井手よしひろ県議の質問に大きな反響
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 9月14日に井手よしひろ県議が行った一般質問が、マスコミに大きく取り上げられています。地元紙・茨城新聞は15日付の一面トップでこの質問を取り上げ、NHKのテレビ・ラジオでも16日に報道しました。
 一般質問では、井手県議の最先端の放射線治療施設の整備を求める質問に対し、橋本県知事が、従来の方針を大転換し、より実現性の高い治療施設の導入を明らかにしました。
 県ではこれまで、つくばの高エネルギー加速器開発機構で研究を進めていたFFAGという装置を使う治療器の整備を検討していました。しかし、この装置は開発に時間と費用が掛かるために、井手県議は、既に実用化されている筑波大学の陽子線治療装置や最新の放射線装置の導入を提案したものです。
 これに対して、橋本知事は、FFAGの開発を正式に断念し、実用的な放射線医療装置の採用を検討することを表明しました。
 テレビやマスコミでは、FFAGの開発を断念したことが強調されて報道されたために、一部、高度な放射線医療装置の計画そのものが中止になったような誤解を与えましたが、事実は全く逆で、実現に向けて具体的な第一歩がしるされました。

高度な放射線治療施設の整備についての井手よしひろ県議の質問
 高度の放射線治療施設の整備についてお伺いいたします。
現在でも三人に一人が、がんが原因で亡くなるという状況の中で、手術なしでがんを治療することができる「放射線治療」が、今、大きく注目を浴びています。
放射線治療は、臓器を摘出しないで済むため、患者の負担が軽いという特徴があり、がんの部位によっては外科手術以上の治療効果が上がることが知られています。従来のX線やガンマ線に比べて、正常細胞への影響が少ない放射線強度変調治療(IMRT)装置なども開発され、放射線治療への期待大きく膨らんでおります。また、陽子線・炭素線など粒子線による治療装置は、その粒子線の性質から、がん細胞だけを狙い打ちできるという特徴があり、テレビやマスコミなどでも、その治療効果が大きく取り上げられているところです。
反面、こうした高度な放射線治療装置は、施設の整備に巨額の予算が必要で、施設も巨大化する欠点もあります。
1999年、東海村の核燃料加工会社JCOで、ずさんな作業管理のため発生した臨界事故は、被曝した作業員2名が死亡するなど人的、経済的に深刻な影響を地域社会にもたらしました。国は、このJCO臨界事故を受けて、茨城県に対して「ウラン加工施設事故影響対策特別交付金」を、5年間に亘り交付しました。県は、その全額95億円あまりを「原子力安全等推進基金」として蓄え、JCO事故後の周辺住民の健康診断などの事業や放射線を利用した医療施設の整備に活用する方針です。 現状の計画では、つくばの高エネルギー加速器研究機構との連携によって、新しいタイプの加速器であるFFAGを開発し、粒子線の治療施設を建設する計画であると聞き及んでいます。
しかし、FFAGはまだ研究段階の加速器であり、実用化までの道のりは遠いとことも事実です。 私ども公明党県議団は、今年6月、筑波大学の陽子線医学利用研究センターを視察し、秋根康之センター長より粒子線治療の現状をヒアリングいたしました。
 こうした視察や様々な方面からのご意見を総合すると、私は、FFAGという新規の技術開発に固執することなく、ほぼ実用化された陽子線治療装置や最近開発が進められ粒子線治療に匹敵する治療効果があるとされるIMRT装置などを有した、いわば「県立放射線医療センター」といった施設を一刻も早く整備することが、県民にとって一番身近で、メリットが高いのではないかとの結論にいたりました。
 そこで、原子力安全等推進基金を活用した高度な放射線治療施設の整備についての検討状況と今後の方向性について、橋本知事にお伺いいたします。

橋本昌県知事の答弁
 井手義弘議員のご質問にお答えいたします。
 高度の放射線治療施設の整備についてでございます。
 本県では、放射線治療の中でも最先端の治療として注目されている粒子線を利用したがん治療施設について、高エネルギー加速器研究機構で研究が進められているFFAG加速器を利用した施設の整備について調査・検討を進めてまいりました。
 しかしながら、昨年末の時点におきまし、高エネルギー加速器研究機構からFFAG加速器の優れた特徴である、小型化や重粒子の加速について、現状では検討すべき課題があり、現段階においても、まだ見通しがたっていないとの報告がありました。
 したがって、FFAGによるがん治療施設の整備については、当面無理であると考えております。
 一方、粒子線治療施設については、新たに群馬大学や福島県郡山市の民間病院に粒子線治療施設を整備する計画が打ち出されており、既に整備されている筑波大学などを含めますと本県周辺に粒子線治療施設が5施設整備されることとなり、新たに県立で粒子線治療施設を整備することについては、経費面も含め、さらに検討していくことが必要な状況にあります。
 また、議員のご指摘にもありましたよう、近年、粒子線治療以外にも患者の身体的負担の少ない、たとえば強度変調放射線治療(IMRT)が可能なリニアックやトモセラピ、定位放射線治療が可能なリニアック・CTやサイバーナイフなど、高度な放射線治療の実用化が進んでおります。
 県といたしましては、これらの高度放射線治療施設なども視野に入れながら、原子力安全等推進基金の使途を検討してまいりたい考えております。

井手県議の再質問
 行政に今一番求められているのは、意思決定のスピードであると思います。
 知事より「高度な放射線医療施設の整備」について、ご答弁をいただきました。FFAGの整備方針を転換するという大きな決断をお示しいただいたわけで、そのご答弁を評価いたします。
 しかし、高エネ研が2年間にわたり委託研究を行い、実用化までには多くの課題があるとの結論を出したのは、昨年12月でした。その結論が出されてすでに9ヶ月あまりが過ぎております。95億円に及ぶ「原子力安全等推進基金」が積み上がって、既に3年が経過しています。
 あまりにも政策の意思決定に時間が掛かり過ぎてはいないでしょうか。(中略)
 まさに、がんの患者にとっては時間との勝負といっても過言ではありません。今後の治療施設の検討に当たっては、より迅速な意思決定を強く要望します。
 知事の残された3年余り任期中に、県民誰でもが利用できる、がん治療の最先端の放射線治療施設が開設されることを、強く希望します。橋本知事、ぜひ、知事ご自身の手で新医療施設のテープカットを行っていただきたいと思います。
 知事のご所見を再度お伺いいたします。

橋本知事の再答弁
 原子力安全等推進基金につきましては、ご承知のように、JCO臨界事故という悲惨な事故を受けて積み上げたものでございます。この使い道については、中々結論が出ないとことには、申し訳ないと思っております。FFAGの採用についても、断念した後におきましても、色々、情勢が変わっています。こないだ、私、兵庫に行って私みてきましたが、そちらにおきましても、例えば、陽子線でほとんどカバーできるのではないかというだけではなく、いろいろ治療の実績を積み重ねてる中で、新しい技術も出てきています。これも踏まえながら、最善の結論を得るための検討の時間を頂戴していますので、ご了解いただきたいと思います。