4月27日、井手よしひろ県議は、県庁内で粒子線治療装置について、関係する保健予防課、原子力安全対策課などからヒアリングを行いました。
 1999年、東海村の核燃料加工会社JCOで、ずさんな作業管理のため発生した臨界事故は、被曝した作業員2名が死亡するなど人的、経済的に深刻な影響を地域社会にもたらしました。国は、このJCO臨界事故を受けて、茨城県に対して原子力安全等推進交付金を5年間に亘り交付しました。県は、その全額95億円あまりを「原子力安全等推進基金」として蓄え、JCO事故後の周辺住民の健康診断などの事業や放射線を利用した医療施設の整備に活用する方針です。
 現状の計画では、がん治療に有効性が高く認められている粒子線治療施設建設を進めることになっています。
FFAGを用いた治療システムの概念図 がん治療には外科治療(外科手術によるがん細胞の除去)、放射線治療(放射線によるがん細胞の破壊)、化学治療(抗がん剤投与によるがん細胞の破壊)の3種類があります。
 このうち放射線治療は、他の正常な器官を傷付けず、がん細胞だけを破壊できるという特徴があり、がんの部位によっては外科手術以上の治療効果が上がることが知られています。従来のX線やγ線による治療に比べ、粒子線(陽子線・炭素線)は、正常細胞への影響が少なく、がん病巣だけに集中的に照射できるという特性があります。
反面、施設の整備に巨額の予算が必要で、施設も巨大化する欠点もあります。(陽子線治療装置で100億円、炭素線治療装置では150億円程度かかるとされています)
 粒子線治療を行うためには、陽子や炭素など粒子に運動エネルギーを与えて、がん細胞にぶつけることが必要です。そのために、必要な機器が「加速器」と呼ばれる装置で、現在ではシンクロトロンとサイクロトロンの2種類の加速器が実用化されています。しかし、いずれも長所・短所があり、その特長を兼ね備えた新たな加速器の開発が進められています。それが、現在つくば市にある高エネルギー加速器研究機構(KEK)で研究が進められている「FFAG加速器」です。FFAG加速器は、一秒に何千回という連続照射ができ、操作の調整も簡単で、構造的に小型の加速器も作ることができるようになります。
 県では、KEKとの連携の上で、FFAG加速器を使った粒子線治療施設を東海地域を念頭に整備する計画を進めています。井手県議は、FFAG加速器の早期開発と具体的な計画の一刻も早い立案を関係者に求めました。
(イラストは高エネルギー加速器研究機構のホームページにリンクしてあります)
<参考>日本が生んだ新しい加速器〜 FFAG加速器 〜