政府と自民・公明の両党は、4月20日までに厚生年金と共済年金の一元化に向けて、基本合意に達する見込みとなりました。
 官民格差との批判が集中している共済年金については、段階的に給付が減額され、負担が重くなることになります。
 厚生年金と共済年金との一元化を4つの視点から整理してみたいと思います。
【給付額】
 共済年金には職域加算があるため、年金の給付額が厚生年金より高くなっています。厚生年金の平均給付額が月額23万3300円であるのに対して、共済年金は25万3475円と2万円以上高くなっています。
 政府与党合意では、制度改革後に公務員となる者に対しては、職域加算を廃止することで合意しています。
【遺族年金】
参考写真 年金の受給資格がある者が死亡した際に、その親族が受給できる遺族年金の範囲も厚生年金と共済年金とは格差があります。遺族の中での優先順位は、第1位が配偶者と子、第2位が父母、第3位が孫、第4位が祖父母――とされ、最も順位が高い人が年金を受給します。ここまでは、厚生年金と共済年金に基本的な違いはありません。
 しかし、厚生年金は、いったん受給し始めた遺族が亡くなったり、子が18歳になって受給資格を失ったりすると、そこで支給が打ち切りになります。次の順位の遺族が遺族年金を受け取ることはできません。
 これに対し、遺族共済年金では、次の順位の遺族が給付をそのまま引き継ぐことができる。その遺族が亡くなった場合、次の順位の遺族がいれば、今度はその人に遺族年金が支給されます。この制度を「転給」といいます。この転給制度があるために、共済年金全体では遺族年金の占める率が、厚生年金よりかなり高くなっています。(2002年度の実績で、国家公務員共済:25.8%、地方公務員共済:23.1%、厚生年金18.6%)
 政府与党合意では、転給制度を廃止することになります。
【保険料率(負担料率)】
 厚生年金の保険料率(負担料率)は、標準報酬月額の14.288%であるの対して、国家公務員共済は13.5%、地方公務員共済は12.7%と、共済年金の保険料率が低くなっています。
 政府与党合意では、厚生年金と公務員の共済年金の基礎年金部分と報酬比例部分を合わせた、保険料率の統一時期を2018年とすることで一致しており、共済年金の保険料率が引き上げられることになります。
【旧恩給相当分】
 共済年金と厚生年金との一元化とは直接関係ないものの、共済年金制度の発足前に退職した恩給受給者のうち、旧軍人を除く公務員の恩給も削減される方向です。
 平成18年度の文官恩給受給者約3万人の平均受給額は年間112万円。共済年金の退職公務員の給付削減にあたっては、生活に支障が出ないよう年金額が年間200万円程度を下回る場合は減額しない方向となっていることから、文官恩給の受給者の大半は削減対象にならないとみられます。