7月26日、電子情報技術産業協会(JEITA)とケーブルテレビ(CATV)事業者10社は、9月からケーブルテレビのネットワークを活用して地震速報サービスの実験を始めると発表しました。JEITAはすでにインターネットによる同様のサービスを提供していますが、ケーブルテレビを使った実験は世界初となります。
参考写真 今回の実験は、気象庁が地震発生直後に震源とマグニチュードを推定し公表する「緊急地震速報」を活用します。JEITAが気象庁の速報データを受信し、CATV事業者のサーバーに地震情報を転送します。各事業者のサーバーには、震源からの距離と地盤の状態によって、本震到達までの時間と震度を割り出すソフトが組み込まれており、そこからケーブルテレビの回線を使ってデータを一斉再送信します。その情報を受信した各家庭や事業所に設置した端末は、「15秒後に震度6の地震が起きる」といった警報を、音声で流す仕組みです。このほか大雨、津波、暴風波浪の警報にも対応しています。
 このシステムは、2種類ある地震波の特徴を利用して、大規模の地震の発生を少しでも早く、より多くの人々に伝達しようとするものです。
 地震の揺れの伝わり方にはP波、S波の2種類があります。P波は縦揺れで伝達速度が速く、S波は横揺れで伝達速度が遅いが、大きな揺れになります。一般に、P波を初期微動、S波を本震と呼んでいます。そして、このP波とS波の伝わる早さをコンピュータで瞬時に解析し、地震が発生した直後に地震発生情報を伝達すれば、本震が起こる前に、家庭や事業所などで安全対策(火を消したり電源を切ったりする)を取ることが可能となります。
 例えば、JEIKAによると、相模湾を震源とする関東大震災が再び起きた場合、東京・千代田区では警報から10秒後に本震が到達するため、この間にガスコンロの消火や屋外への退避などが可能になると説明しています。
CATVブロードキャスト方式緊急地震速報データ配信システムの特徴
  • ブロードキャスト方式の伝送形態を採用した一斉同報送配信のため、エリア設置の全端末に同時に速報配信が可能であり、CATVセンターサーバから端末まで伝送における遅延が起きない。
  • 演算系装置(センター側)と音声告知装置(端末側)が分離しているため、端末のコストダウンが可能である。(最終想定予定価格=約1万5000円以下目標)
  • 端末設置が簡単である。(CATVテレビの同軸線が来ていれば、どこでも端末が設置できる)
  • コンパクトな形状で設置場所を選ばない。また、子機の設置により複数の部屋で緊急地震速報の発報ができる。
  • 全てのCATV局で事業展開が可能である。(広帯域型CATV局のみならず、農村型や電波障害対策CATVでも運用可)
  • CATVは地元密着の公共メディアであり、地域行政との防災活動での連携が可能である。

参考:「CATVブロードキャスト方式緊急地震速報データ配信システム」プロトタイプの完成と実証試験の開始について(PDF版)