9月26日召集の臨時国会で、自民党の安倍晋三総裁は第90代首相に指名され、安倍新政権がスタートしました。新政権発足に当たり、自民、公明両党は25日に新たな連立政権合意を交わしました。
 合意書では、両党による連立政権について、1999年10月の連立政権発足から7年の間に「円熟・安定した連立関係」を築いてきたと強調。その上で、新政権の基本精神として、「国民の幸福と国際社会の平和・安定のために、強い決意をもって政権運営に当たる」ことを確認しています。
 今、わが国は内外の課題が山積している。その諸課題を乗り越えるためには、自公連立政権による政治の安定と一致結束した政権運営が欠かせません。新たな連立政権は、日本の将来を切り開く使命と責任を担っているといっても過言ではありません。
 今回の政権合意では、今後取り組むべき具体的な政策課題としては重点9項目が取り上げられました。
 まず「少子化対策」が新たに重点課題に据えられました。日本の合計特殊出生率は過去最低の1.25にまで落ち込んでいます。新政権の最優先課題の一つとしての強力な取り組みが望まれます。その意味では、「働きながら子育てできる環境の整備」と「経済的負担の軽減」などを柱にした総合対策の実施を連立合意で明記したことは、公明党の「少子社会トータルプラン」の理念が反映されたものです。
 小泉政権で大きな課題を残した外交面では、「中国、韓国をはじめとする近隣諸国との一層の関係強化」を明記しました。新政権は、この文言を国民の目に見える形で実践する必要があります。
 地方分権の推進も政権合意に盛り込まれました。しかし、その具体像は示されず、地方議員の立場としては物足りないものを感じます。
 さらに、靖国問題や集団的自衛権の問題など、阿倍新首相の公約と公明党の主張に隔たりがある部分は、当然のように合意に対象とはなっていません。走りながらすり合わせを行う必要がある課題となりました。
自民・公明 連立政権合意(全文)
 自由民主党と公明党が連立に合意し、政権についてからすでに7年が経過した。この間、両党の関係は真摯かつ精力的な政治・政策運営を行い、円熟・安定した連立関係を維持している。
 今般、自由民主党において新総裁が選出され、公明党においても新代表が選出されることにかんがみ、自由民主党、公明党両党は、政権協議を一層緊密に進め、国民の幸福と国際社会の平和・安定のために、強い決意をもって政権運営に当たることを改めて確認する。
 このうえは、新内閣が掲げる政策の下、構造改革を継続、加速し、国民一人一人が改革の果実を享受できるようにしていかなければならない。
 われわれ両党は、これまでの確固たる信頼と協力の関係を踏まえ、連立政権発足以来の連立合意事項について、その実現を目指すとともに、以下に掲げる重点政策の課題について、全力で取り組む考えであることを国民の前に明言する。
今後取り組むべき重点政策課題
1.経済財政一体改革の推進による小さくて効率的な政府の実現 
 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006(骨太2006)」の方針に基づき、経済成長戦略を着実に実施しつつ、国・地方の無駄な歳出を徹底的に排除するための財政改革を一体的に推進し、かつ、事業仕分け・見直しの取り組みを強化することによって、小さくて効率的な政府を実現する。
 その際、国家公務員のみならず地方公務員を含めて、官民格差を是正し、より効率的な行政サービスを提供する観点から、公務員制度のあり方について早急に見直しを行い、必要な制度改革を実施する。
2.国民が安心・信頼できる社会保障制度改革の継続
 本格的な高齢化社会の到来を踏まえ、年金、医療、介護、社会福祉の一体的見直しを継続し、国民が安心し、信頼できる社会保障制度を実現する。このため、「3党合意」(平成16年5月6日)に基づく議論の開始を求める。また、特に医療制度改革では、予防重視戦略、がん対策などを強く推進する。障害者自立支援法を円滑に運用するための措置を講ずる。
 なお、社会保険庁のあり方について、徹底的かつ根本的な見直しを断行する。
3.少子化対策の充実と再挑戦可能な社会の実現
 育児休業制度の普及・改善、仕事と生活の調和を図るための取り組みなど、働きながら子育てできる環境の整備、子育てにかかる経済的負担の軽減など総合かつ抜本的な少子化対策を実施する。
 また、若年未就労者の就職支援の更なる充実、正規・非正規雇用の均衡処遇、創業支援策や中小企業の再生支援策の拡充・強化など再挑戦可能な環境を整備するための総合的な対策を実施することによって、格差を固定しない社会を実現する。
4.地方分権の推進
 都市と地方の格差を是正するとともに、地域が本来有する活力を取り戻し、地域の伝統と文化に裏打ちされた誇りある「真に自立した地域社会」を実現するため、地方分権推進法の新たな制定を行うとともに、税源移譲を伴う地方分権を断行し、道州制の実現に向けた制度設計についての検討を進める。
5.教育改革推進
 教育基本法を改正すると共に、学力低下の問題、不登校・学級崩壊などの問題の解決や公教育の充実・強化を図る観点から、教育環境の整備、教員の質の向上、教育行政改革等を断行する。また、大学、大学院の国際競争力を強化する。さらに、文化・芸術、スポーツの振興などに取り組む。
6.国民生活の安全・安心の確保
 自然災害への対応や地域社会の治安、食品・生活用品・建築物の安全性・信頼性を向上させるための対策を推進することにより、国民生活の安全・安心を確保する。
7.中小企業対策の強化
 生産性向上、技術革新により潜在成長力を高め、民需中心の持続的な経済成長につなげるための経済成長戦略を推進する中で、特に、地域経済・産業の担い手である中小零細企業については、地域資源の積極的活用、モノづくり産業の強化、事業を円滑に行うための環境整備、商店街の活性化などの支援策を充実・強化する。
8.「強い農林水産業」へ構造改革
 意欲ある「担い手」の育成、環境保全農業、森林の資源政策、林業対策を積極的に進め、水産業の漁油高騰など経営環境への改善を進めると共に、農漁村を再生する。また、食料自給率の向上、経営安定化対策など、国民に安全な食料を安定的に供給する体制を構築する。
9.平和外交の推進
 わが国外交の基軸である日米同盟、国連を中心とする国際協調を両輪としつつ、平和外交を積極的に推進する。中国、韓国をはじめとする近隣諸国との一層の関係強化に力を注ぎ、EPA・FTAなどの経済連携交渉の推進など経済面での交流のみならず、エネルギー・環境問題など共通の課題の解決に取り組むための外交実施体制の充実など、総合的な外交力を強化し、様々なレベルでの人的交流を推進する。