3月19日行われた県議会予算特別委員会で、井手よしひろ県議は地球温暖化対策について、県が導入を検討している新たな環境保全のための税制の活用やカーボンオフセットの考え方による県民運動の展開など具体的な提案を行いました。
今年の冬は近年にない暖冬となりました。日立では一度も雪が降らないまま、桜の花が開花しようとしています。日立市天気相談所が1953年度以降、観測しているデータでは、最低気温が氷点下になった日を真冬日というそうですが、1月の真冬日が5日あまりで、過去最低となったということです。平均は、13日余りということですから、いかに暖かい冬であったのかを雄弁に語っています。
さて、こうした中、この2月には地球規模の気候変動を調査している国連の機関「気象変動に関する政府間パネル(IPCC)」が、第4次報告書を公表しました。
それによると、人間の活動が温暖化をもたらした確率は90%以上に上るとし、地球温暖化がほぼ人間の生活・経済活動によると断定しました。そして、21世紀末には地球の平均気温が1.1〜6.4度上昇するとし、環境に配慮した場合や化石燃料に依存した場合などのシナリオに分けて将来を予測しました。さらに、それに伴う海面上昇は18〜59cmであると予測しました。
報告書の結論が正しければ、人類がこの難局を突破するには、持続発展型社会の実現に取り組む他ありません。
茨城出身の環境学者・山本良一東京大学生産技術研究所教授らは、その編著に「気候変動+2℃」などで、温暖化が加速してRunaway Global Warming(地球温暖化の暴走−人類が温暖化の加速を制御できなくなる状態)が起こる可能性について指摘しています。Runaway Global Warmingが起こる時点をPOINT of NORETURN(ポイント・オブ・ノーリターン:帰還不能地点)と表現されています。1.5度突破のポイント・オブ・ノーリターンは2016年頃であり、プラス2度突破のポイント・オブ・ノーリターンは2028年頃となるとされています。
近い将来、温暖化した気候が来ることはほぼ確かな現実となりました。今後は、こうした現実を受け入れて、それにどのように備えるかという点が中心になってくると思います。国や地方自治体も、その政策や予算の使い方に大きな見直しが必要になってきます。
翻って本県では、平成6年5月に茨城県地球温暖化防止行動計画を策定し、昨年2月には、2010年度における温室効果ガスの削減目標を基準年比マイナス4.6%とし、産業、運輸、民生などの部門ごとの目標設定や、事業者や県民に期待される取り組みなどを盛り込んだ改定を行いました。
前回の中間集計時、2002年の排出量は1990年の基準排出量より2.3%減少しました。全国的に見ても、この削減率は注目を浴びました。
茨城県の温室効果ガスの排出量を具体的に見てみますと、産業部門の排出量が県全体の約7割近くを占めるという特徴があります。特に、鹿島地域の大規模事業所がその大きな割合を占めています。次回の集計結果の公表は、今年4月頃と伺っていますが、景気回復や好調な中国・アジアへの輸出を背景とした事業活動の活発化により、本県の温室効果ガス排出が大きく増大している可能性があります。
このような特徴から、私は、本県の地球温暖化対策のポイントは、1.大規模事業者との連携、2.県民運動による啓発活動、3.森林の涵養による二酸化炭素吸収対策の3点になると考えます。
そこで橋本知事に、「地球温暖化対策として、県が担うべき役割について」お伺いいたします。
県民生活に一番身近な自治体である市町村にも、具体的な温暖化防止に関する行動計画の策定と実行を、知事は呼びかけるべきだと思いますが、ご所見をお伺いいたします。
カーボン・オフセットとは、日常生活による二酸化炭素の排出を相殺するために、植林や自然エネルギーの利用を促進しようというものです。
私たちの身近な生活に当てはめてみると、委員長にご許可いただき配布いたしました予算特別委員会資料No1のような例が考えられます。私たちが家庭で1日4時間30分、テレビを付けているとすると、年間で75キロの二酸化炭素を排出する計算になります。この量に匹敵する二酸化炭素を吸収するためには、ヒノキを3本植林する必要があります。その、植林の費用として毎年1000円を寄附しようという考え方です。
今年2月、岐阜県は、「岐阜県地球温暖化対策地域協議会」及び「岐阜県循環型社会形成推進協議会」を設置し、国内の自治体としては初めて、「カーボン・オフセット(Carbon Offset)」の取り組みをスタートさせました。
岐阜県の事業は、県民や事業者に二酸化炭素削減に関する具体的な行動としてアカマツ、キリ、ケヤキなどの「大気環境木」の植栽のための寄附金を募集します。岐阜県地球温暖化防止活動推進センターが寄附金で大気環境木を購入し、それらの提供を受けて、県が小中学校等での大気環境木の説明及び植栽を実施します。500円以上の寄附をした個人・団体名はホームページで公表し、積極的な参加を動機づけます。
茨城県においても地球温暖化防止への意識を高め、具体的に植林や森林の保全に役立てるために、このカーボン・オフセットの取り組みを具体化すべきだと提案いたしますが、生活環境部長のご所見をお伺いいたします。
茨城県農業総合センター農業研究所は、水戸地方気象台の統計資料を基に、本県における気象の長期変化について、調査研究を行っています。それによると、本県における年平均気温は過去107年間で約1.14℃上昇し、温暖化の進行が認められ、また降水量は約200mm(約15%)減少し、日照時間は約5%長くなりました。
当然こうした気候変動は、本県の農林水産業にも、今後大きな影響を与えると考えられます。
例えば、リンゴ栽培農家からは、色づきが悪くなってきたという声が多く聞こえます。独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所の研究結果によると、リンゴ栽培に適する地域は、2060年代には東北地方の平野部のほぼ全域が範囲外となり、当然、県内での生産は難しくなると予測しています。
また、米に関しては、乳白米の割合が多くなっているとの指摘もあります。サツマイモの害虫であるナカジロシタバという昆虫が、本県でも越冬が可能となり、春先から被害が発生するという事例も出てきていると聞いております。本県の特産品である、干し芋も、温かい気温が災いして、生産に悪影響が出ているとの新聞報道もあります。
現実に温暖化した気候が来ることはほぼ確実な状況です。今後は、こうした現実を受け入れて、それにどのように備えるかという点が中心になってきます。農業分野でも、地球温暖化に対するしっかりとした調査研究や指導の充実が必要だと思いますが、農林水産部長のご所見をお伺いいたします。
森林環境税・地球温暖化対策にも
知事「県民の理解得て検討」
常陽新聞(2007/3/20付け2面)
新年度の導入が見込まれる「森林環境税(仮称)」について、橋本昌知事は3月19日、県議会予算特別委員会(田山東湖委員長)で井手義弘委員(公明)の質問に答え、その使途に地球温暖化対策も加えることも含め、今後、県民理解を得る中で幅広く検討する考えを示した。
井手委員は県が進めている新税の検討について、間伐を中心とした県内の森林保全策や霞ケ浦の水質保全策に加え、地球温暖化対策関連の事業にも使途を広げるよう提言、橋本知事の考えをただした。
橋本知事は、有識者らによる研究会組織で検討を進める新税「森林環境税(仮称)」のあり方について、十分に県民理解を得たいと述べ、さらに、森林の保全が地球温暖化を防ぐ意味合いも強いことから地球温暖化への対策も視野に幅広い理解を得る中で、税の使途についても改めて検討したい考えを示した。
また井手委員は温暖化防止のため二酸化炭素(CO2)削減に向けて植林に投資する、いわゆる「カーボンオフセット」の手法導入を提言。県民運動として寄付を募り、新税とともに植林の原資とするアイデアを示し、県も新税と併せて検討に入る。
地球温暖化対策に担うべき県の役割
地球温暖化対策についてお伺いいたします。今年の冬は近年にない暖冬となりました。日立では一度も雪が降らないまま、桜の花が開花しようとしています。日立市天気相談所が1953年度以降、観測しているデータでは、最低気温が氷点下になった日を真冬日というそうですが、1月の真冬日が5日あまりで、過去最低となったということです。平均は、13日余りということですから、いかに暖かい冬であったのかを雄弁に語っています。
さて、こうした中、この2月には地球規模の気候変動を調査している国連の機関「気象変動に関する政府間パネル(IPCC)」が、第4次報告書を公表しました。
それによると、人間の活動が温暖化をもたらした確率は90%以上に上るとし、地球温暖化がほぼ人間の生活・経済活動によると断定しました。そして、21世紀末には地球の平均気温が1.1〜6.4度上昇するとし、環境に配慮した場合や化石燃料に依存した場合などのシナリオに分けて将来を予測しました。さらに、それに伴う海面上昇は18〜59cmであると予測しました。
報告書の結論が正しければ、人類がこの難局を突破するには、持続発展型社会の実現に取り組む他ありません。
茨城出身の環境学者・山本良一東京大学生産技術研究所教授らは、その編著に「気候変動+2℃」などで、温暖化が加速してRunaway Global Warming(地球温暖化の暴走−人類が温暖化の加速を制御できなくなる状態)が起こる可能性について指摘しています。Runaway Global Warmingが起こる時点をPOINT of NORETURN(ポイント・オブ・ノーリターン:帰還不能地点)と表現されています。1.5度突破のポイント・オブ・ノーリターンは2016年頃であり、プラス2度突破のポイント・オブ・ノーリターンは2028年頃となるとされています。
近い将来、温暖化した気候が来ることはほぼ確かな現実となりました。今後は、こうした現実を受け入れて、それにどのように備えるかという点が中心になってくると思います。国や地方自治体も、その政策や予算の使い方に大きな見直しが必要になってきます。
翻って本県では、平成6年5月に茨城県地球温暖化防止行動計画を策定し、昨年2月には、2010年度における温室効果ガスの削減目標を基準年比マイナス4.6%とし、産業、運輸、民生などの部門ごとの目標設定や、事業者や県民に期待される取り組みなどを盛り込んだ改定を行いました。
前回の中間集計時、2002年の排出量は1990年の基準排出量より2.3%減少しました。全国的に見ても、この削減率は注目を浴びました。
茨城県の温室効果ガスの排出量を具体的に見てみますと、産業部門の排出量が県全体の約7割近くを占めるという特徴があります。特に、鹿島地域の大規模事業所がその大きな割合を占めています。次回の集計結果の公表は、今年4月頃と伺っていますが、景気回復や好調な中国・アジアへの輸出を背景とした事業活動の活発化により、本県の温室効果ガス排出が大きく増大している可能性があります。
このような特徴から、私は、本県の地球温暖化対策のポイントは、1.大規模事業者との連携、2.県民運動による啓発活動、3.森林の涵養による二酸化炭素吸収対策の3点になると考えます。
そこで橋本知事に、「地球温暖化対策として、県が担うべき役割について」お伺いいたします。
県内市町村の地球温暖化対策地域推進計画策定
県や市町村は、地球温暖化対策推進法により、地球温暖化対策地域推進計画の策定に努力することとされています。しかし、県内の市町村で具体的な計画を策定しているのは、守谷市だけと聞いております。県民生活に一番身近な自治体である市町村にも、具体的な温暖化防止に関する行動計画の策定と実行を、知事は呼びかけるべきだと思いますが、ご所見をお伺いいたします。
環境保全のための新税制の考え方
さて、今議会の代表質問においては、各会派から環境問題並びに森林環境税に対する質問がなされました。知事は、「本県の自然環境の現状とその保全整備の必要性、新たな負担を求めるざるを得ない背景、理由などを広く県民に説明し、議論を広めたい」との趣旨の答弁を行っています。地球温暖化防止という観点からも、森林を守ることは非常に重要であり、新たな環境税を検討する視点として、地球温暖化問題を取り入れる必要があると思いますが、いかがお考えでしょうか?カーボンオフセットの考えた方に基づく県民運動の提案
続いて生活環境部長に、カーボン・オフセットの考えに基づく県民運動の展開について、ご提案させていただきます。カーボン・オフセットとは、日常生活による二酸化炭素の排出を相殺するために、植林や自然エネルギーの利用を促進しようというものです。
私たちの身近な生活に当てはめてみると、委員長にご許可いただき配布いたしました予算特別委員会資料No1のような例が考えられます。私たちが家庭で1日4時間30分、テレビを付けているとすると、年間で75キロの二酸化炭素を排出する計算になります。この量に匹敵する二酸化炭素を吸収するためには、ヒノキを3本植林する必要があります。その、植林の費用として毎年1000円を寄附しようという考え方です。
今年2月、岐阜県は、「岐阜県地球温暖化対策地域協議会」及び「岐阜県循環型社会形成推進協議会」を設置し、国内の自治体としては初めて、「カーボン・オフセット(Carbon Offset)」の取り組みをスタートさせました。
岐阜県の事業は、県民や事業者に二酸化炭素削減に関する具体的な行動としてアカマツ、キリ、ケヤキなどの「大気環境木」の植栽のための寄附金を募集します。岐阜県地球温暖化防止活動推進センターが寄附金で大気環境木を購入し、それらの提供を受けて、県が小中学校等での大気環境木の説明及び植栽を実施します。500円以上の寄附をした個人・団体名はホームページで公表し、積極的な参加を動機づけます。
茨城県においても地球温暖化防止への意識を高め、具体的に植林や森林の保全に役立てるために、このカーボン・オフセットの取り組みを具体化すべきだと提案いたしますが、生活環境部長のご所見をお伺いいたします。
農林水産業への影響とその対応策
地球温暖化の影響とその対応策について農林水産部長にお伺いいたします。茨城県農業総合センター農業研究所は、水戸地方気象台の統計資料を基に、本県における気象の長期変化について、調査研究を行っています。それによると、本県における年平均気温は過去107年間で約1.14℃上昇し、温暖化の進行が認められ、また降水量は約200mm(約15%)減少し、日照時間は約5%長くなりました。
当然こうした気候変動は、本県の農林水産業にも、今後大きな影響を与えると考えられます。
例えば、リンゴ栽培農家からは、色づきが悪くなってきたという声が多く聞こえます。独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所の研究結果によると、リンゴ栽培に適する地域は、2060年代には東北地方の平野部のほぼ全域が範囲外となり、当然、県内での生産は難しくなると予測しています。
また、米に関しては、乳白米の割合が多くなっているとの指摘もあります。サツマイモの害虫であるナカジロシタバという昆虫が、本県でも越冬が可能となり、春先から被害が発生するという事例も出てきていると聞いております。本県の特産品である、干し芋も、温かい気温が災いして、生産に悪影響が出ているとの新聞報道もあります。
現実に温暖化した気候が来ることはほぼ確実な状況です。今後は、こうした現実を受け入れて、それにどのように備えるかという点が中心になってきます。農業分野でも、地球温暖化に対するしっかりとした調査研究や指導の充実が必要だと思いますが、農林水産部長のご所見をお伺いいたします。