10月26日、茨城県教育庁は、県立高校6校で必修科目である教科が履修されていなかった実態を公表しました。
 履修されていなかった教科は、世界史Aが5校、日本史Aが2校、保健が2校、情報A、理科基礎が1校となっています。
 特に水戸桜ノ牧高校では、世界史A、情報A、保健の3科目を履修しておらず、全校生徒が履修漏れの対象となっています。
必修科目の履修漏れがあった県立高校
佐竹世界史A3年80名
理科基礎3年80名
水戸桜ノ牧世界史A2年277名
3年266名
情報A1年321名
2年318名
3年311名
保健1年321名
2年318名
那珂保健2年150名
3年150名
神栖日本史A3年38名
3年38名
土浦湖北日本史A3年111名
伊奈世界史A3年34名
県内6校でも履修漏れ・生徒ら動揺や不信感
読売新聞(2006/10/26地方版)
 全国の高校で卒業に必要な必修科目が教えられていない問題で、26日、茨城でも佐竹、水戸桜ノ牧、那珂、神栖、土浦湖北、伊奈の県立6校で受験対策のため、世界史Aなどが履修漏れとなっていたことが判明した。6校とも県教委に出す履修科目表を虚偽記載していたため、見過ごされてきた。各校は今後、生徒や父母に善後策を説明する方針だが、推薦受験先の大学などに提出する内申書の虚偽記載もあり、影響は小さくない。
 県教委によると、6校の未履修の在校生徒数は1〜3年の計1513人に上る。教科は地理歴史、理科、情報、保健体育の4つ。保健体育以外は受験対策だった。
 県教委は各校が示す授業の時間割予定表と、教科書の購入予定表で必修科目の履修状況をチェックしているが、きちんと履修したかどうかの確認まではしていない。県教委高等教育課は「各校長にきちんとやれというしかない。甘いといわれれば、そうとしか言いようがない」と認める。
 6校には未履修のままの卒業生が相当数いると見られるが、卒業取り消しや補講などの処置は行わない方針だ。
 水戸桜ノ牧が最も早く、センター試験対策で1998年度から必修の世界史の代わりに日本史や地理を教えるなどしていた。同高の2005年度の大学進学率(4年制)は59%、国公立大の合格者数は過去最多の58人だった。平沢憲次校長は「生徒たちにセンター試験で負担をかけないよう、よかれと思ってやってきた」と説明する。
 佐竹では3年時に世界史A、理科基礎がいずれも週2時間設けられていたが、今年度から実際は特別措置として日本史や生物、物理の授業にあてていた。3年生5クラスのうち進学コースの2クラスだけが対象だった。推薦入試の内申書では、理科基礎の項目に生物や物理の点数を記載。高久裕一郎校長は「受験優先で勇み足をした。同じ理科、歴史科目だと安易に考えてしまった」と認める。
 土浦湖北では3年必修の日本史Aを教えず、政治経済を履修させていた。内申書の日本史Aには「履修見込み」と記載し、約50人分を大学などに提出済み。阿須間富男教頭は「入試に影響のないよう、冬休みも補講する」と対策を練る。
 神栖では2年で世界史Bを選択した生徒は3年で日本史A、2年で日本史Bを選んだ生徒は3年で世界史Aを履修する。しかし、3年の進学コースでは03年度から、2年で選んだのと同じ科目を3年でも履修していた。
 内申書には、たとえば日本史のみ履修の場合、世界史の成績は日本史の成績を記載していた。水田重則教頭は「これまで気づかなかった。担任が教育熱心のあまりやっていたんだと思うが、責任は管理職の自分にある」としている。
 伊奈では、3年生のうち世界史Bを選択した34人に未履修があった。柴原正好教頭は「本人の受験科目を優先した結果だと思うが、指導要領を守らなかった点は十分反省している」と話している。
 まさか自分の高校が――。未履修が分かった生徒のショックも大きい。
 土浦湖北の3年生は「まじめに勉強してきたのになんでという感じ。センター試験も近いのにふざけるなと思う」と学校への不信感をあらわにした。
 水戸桜ノ牧の3年生は「びっくりです。卒業するために必修科目が必要なら受けるしかない」。別の3年生も「僕たちの受験を考えての判断かもしれないが、卒業できないのは困る」と戸惑いを隠せない様子だった。