茨城県議会の予算決算特別委員会で、「国の男女共同参画推進政策が、出生率の低下を招いた」との暴論が交わされたのは、昨年(2005年)秋のことでした。その詳報は、正式な議事録がまとまった後に、ご紹介させていただきます。
政府は年末の12月27日、男女共同参画社会の実現のために2006年度からの5年間に取り組むべき具体策を盛り込んだ、第2次の男女共同参画基本計画を閣議決定ました。今回の改定作業では、ジェンダー(社会的性別)をめぐる議論が議会やマスコミをにぎわせていますが、大事なのは、日本がいよいよ人口減少社会を迎えている今、男女ともに社会において個性と能力を十分に発揮できる社会を実現することが、結果的に少子化対策につながるということです。先の特別委員会での議論の真反対。つまり、「男女共同参画の推進が、出生率の向上につながる」という基本を再度確認したいと思います。
1999年に成立した男女共同参画基本法によって策定された現行の基本計画では、20年までに社会のあらゆる分野において指導的立場を占める女性の割合を30%程度にまで高めることを目標に掲げました。しかし、女性の政治的・経済的地位を示すUNDP(国連開発計画)のジェンダー・エンパワーメント指数で日本は、いまだに80カ国中43位に甘んじています。
進まない背景にあるのは、働き方と子育てにおける男女間のアンバランスです。子育て期にある30歳代の男性の4人に1人は週60時間以上仕事をし、家庭と子どもに向き合う時間も持てません。子育ての負担は女性に集中し、女性の仕事のキャリアは中断せざるを得ない。第1子を産んだ女性の7割が仕事をやめている実態が、このアンバランスを如実に示しています。医師不足の背景にも、女性医師が子育てのために医療の現場に立てない背景があると指摘する識者もいます。
そのため第2次計画では、国家公務員の?種事務系の区分試験での採用者を30%程度(05年度で21.5%)に高めることをはじめ、育児休業取得率を男性も高めること(04年度0.56%から10%に)や長時間労働の1割削減、さらに保育の充実、女性の再就職・起業支援の充実などさまざまな具体的目標を掲げています。
政府の男女共同参画会議の専門調査委員会が2005年9月に公表した「少子化と男女参画に関する社会環境の国際比較」は興味あるデータを示しています。これまで「女性の社会進出が出生率を下げる」と言い習わされてきましたが、2000年時点でOECD(経済協力開発機構)加盟国のうち1人当たりのGDP(国内総生産)が1万ドルを超える24カ国について見ると「女性労働力率が高い国ほど、出生率が高いという正の相関関係がある」という結果です。
確かに、70年代には女性労働力率が高いほど出生率が低いという負の相関関係にあったものが、「80年代半ばを境に関係が変化」しました。80年代半ば以降は、欧米諸国が子育て支援に本腰を入れた時期にあたり、こうした国々では、出生率に改善が見られました。
ここから分かるのは、働く女性が増えるから子どもの数が減ったのではなく、働く男女が安心して子育てできる社会環境の整備状況が遅れれば、出生率は低下するという当たり前のことです。
男女ともに、その個性と能力を存分に発揮するチャンスを得て輝き、地域や家庭に十分に目配りできる余裕の持てる社会は、次代を担う子どもたちにも明るく力強い方向性を指し示すことができます。遠回りのように見えるが、実は男女共同参画社会の実現にこそ、少子化対策の直道なのです。
参考:第2次男女共同参画基本計画
参考:少子化と男女共同参画に関する社会環境の国際比較報告書
政府は年末の12月27日、男女共同参画社会の実現のために2006年度からの5年間に取り組むべき具体策を盛り込んだ、第2次の男女共同参画基本計画を閣議決定ました。今回の改定作業では、ジェンダー(社会的性別)をめぐる議論が議会やマスコミをにぎわせていますが、大事なのは、日本がいよいよ人口減少社会を迎えている今、男女ともに社会において個性と能力を十分に発揮できる社会を実現することが、結果的に少子化対策につながるということです。先の特別委員会での議論の真反対。つまり、「男女共同参画の推進が、出生率の向上につながる」という基本を再度確認したいと思います。
1999年に成立した男女共同参画基本法によって策定された現行の基本計画では、20年までに社会のあらゆる分野において指導的立場を占める女性の割合を30%程度にまで高めることを目標に掲げました。しかし、女性の政治的・経済的地位を示すUNDP(国連開発計画)のジェンダー・エンパワーメント指数で日本は、いまだに80カ国中43位に甘んじています。
進まない背景にあるのは、働き方と子育てにおける男女間のアンバランスです。子育て期にある30歳代の男性の4人に1人は週60時間以上仕事をし、家庭と子どもに向き合う時間も持てません。子育ての負担は女性に集中し、女性の仕事のキャリアは中断せざるを得ない。第1子を産んだ女性の7割が仕事をやめている実態が、このアンバランスを如実に示しています。医師不足の背景にも、女性医師が子育てのために医療の現場に立てない背景があると指摘する識者もいます。
そのため第2次計画では、国家公務員の?種事務系の区分試験での採用者を30%程度(05年度で21.5%)に高めることをはじめ、育児休業取得率を男性も高めること(04年度0.56%から10%に)や長時間労働の1割削減、さらに保育の充実、女性の再就職・起業支援の充実などさまざまな具体的目標を掲げています。
政府の男女共同参画会議の専門調査委員会が2005年9月に公表した「少子化と男女参画に関する社会環境の国際比較」は興味あるデータを示しています。これまで「女性の社会進出が出生率を下げる」と言い習わされてきましたが、2000年時点でOECD(経済協力開発機構)加盟国のうち1人当たりのGDP(国内総生産)が1万ドルを超える24カ国について見ると「女性労働力率が高い国ほど、出生率が高いという正の相関関係がある」という結果です。
確かに、70年代には女性労働力率が高いほど出生率が低いという負の相関関係にあったものが、「80年代半ばを境に関係が変化」しました。80年代半ば以降は、欧米諸国が子育て支援に本腰を入れた時期にあたり、こうした国々では、出生率に改善が見られました。
ここから分かるのは、働く女性が増えるから子どもの数が減ったのではなく、働く男女が安心して子育てできる社会環境の整備状況が遅れれば、出生率は低下するという当たり前のことです。
男女ともに、その個性と能力を存分に発揮するチャンスを得て輝き、地域や家庭に十分に目配りできる余裕の持てる社会は、次代を担う子どもたちにも明るく力強い方向性を指し示すことができます。遠回りのように見えるが、実は男女共同参画社会の実現にこそ、少子化対策の直道なのです。
参考:第2次男女共同参画基本計画
参考:少子化と男女共同参画に関する社会環境の国際比較報告書