タミフル(リン酸オセルタミビル:Tamiflu)は、インフルエンザウイルスに直接作用し、ウイルスの増殖をおさえる薬品です。A型とB型の両方のウイルスに有効で、感染初期に使用することで、症状の軽減と、治癒が1〜2日早くなることが期待できます。
 インフルエンザウイルスに直接作用する世界初の飲み薬で、経口剤なので、安定した服薬効果があります。新型インフルエンザ(鳥インフルエンザ)にも有効とされ、その対策として各国で備蓄がすすめられています。スイスの製薬会社ロシュが製造し、日本では中外製薬が一手に販売しています。
 このタミフルは重大な副作用として、まれに異常行動や意識障害を起こすことが報告されています。11月12日に行われた日本小児感染症学会では、インフルエンザにかかった10代の男性2人が、タミフルの服用後に異常な行動で事故死したと、NPO法人「医薬ビジランスセンター」理事長の浜六郎医師が発表しました。
 それによると、岐阜県内の男子高校生(17歳)が2004年2月、タミフル1カプセルを服用、約4時間後にパジャマに素足で家から出て、近くの道路のガードレールを乗り越え、トラックにはねられ死亡。2005年2月には、愛知県内の男子中学生(14歳)が1カプセルを飲んだ約2時間後に、自宅マンション前で、9階から飛び降りて全身打撲で死亡しているのが発見されました。
 これに対して、製造元のロシュの関係者は「タミフルの服用とインフルエンザ感染による神経精神病行動発症の確率はほぼ同比率である。タミフルの服用により、そのリスクが高まるということは確認されていない」と述べています。
 副作用の可能性は否定できないとしても、タミフルは非常に有効なインフルエンザの治療薬です。11月14日に発表された新型インフルエンザに対する国の行動計画にでは、2500万人分の備蓄の必要性が明示されました。反面、メーカーの生産能力には限界があり、750億円に上る予算の確保とともに、薬品自体が確保できるかが問題です。
インフルエンザ薬:タミフル問題、学会でも論議
毎日新聞(MSN毎日インタラクティブ2005/11/15)
 少年2人が異常な行動をとり死亡した問題が12日に津市で開かれた日本小児感染症学会で議論され、「調査が必要だ」「日本はタミフルを使い過ぎだ」などの意見が相次いだ。一方で「タミフル以外が原因の可能性もある」との指摘も出た。
 学会では、NPO法人「医薬ビジランスセンター」(大阪市)理事長の浜六郎医師が、2人の死亡例を発表。
 これに対し大阪府の医師は「異常行動とタミフルの関係は否定できず、学会として調査すべきだ」と主張した。愛知県の医師は、タミフルの年間販売量のうち、日本が世界の8割以上を占めている現状から「日本だけがタミフルを多用している現状はおかしい」と発言した。
 一方、インフルエンザ脳症に関する厚生労働省研究班メンバーの横田俊平・横浜市大教授は「異常行動は発熱の影響や、インフルエンザによる脳の異常活性化でも起き得る」とタミフル以外の原因があると指摘。その上で「使い過ぎの意味で、調査すべき問題だとは思う」と話した。
 浜医師は、他にもタミフルが原因と考えられる事故事例があれば相談に応じるとしている。連絡先は同センター(06・6771・6345)。