6月20日、北海道夕張市の後藤健二市長は、総務大臣に対して夕張市が地方財政再建促進特別措置法の「財政再建団体」の指定を受けるための申請をすることを表明しました。財政再建団体への指定は、民間企業でいえば「倒産」「企業清算」にあたります。
 財政再建団体の指定を受けると、議会の議決と総務大臣の承認を受けた「財政再建計画」によって予算が編成され、赤字は起債(借金)で埋め、国が利子補給を行う方法で財政再建をめざします。
夕張市役所 財政再建団体に指定されると、住民のサービスが大きく制限されるのも事実です。保育料などの使用料、国民健康保険料、各種手数料などが、国基準又は類似都市、近隣の市町村の中で最も高い額を徴収している市と同一となり、市民の負担が増加されます。市独自で実施している事業の廃止や各種団体へ交付する補助金の削減とともに、環境、福祉、教育などの事業が、近隣で最も低い水準の市と同程度となります。将来に向けた都市基盤の整備や学校施設、道路など市民生活に欠くことのできない施設・設備の改修・整備についても計画的に実施できなくなるなど、行政サービスの著しい低下が予想されます。
 債務免除は認められないため、完全な更生までにかなりの時間がかかってしまいます。
 かつて、夕張市は炭鉱の町として栄えました。1981年の炭鉱事故とそれに伴う閉山以来、石炭から観光と農業の町への転換を図っており、「夕張メロン」はその象徴でした。しかし、最盛時には約11万人の人口が1万3000人にまで減少しており、相次いで行った積極的な投資が裏目に出たことになります。
 夕張市の一般会計予算は110億ほど。これに対して負債額は、金融機関からの短期借入金が290億円、地方債や第三セクターの損失補填を含めると、負債額は500億円を超えます。
一時借入金による自転車操業が裏目に
 財政再建団体は、財政規模に対する赤字が20%以上の自治体が対象となります。夕張市は、期末の赤字を隠すために短期の借入金を繰り返したために、雪だるま式に赤字が膨らみました。夕張市の一時借入金の大口借入先は3月末現在で、北海信金の67億円、みずほ銀の38億円、空知信金の37億円、三菱東京UFJ銀行30億円、あおぞら銀行30億円、道信連30億円、北洋銀20億円などとなっています。
参考:夕張市のホームページ
総務省、自治体の一時借入金を全国調査へ 夕張市「倒産」
朝日新聞(asahi.com 2006年6月20日)
 北海道夕張市が、金融機関からの「一時借入金」をはじめとする500億円以上の巨額負債を抱え、自治体の倒産にあたる「財政再建団体」に移行する問題で、総務省は6月20日、全国の自治体を対象に一時借入金の残高を調査する方針を固めた。一時借入金は、予算書や決算書では表面化しないため、道が夕張市の巨額負債をチェックできなかったとされる。同省は同様の危険性がある自治体を早期に把握する必要があると判断した。
 夕張市の後藤健二市長は20日午前、開会した市議会の冒頭で、財政再建団体への移行を正式に表明した。今後は、国に対して財政再建団体の指定を申請し、北海道や総務省の指導のもと財政健全化計画を策定することになる。
 一時借入金は、税収の確定時期と入金の時期がずれた際などに、当座の資金繰りのために金融機関から受ける短期の融資。年度内に返済することになっているため、予算書や決算書には記載されない。限度額は自治体の予算額とされる。
 夕張市は、この仕組みを「悪用」。一時借入金を返済するために、別の金融機関から借りるという「自転車操業」を繰り返し、02年3月末からの4年間で約112億円も残高が増えた。
 総務省は、夕張市のようなケースを想定しておらず、都道府県を対象にした財政状況調査では一時借入金の残高を調べていない。しかし、地方交付税の削減などで全国の自治体の財政は疲弊しており、多額の一時借入金を抱える自治体もあり得ると判断。都道府県を通じて、全国の自治体の実態を把握し、「破綻(はたん)の芽」をつみ取る考えだ。