5月23日、自民・公明の両党は、がん予防や治療研究を総合的に推進する「がん対策基本法案」を議員立法で国会に提出しました。
 この法案には、基本理念として以下の3点が盛り込まれました。
 1点目に、「がんに関する専門的、学際的または総合的な研究を推進する」ことが明記されました。特に放射線治療の場合は、がん医療の専門家だけでなく、理系・工学系の専門家の協力が重要であることから、公明党が強く主張してきた内容が理念に盛り込まれています。
 2点目に、「居住する地域にかかわらず等しく科学的知見に基づく適切ながんにかかわる医療を受けることができる」として、がん治療の均てん化(均霑化:平等に恩恵や利益を受けること)をうたっています。地域や受診病院の違いによって、5年生存率や治療格差をなくすことが極めて重要です。
 3点目に、「本人の意向を十分尊重してがんの治療方法などが選択されるようがん医療を提供する」として、セカンドオピニオンの体制も整備し、放射線治療も含め、がん患者が治療法を選択できることを明確にしました。
 その上で、「がん対策基本法案」には、国や地方公共団体、医療保険者、国民、医師の責務を明記しています。特に国民の責務では、喫煙や食生活などの生活習慣が健康に及ぼす影響が強いことを自覚し、がん予防に必要な注意を払い、がん検診を受けるなどの本人の努力も求めています。
参考イメージ 法案の基本的施策は、(1)がん予防および早期発見の推進(2)がん医療の均てん化の促進(3)がん研究の推進――が3本柱となっています。
 がん予防および早期発見の推進では、喫煙や食生活習慣の改善や、がん検診の質の向上、受診率アップに取り組みます。
 がん医療の均てん化では、放射線による治療などの専門的な医師および医療従事者の育成とともに、「疼痛などの緩和を目的とする医療が早期から適切に行われるようにする」という条文を盛り込みました。この「早期から」を入れることで、がん治療・緩和ケアのあり方を抜本的に変えることにしています。
 これまでのように緩和ケアを、末期がん患者の終末期の医療としてだけ行うのではなく、がんと診断された時から、その人らしい生き方が最後までできるよう、必要に応じて早い段階から緩和ケアを行い、がん患者の生活の質の維持・向上を図ることに重点を置いています。
 がん登録制度については、個人のプライバシーの保護など、さまざまな意見があり、現在、地方自治体が進めている、がん登録の取り組みを支援することにしています。
 さらに、がん研究の推進では、特に必要性が高い医薬品や医療機器の早期承認を推進する環境整備を進めていくことになります。