘もあり、そうした施設があった方が好ましい」と述べました。(関係者の発言は、公明新聞2005/11/10から引用しました)
追悼施設 実現してこその議連だ
朝日新聞(社説2005/11/10
 だれもがわだかまりなく戦没者を悼み、平和を祈る。そのための新たな国立施設の建設をめざして、自民、公明、民主3党の国会議員約130人が議員連盟を旗揚げした。
 先月、小泉首相が靖国神社を参拝した後に訪韓した自民党の山崎拓・元副総裁が呼びかけた。3年前、当時の福田康夫官房長官のもとにつくられた有識者懇談会が新施設を提言して以来、たなざらしにされてきた問題である。
 反対論ばかりが目立ってきた自民党から、新施設で近隣国との亀裂の修復をめざす動きが出てきたことは歓迎したい。
 先の大戦の戦没者をどう追悼するかをめぐっては、国内だけでなく中国や韓国なども巻き込んで対立が続いてきた。
 その打開策になりうるのが、懇談会の提言した「明治以降の日本がかかわった戦争のすべての死没者」を追悼する施設の建設である。
 戦没者に敬意と感謝をささげ、二度と戦争を起こさないことを誓う。そうした首相の思い自体は、私たちも共感する。政府の代表であればなおさら、ということなのだろう。
 ならばこそ、靖国神社にこだわるのではなく、首相が訪問するにふさわしい新たな施設を早くつくるべきだ。

(写真は、沖縄県糸満市摩文仁の「平和の礎(いしじ)」)
 井手よしひろ県議も、2001年8月の時点で無宗教の追悼施設設置の必要性をホームページで訴えています。再掲にはなりますが、改めでご紹介いたします。
宗教・宗派に偏らない国立墓地建設を
<2001/8/14 茨城県議会議員 井手よしひろ>
 靖国神社が持つ、戦前の軍国主義的拡張主義と切っても切り離すことができない歴史的意味と憲法の政教分離規定との軋轢とを考えれば、そこへの公式参拝をめぐって、毎年同じように議論が繰り返されるのは、大変心苦しいことです。
 日本の発展は、戦没者の方々の尊い犠牲の上に成り立っているんだという気持ちに、異論がある国民は少ないと思います。
 そうであるならば、「アメリカのアーリントン墓地やハワイのパンチボールのような、無宗教で開放された明るい国立の墓地をつくるべきだ」と、私は主張します。
 私も、1954年にパンチボールを、1992年にはアーリントン墓地を訪問しました。特にアーリントン墓地のジョン・F・ケネディー元大統領の墓所で、平和を祈る燈火を目の当たりしした時の、厳粛な気持ちは忘れられません。原色の紅葉の木々に囲まれた、国立墓地を思い出すと、日本にも是非このような施設がほしいと思うのは、私だけではないと思います。
 日本にも、沖縄には「平和の礎(いしじ)」があります。私は、1999年春に訪れました。「平和の礎(いしじ)」は、沖縄戦終結50周年を記念して平成7年6月、糸満市摩文仁(まぶに)の沖縄県平和祈念公園内に建設された記念碑です。世界の恒久平和を願い、国籍や軍人、非軍人の区別なく、沖縄戦などで死亡したすべての人々の氏名が御影石に刻銘されています。現在、日本人が22万あまりと、米国人1万4千人余り、韓国人263人、英国人82人、北朝鮮82人、台湾28人の合計約23万8千人の名が刻まれています。2000年の沖縄サミットでは、当時のクリントン米国大統領が献花し、話題となりました。
 現在、千鳥ケ淵には戦没者墓苑があります。これよりも大規模で、戦没者のみならず、例えば、国連のPKOに参加して犠牲となった方、消防活動で亡くなられた消防士、殉職した警察官という人たちもなど、社会や人々のために尊い命を落とされた方々をも併せて追悼できる国立墓地を検討すべきだと思います。そこに、国民や、国の代表者が、年1回、敬意や感謝を捧げる日があってもいいのではないでしょうか。それが、終戦の日、8月15日であったとしても問題は起こらないような気がします。また、外国の首脳にも献花していただけるようにしてはどうでしょうか。
(写真上:アメリカ・アーリントン国立墓地(1992年11月、井手よしひろ撮影)、写真下:千鳥が淵の戦没者墓地)