乳児虐待防止へ「こんにちは赤ちゃん事業」厚労省
朝日新聞(2006/8/22)
 育児に慣れない親のストレスによる児童虐待を防ぐために、厚生労働省は生後4カ月までの乳児がいるすべての家庭を専門スタッフが訪問して育児に関するアドバイスをしたり、親子関係を把握したりする「こんにちは赤ちゃん事業」を来年度から実施する方針を固めた。これまで保健師が生後約1カ月までに家庭を訪問する新生児訪問指導などの事業はあったが、虐待に陥る可能性が高い4カ月までに対象期間を広げて対応する。
 事業主体は市町村で、費用の一部を国が補助する。07年度予算の概算要求に重点事業として盛り込む。
 具体的には、保健師や看護師、子育て経験がある元自治体職員などを研修して「訪問スタッフ」として認定。母子手帳や出生届に基づいて、乳児がいる家庭を少なくとも1度は訪問する。子育てに関する情報提供やアドバイスをするとともに、具体的な育児環境や親の状態などを把握する。
 部屋の様子や親の表情などから養育環境に問題があり、親の精神状態が不安定と判断したときは、保健師や医師などでつくる「ケース対応会議」で協議。深刻な場合は、保健師や助産師による「育児支援家庭訪問事業」に引き継いだり、児童相談所や病院でつくる「虐待防止ネットワーク」など他機関と連携したりして、きめ細かく対応していく。
 昨年の出生数は約106万人。同省は、すべての対象者への戸別訪問によるケアで、虐待の予防効果があがる、とみている。

 公明党は、育児不安の解消、児童虐待の未然防止へ、育児支援家庭訪問事業などの体制強化を主張。これを受けて、厚生労働省は、地域の人材を登用した訪問スタッフが、生後4カ月までの乳児がいるすべての家庭を訪問し、子育てに関する助言を行う「こんにちは赤ちゃん事業」を来年度から創設します。
 行政サービスの情報提供や育児に関する不安を和らげることなどが目的。ストレスから虐待に走るリスクが高い子育て初期の親による虐待の未然防止も図ります。
 関連予算を2007年度予算概算要求に盛り込み、実施主体となる市町村に費用の一部を補助します。
 具体的には、市町村が地域の母子保健推進員や子育て経験のある主婦らに研修を行い、訪問スタッフとして登用。その上で、出生届などを基に該当する家庭を少なくとも一回は訪問する。その際、赤ちゃんの養育環境を把握し、乳児検診の受診を勧めたり、子育て支援に関する情報を提供したりします。
 また、親が精神的に不安定な状態にあるなど、何らかの支援が必要と判断すれば、医師やソーシャルワーカーなどで構成する「ケース対応会議」を開いて対策を協議。個別の事情に適したきめ細かい対応策を講じることにしています。
 厚労省が把握した2004年の児童虐待死亡事例(58人)のうち、0歳児の犠牲者は24人。月齢でみると4カ月までが7割を占めました。厚労省は、戸別訪問による親の不安緩和で、虐待の危険性は相当程度低くなるとみています。