満開のさくらとパラボラアンテナ 昭和38年11月に開設され十王町のランドマークとして親しまれているKDDIの大型パラボラアンテナ施設は、平成18年一杯で山口県の施設に統合され、その役目を終えることになっています。
 日立市や高萩市、地元市民は、施設の有効利用を関係機関に呼び掛けています。その一環として、国立天文台や茨城大学文理学部が中心となって、32mの大型パラボラアンテナ2基を電波望遠鏡に改造し、他の3カ所の施設と連携して、天文学の観測に当たろうという構想が浮上しています。
 十王地区のイメージアップともなり、子供たちの教育の場での活用も期待され、日立市も積極的に転用を要望する考えです。
 井手よしひろ県議ら公明党日立支部では、この電波天文台構想を推進するとともに、県本部代表の石井啓一衆院議員を通じて、文部科学省並びに国立天文台、茨城大学に働きかけていく方針です。
KDDIのパラボラアンテナ「電波望遠鏡に」
センター閉鎖で改造の計画

読売新聞(2006年6月9日)
 高萩市石滝と日立市十王町にまたがり、13基の巨大パラボラアンテナが並ぶKDDI茨城衛星通信センターが役目を終え、今年末で閉鎖される。そのうちの2基を国立天文台が電波望遠鏡に改造し、国内の他の3か所のアンテナとのネットワークで宇宙空間の謎を探ろうという構想が持ち上がっている。
 ネットワークには鹿嶋市の情報通信研究機構、つくば市の国土地理院、長野県佐久市の宇宙航空研究開発機構臼田宇宙空間観測所のアンテナが加わる。KDDIセンターを含めた4局をブロードバンド(高速大容量通信)の光ファイバーケーブルでつなぎ、毎月2日程度、宇宙観測をする。
 光ファイバーでつなぐと、受信する信号の帯域が既存の電波望遠鏡に比べ、数十倍に広がり、弱い電波の天体画像でも即時に作成できる。4局の位置関係が三角形になる点も、よりはっきりな映像を得るのに有利で、世界最高レベルの感度が実現できるという。実際の観測は茨城大理学部の横沢正芳教授(59)らの研究グループに打診しており、横沢教授側も前向きだ。
 鹿嶋は人工衛星を使った通信研究、つくばは天緯度・経度の精密測定、佐久は人工衛星の追跡がそれぞれの本来の業務だが、いずれも電波望遠鏡への転用が可能で、これまでも国立天文台との共同天体観測の実績がある。また、国立天文台は2002年からKDDIの山口衛星通信センター(山口市)の不要アンテナを譲ってもらい、山口大と共同で宇宙観測している。
 横沢教授は「宇宙の果ての銀河、超新星からの微弱電波を観測できるので、ビックバン後の宇宙の膨張、銀河や惑星の形成過程などの解明に大きな成果が望める」と話している。
 KDDIは学術利用を条件に、茨城衛星通信センター閉鎖後のアンテナ群や13万4000平方メートルの土地を無償譲渡する方針だ。宇宙観測もこれに沿った構想だが、横沢教授らはもう一つ、小学生から大学生を対象にした宇宙電波科学研究教育センターの設置計画案を地元の高萩、日立両市に提案している。
 子供の理数離れに歯止めをかけるため、体験学習型科学館や植物園、簡易宿泊施設を建て、天体観測や科学実験、植物観察をしてもらおうという計画。
 こうした跡地論議の高まりに、日立市は「大きなアンテナ群は地元のシンボルでもあり、科学技術振興のためにも施設を残したい。茨城大の計画が固まれば、高萩市と利用法を検討したい」と考え、高萩市も「跡地利用は県、日立市と一体で検討していきたい」と話している。
【KDDI茨城衛星通信センター】 日本の国際衛星通信発祥の地。1963年11月に開設され、初の日米間テレビ衛星の受信実験でケネディ大統領暗殺という歴史的事件を受信した。今年限りでKDDI山口衛星通信センターに機能が統合される。