住民投票の差し止めを求める
桜川市議有志8人が提訴

常陽新聞(2006/7/14)
 桜川市の市議有志グループが十三日までに、来月下旬にも実施が予想される市議会解散の賛否を問う住民投票の実施を行わないよう、市選管を相手取り水戸地裁に差し止め請求の訴えを起こした。
 提訴したのは今井房之助議長や塚本明副議長、稲葉安次郎市議らベテランを中心とする市議八人。すでに六日夕に記者会見し、代理人の弁護士も同席して訴えを起こすことを明らかにしていた。
 今井議長らは、合併特例法によって在任特例が適用され、旧町村議が市議として来年九月まで任期が延長されているのに、住民投票でこの決定がくつがえされるのは納得できない、として市選管に住民投票実施の差し止めを求めた。
 同議長は先の会見で「旧三町村の代表で構成した法定合併協議会で慎重に審議して承認し、三町村議会で議決した二年間の在任特例は重い。今になってわき起こった住民運動で一方的に打ち切られ、議員の身分を剥奪されるのはおかしい」などと主張。その上で「今後の合併のあり方を左右しかねないので、地方自治法で認められた住民の直接請求権と、合併特例法のどちらが優先するのか、司法の判断を仰ぎたい」としている。代理人によれば全国的にも珍しい訴訟という。
 これに対し、市議会解散の本請求をした市民団体「桜川市民の声」の中島市郎代表は「もはやi怒りを通り越して言葉がない。いったいどういう感覚をしているのか。議員は住民の代表だとしても、住民によって選ばれた存在。どうしてもっと謙虚になれないのか」と話している。

 先日このブログ「桜川市で一部議員が住民投票差し止めを提訴へ」で触れたように、さくら川市議会議員の一部が市選管を相手取った訴訟を起こしました。訴状の詳細を入手していませんので詳しい論評はできませんが、「地方自治法で認められた住民の直接請求権と、合併特例法のどちらが優先するのか、司法の判断を仰ぎたい」ということが主旨であれば、東かがわ市の事例における高松高裁判決で結論が出てしまっています。(高松高裁では、地方自治法と合併特例法のどちらが優先されるべき法律かについては触れていません)
 原告らは、本件投票は、地方自治法76条3項の規定に基づき執行されたものであるが、議会の解散請求は、直接民主主義に基づく住民自治の徹底を期すために特別に定められた規定であって、議会運営が公平を欠いたり、住民意思と議会全体の意思との乖離が存する場合など、正当ないし相当な理由が必要であるなど一定の制限があるというべきものであるが、本件投票の理由からすれば、本件投票には上記要件が欠けており、無効であると主張する。
 しかしながら、議会の解散請求(地方自治法76条)は、普通地方公共団体の住民が選任した議員によって構成される議会の運営が住民の意思に反するものと認められる場合に、議員の任期満了前に、現任議員全員の資格を奪って、現任議員による議会の構成を廃止し、新たな議員による議会の成立を図るため、議員の一般選挙を要求するものであるところ、憲法は、地方公共団体の議会については、議員全員が住民の直接選挙によるものと定めている(93条2項)。
 合併協議会は、適法に構成されたものではあったが、直接的に住民の意思を反映させる形態ではなかったことは、その構成方法から明らかである。したがって、合併協議会により、新市の議員として認められた東かがわ市議会議員について、東かがわ市の住民が、直接的に、意思を反映させるために、本件投票が行われたものである。
 したがって、合併協議会により任期を2年と定められた東かがわ市議会及び同議員については、本件投票により、直接民主制によって住民意思を図ることは、地方自治法76条に反することはなく、適法である。

(北海道町村会法務支援室判例紹介より転載)