新会社の本社は日立事業所内に?
 11月13日、日立製作所は原子力事業を米GE(ゼネラル・エレクトリック)社と経営統合することで合意したと発表しました。日製とGEの保有する原子力部門を、両社が出資する会社に移転し、世界的な原子力産業再編に対応する計画です。
 日立製作所は、GEから沸騰水型軽水炉の建設技術を導入・国産化し、国内外で23基の実績があります。しかし、国内では新規の原発建設計画はほとんど無い状態が続いています。一方、海外ではアメリカや中国などで、原子力設備の新規需要が高まっており、国内原発各社は海外戦略の強化が喫緊の課題となっています。
 今回の戦略提携で「日製+GE:沸騰水型」、「東芝+WH(米国ウェスティング・ハウス):加圧水型」、「三菱重工業+仏アレバ:加圧水型」の3陣営への世界的集約が明確になってきました。
 日製は今年5月に、米テキサス州ヒューストンに建設が計画されている原発2基を、GEと共同受注するなど、ここ数年海外で原発プラントの受注に成功しています。
 今回の提携では両社は原発事業部門を分離し、日本国内向け会社(日立80%、GE20%)と、海外向け会社(日立40%、GE60%)の二社を立ち上げます。原子炉部門の経営統合によって、海外受注の強化や、次世代原子炉の研究開発を強化する見込みです。
 日製は、重電部門の中核である原子力部門で、中部電力浜岡5号機と北陸電力志賀2号機でタービンの破損事故が発生し、両社から多額の損害賠償請求が予想されています。今回のGEとの事業統合を契機に、重電部門の建て直しを図る計画です。
 日製関係者からの聞き取りでは、日本法人の本社は日立事業所内に置かれる見込みです。この新たな法人の帰趨は、県北地域の経済にも大きな影響を与えそうです。
参考:日立製作所とGEが原子力事業における世界的な戦略的提携に合意(日製のプレスリリース2006/11/13)
日立と米GEが戦略的提携へ
産経新聞(SankeiWeb2006/11/13)
 日立製作所と米ゼネラル・エレクトリック(GE)は11月13日、原子力事業での従来の協力関係を大幅に強化し、戦略的提携を結ぶと発表した。両社はそれぞれ原子力事業を分離し、事実上の事業統合となる。GEと東芝の提携関係は弱まる見通しだ。原発業界をめぐっては東芝が米原発大手のウエスチングハウス(WH)を買収するなど再編が加速しており、今回の戦略提携で「東芝−WH」「三菱重工業−仏アレバ」「日立−GE」の3陣営への集約がいっそう明確になった。
 日立とGEは今後、日米に原発の設計や開発、製造を行う共同出資会社を持ち合いで設立する。日本向け原発事業を行う新会社は日立が80%強、GEが20%弱を出資。一方、米国をはじめ海外事業を手掛ける新会社の出資比率は日立40%、GE60%となる。さらに詳細を詰め、来年前半での最終契約を目指す。
 これに伴い両社は原子力事業を分離。同事業の従業員(日立約2000人、GE約1500人)も新会社へ移る。両社の原子力事業の2005年の売上高は日立が約1600億円、GEが約10億ドル。事実上の事業統合となった理由について日立の古川一夫社長は会見で「事業戦略の共有が大切」と説明した。
 両社が得意とするのは沸騰水型原子炉(BWR)で新会社は次世代大型炉の開発も担う。世界市場の7割は「東芝−WH」「三菱重工−アレバ」の2陣営による加圧水型軽水炉(PWR)が占めるが、日立は「当面BWRに集中する」(古川社長)としている。
 一方、GEは東芝とも提携関係にあり、次世代原子炉は日立を含めた3社で開発中。ルドルフ・ビラGEエナジーアジア担当プレジデントは「東芝との契約義務は守る」としながらも「日立と同じアレンジ(事業再編)を東芝に関して行うつもりはない」などと東芝とは一定の距離を置くことを示唆した。