きょう5月3日は、60回目の「憲法記念日」です。施行60年の“還暦”を迎えた日本国憲法について、憲法改正がより具体的なイメージとなってきています。憲法改正に関する公明党の基本的な立場は、「加憲」という考え方です。
 「加憲」とは、現行憲法が掲げる「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」という三つの基本理念や、平和主義の象徴である第9条などについては、このまま維持しながら、新たに必要だと思われる理念や条文を書き加えて「補強する」という考え方です。
参考写真 昭和22年5月3日に施行された現在の憲法について、公明党は「優れた憲法である」と考えており、「国民に広く支持されている」と認識しています。なかでも、三つの基本理念や第9条は日本の平和と発展の基礎であり、「今後も絶対に堅持すべきだ」と強く考えています。
 一方、制定から既に60年が経過し、時代状況は大きく変化しています。例えば、これまでの国家安全保障に対し、一人ひとりの人間の生存と尊厳を保障する「人間の安全保障」といった理念の台頭、環境権やプライバシー権といった新しい人権の登場など、現行憲法の制定時には想定できなかった新しい問題も提起されています。すなわち、現行憲法を21世紀にふさわしい国の規範として「補強する必要性」が指摘されているわけです。
 このため公明党は、現行憲法の理念を今後も堅持・発展させ、新たに必要な理念や条文を加えて現行憲法を補強する「加憲」が最も適切だと考えています。
 「加憲」の立場の公明党は今、恒久平和主義の象徴である第9条は第1項(戦争放棄)、第2項(戦力不保持)とも堅持した上で、自衛隊の存在の明記や国際貢献の在り方を加憲の対象として書き加えるかどうかを検討しています。「第9条堅持」の立場ですから、自衛隊の明記といっても、自衛隊を軍隊として位置付けるのではなく、「自衛のための必要最小限の実力組織」の保持を明記するということです。
 国際貢献についても、自衛隊は国連安全保障理事会の決議に基づく伝統的な国連平和維持活動(PKO)などには参加しますが、イラクでの治安維持活動のような武力行使を伴うものには参加しません。また、密接な関係にある外国が武力攻撃された時、自国が直接攻撃されていなくても実力をもって阻止する権利である、いわゆる「集団的自衛権」の行使も認めるべきではないと考えます。
 5月1日付けの朝日新聞に憲法改正に関するアンケート調査の結果が掲載されていました。それによると、「朝日新聞社の全国世論調査(電話)で、憲法第9条が日本の平和に『役立ってきた』と評価する人が78%を占めた。憲法改正が『必要』と思う人は58%にのぼるが、改正が必要な理由を聞くと『新しい権利や制度を盛り込む』が8割に達する」とあります。国民の多くが描く憲法改正のイメージは、公明党の「加憲」の考え方によるものに一番近いのではないでしょうか。
国民投票法案について
憲法改正の是非を国民投票で決める際の方法を定める手続き法律。法的不備を埋めるためには制定が不可欠。
 衆院を可決・通過して現在、参院で審議されている国民投票法案は、できる限り多くの政党や政治家の賛成を得て、今国会中に成立させるべきだと思います。
 国民投票法は、憲法改正の是非を国民の投票によって決める際の手順・方法を具体的に定める手続き法です。
 現行憲法では、第96条で憲法改正の手続きについて、(1)各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議する、(2)国民投票による承認には過半数の賛成を必要とする、(3)承認を得たときは天皇が国民の名で公布する―と定めています。すなわち、憲法を改正する場合にも、国民による選挙で構成された国会が“提案”して、それを国民が直接投票することで“決定する”という「国民主権」の理念が貫かれています。
 ところが、どのようにして国民投票を行うかなどの具体的な内容は、60年間も定められないままでした。そうした意味で、国民投票法は法的不備を埋めるものであり、憲法の理念である「国民主権」を実質的に行使できるようにするためには、欠かすことのできない法律です。
 国民投票法案の具体的な内容には、公明党の主張はもちろん、修正協議で民主党が主張していた内容も大幅に盛り込まれています。例えば、憲法改正の国会発議は「関連する事項ごとに区分して行う」(国会法改正案)と定められ、公明党の主張通り、テーマごとに投票が行われることが明らかになっています。有権者の年齢については民主党も主張していた通り、18歳以上(当面は20歳)となりました。このほか、(1)投票では投票用紙に印刷された賛成・反対のどちらかに「〇」印を付けるか、「×」もしくは「=」で消す(2)賛成票と反対票を合計した投票総数の過半数の賛成で「承認」とする(3)改正案の要旨と分かりやすい説明、賛成意見と反対意見の両方を掲載した公報を発行する(4)政見放送のように、賛成・反対双方の政党の意見広告を平等にテレビやラジオで放送する(同時間数、同時間帯)―などと定められています。
 なお、国民投票法が成立しても公布後、最低3年間は“凍結期間”が設けられ、憲法改正原案は提出・審査できません。これは、国民に開かれた丁寧な憲法論議を行う必要があるため「公明党の強い主張で盛り込まれた」(毎日新聞)ものです。
 共産党や社民党が、国民投票法が成立すると9条改憲につながるかのような宣伝を繰り返しています。現行憲法に謳われている法律を整備し、主権在民の体裁を一段と整備する法律を作ることは、日本国憲法の精神を具現化することではないでしょうか。こうした政党の主張は、自己矛盾と言わざるを得ません。