参考写真 むち打ち症の原因の一つとされ、交通事故などの衝撃で脳と脊髄を循環する髄液が漏れ、頭痛や、めまいなどを引き起こす「脳脊髄液減少症」の本格的な研究がスタートします。
 今年度予算で厚労省は、脳脊髄液減少症の診断や治療法に関して、日本脳神経外科学会学術委員長の嘉山孝正・山形大医学部長らの研究に「厚生労働科学研究費補助金」の交付を決定しました。研究は3年計画で、初年度となる今年度は2500万円を認めています。内容は(1)診断に関する実態調査、(2)診断基準の確立、(3)発症原因の調査、(4)治療法の検討などとなっています。研究班は、脳神経外科を中心に構成し、神経内科や疫学、統計学などの専門家も加わる見通しです。髄液漏れの本格的な研究は初めてで、早期の診断ガイドライン策定をめざすことになっています。
 4月25日、公明党の脳脊髄液減少症対策ワーキングチーム(渡辺たかお座長:参院議員)は、参院議員会館で会合を開き、脳脊髄液減少症の研究をめぐり厚生労働省と意見を交換しました。会合では、髄液漏れ患者など、研究協力者らへの支援の在り方などをめぐり、活発に質疑が交わされました。
 脳脊髄液減少症は、未解明な点が多く、激しい頭痛で学業や仕事が手につかない症状でも「異常なし」と診断されたり、周囲から「仮病」を疑われたりする場合があります。さらに、交通事故の場合、自動車損害賠償責任(自賠責)保険では軽度のむち打ち症としか認定されないため、治療費などが短期間で打ち切られる場合が多い現実があります。髄液漏れを起こしている個所に本人の血液を注入して漏れを防ぐブラッドパッチ療法も「治療法として確立されていない」との理由から保険適用されていません。
 公明党は脳脊髄液減少症で苦しむ「現場の声」をもとに、いち早く行動を起こし、治療法確立やブラッドパッチ療法への保険適用などを国に求めてきました。
 2006年3月の参院予算委員会では、渡辺座長が治療法などの研究推進を要請。これに対し、当時の川崎二郎厚労相が「厚生労働科学研究推進事業を通じて関係学会と連携し、適切に対応していく」と答え、今回の研究費交付が実現しました。
 会合終了後、渡辺座長は、「今回、06年の参院予算委員会で要望した科学研究費の交付が決まった。早期に診断のガイドラインが確定できれば保険適用の道が開かれ、患者や家族にとっても大きな恩恵となる。脳脊髄液減少症の研究が進むことを大いに期待している」と述べました。
参考:NPO鞭打ち症患者支援協会
参考:脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)京都患者の会
参考:低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)ファイル