厚生労働省が、平成18年9月29日に発表した「平成17年労働安全衛生基本調査結果の概況」によると、過去1年間に、長時間労働(1週当たり40時間を超えて行う労働が1ヶ月で100時間を超えた場合)を行った労働者がいる事業所の割合が13.4%もあることが分かりました。参考写真事業所規模別に見ると、10人から29人の事業所では12.7%、規模が大きくなるほど割合は高くなり、1,000人以上の大企業では約半数に達しています。1ヶ月に100時間の残業とは、毎日のように午後11時まで残業するという計算になります。
 こうした現状の下、公明党の強い働きかけにより、残業代の割増率を引き上げる労働基準法改正案が今国会に提出されることが正式に決まりました。
 公明党は少子化対策のためにも、子育て世代の労働時間が過度に長い状況の是正を、昨年公表した少子社会トータルプランの中で、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)が可能な「働き方改革」の一環として提言していました。
  企業側にとっては負担増となる政策ですが、人口減少社会に突入した日本は、思い切った構造改革を必要とするところまで来ています。残業代割増率の引き上げが、非婚化、晩婚化の要因といわれる長時間労働を抑制するのに威力を発揮することを確信します。
 残業代には、定時の就業時間の報酬である基本給部分に、一定の割増率を乗じた額が上乗せされています。日本では平日残業の割増率を25%以上(休日は35%以上)としているため、例えば基本給部分の時給換算が1000円の場合、平日残業した従業員に企業は一時間あたり1250円以上、休日の場合は1350円以上を支払うことになっています。
 今回提出される改正案では、1)月45時間以下の残業は現行通り25%以上、2)45時間超80時間以下の場合はそれより引き上げる努力義務を課す――としています。これらは企業規模にかかわらず適用されます。さらに大企業に限り、80時間を超える場合には一律50%の割増率の適用を義務付けることにしています。中小企業については、導入から3年を経過した後に改めて検討することになりました。
 経済のグローバル化に伴う競争の激化に対応するため、わが国企業は過去数年間、正社員の採用を抑え、パートなどの非正規労働者の雇用を増やしてきました。その結果、正社員を中心に仕事量は増え、残業が慢性化しています。
 別の厚労省の集計によると、子育て期にあたる30代男性の約4人に1人が週60時間以上の長時間労働(月80時間を超える残業)をしています。また、男性が家事や育児にかける時間は他の先進国と比較して最低レベルにあります。この傾向が、「結婚できない」「子どもを産めない」「女性の子育てへの負担感が大きい」ことに結びついていると多くの識者は指摘しているのです
 残業代の引き上げが、こうしたワーク・ライフ・バランスの健全化に資するところは大きいと思います。
 実施にあたっては、サービス残業などを解消する手だても含めて、政府や自治体の強いリーダーシップが望まれます。
(この記事は、公明新聞2006/2/10付け記事と厚生労働省「平成17年労働安全衛生基本調査結果の概況」を参照しました)