地域のコミュニティーの維持のためにも小学校への学校自由選択制導入には反対
今年4月24日、安倍首相がすすめる教育改革の方向性を示す「教育再生会議」に、日本経団連より「義務教育改革についての提言」が提出されました。その中で、特に注目されたのが学校教育法を改正して、「学校選択制」を全国的に展開せよということでした。
いままで日本の義務教育の基本は、私立学校へ進学する場合を除いては、市町村教育委員会が指定した公立の小中学校に就学することになっていました。それが1997年1月に当時の文部省の『教育改革プログラム』で「通学区域の弾力化」が提示され、いくつかの地域で「学校を自由に選べる」制度、つまり学校選択制がスタートしました。
これまでに学校選択制が導入された地域は、それによって子どもの通学に大きな問題が起こらない比較的人口が集積した地域(都市部)が多いようです。東京都品川区は学校選択制を最初に導入しましたが、それぞれの学校が特色を出してよりよい教育を行うことが目的でした。自分の希望で学校を選べことにより生徒のやる気や能力を十分に伸ばすことができるのではないかと期待されました。また、親の責任で学校を選択するために保護者の不平の解消につながる、学校側も他の学校と健全な競争が起こり教育環境の向上も図れる、などのメリットが考えられました。
学校格差の拡大が最大の心配事
学校選択制が導入された結果、どのような変化が起こったかを整理してみたいと思います。
選ばれる側の公立学校は、学業成績・進学実績やクラブ活動の実績などを上げようと、必死に努力するようになりました。また、その実績や学校の特徴を積極的に保護者や住民にアピールするようになりました。
品川区は2000年4月から、全国に先駆けて学校選択制を40の区立小学校に導入しました。区内を4つのブロックに分け、それぞれのブロックの中で小学校を自由に選択できるという制度です。01年度からは、18校の中学校にも導入し、区内どこからでも入学できるようにしました。
7年目に入り、通学区域外の学校に入学する人たちは年々増える傾向です。小学校の場合、通学区域外に入学した人たちは2000年度13.0%から06年度30.2%へと倍以上になっています。中学校では01年度17.3%から06年度32.1%に増加しました。その一方で、「集中する学校」と「流出する学校」の学校間格差が生じ、学校間の格差が生まれています。今年度、入学者ゼロの中学校も生まれ、11校のいわゆる「不人気校」と、12校の「人気校」が、一部を除いて固定化しているといわれています。(数字は首都大学東京教育学研究室助手の深見匡さんの取りまとめ、しんぶん赤旗の記事より引用)
そして、この学校間の格差を助長したのが、2003年4月から実施された「学力定着度調査」(学力テスト)制度であると指摘されています。この学力テストは、国語と算数の二教科で実施されています。このテストの結果が、各学校のホームページに具体的に掲載されています。こうした情報の公開によって、成績の上位校には自然に成績の良い児童生徒が集まる傾向が強くなっています。
茨城県内では自由選択再採用の事例はなし
さて、茨城県においては平成16年度の調査で小学校は7自治体で、中学校は5自治体で学校選択制が導入されています。ただし、この場合の選択制は隣接した学校や特定の学校の選択を許すもので、自由選択制やブロック選択制を採用している自治体はありません。
学校選択制の採用にあたって、特に小学校への導入に関しては、慎重に検討する必要性があると考えます。それは、小学校において必要以上に学校格差が開くことに抵抗を感ずるからです。子どもたちには、過度の競争意識を与えるより、地域に密着した教育環境を与える方がよいと思います。また、小学校は地域のコミュニティの拠点施設でもあります。児童を通して、学校と保護者、そして地域が密接に関われる環境は非常に大切です。小学校の自由選択制によって、地域のコミュニティが決定的な打撃を受けることを大いに危惧します。
今年4月24日、安倍首相がすすめる教育改革の方向性を示す「教育再生会議」に、日本経団連より「義務教育改革についての提言」が提出されました。その中で、特に注目されたのが学校教育法を改正して、「学校選択制」を全国的に展開せよということでした。

これまでに学校選択制が導入された地域は、それによって子どもの通学に大きな問題が起こらない比較的人口が集積した地域(都市部)が多いようです。東京都品川区は学校選択制を最初に導入しましたが、それぞれの学校が特色を出してよりよい教育を行うことが目的でした。自分の希望で学校を選べことにより生徒のやる気や能力を十分に伸ばすことができるのではないかと期待されました。また、親の責任で学校を選択するために保護者の不平の解消につながる、学校側も他の学校と健全な競争が起こり教育環境の向上も図れる、などのメリットが考えられました。
学校格差の拡大が最大の心配事
学校選択制が導入された結果、どのような変化が起こったかを整理してみたいと思います。
選ばれる側の公立学校は、学業成績・進学実績やクラブ活動の実績などを上げようと、必死に努力するようになりました。また、その実績や学校の特徴を積極的に保護者や住民にアピールするようになりました。
品川区は2000年4月から、全国に先駆けて学校選択制を40の区立小学校に導入しました。区内を4つのブロックに分け、それぞれのブロックの中で小学校を自由に選択できるという制度です。01年度からは、18校の中学校にも導入し、区内どこからでも入学できるようにしました。
7年目に入り、通学区域外の学校に入学する人たちは年々増える傾向です。小学校の場合、通学区域外に入学した人たちは2000年度13.0%から06年度30.2%へと倍以上になっています。中学校では01年度17.3%から06年度32.1%に増加しました。その一方で、「集中する学校」と「流出する学校」の学校間格差が生じ、学校間の格差が生まれています。今年度、入学者ゼロの中学校も生まれ、11校のいわゆる「不人気校」と、12校の「人気校」が、一部を除いて固定化しているといわれています。(数字は首都大学東京教育学研究室助手の深見匡さんの取りまとめ、しんぶん赤旗の記事より引用)
そして、この学校間の格差を助長したのが、2003年4月から実施された「学力定着度調査」(学力テスト)制度であると指摘されています。この学力テストは、国語と算数の二教科で実施されています。このテストの結果が、各学校のホームページに具体的に掲載されています。こうした情報の公開によって、成績の上位校には自然に成績の良い児童生徒が集まる傾向が強くなっています。
茨城県内では自由選択再採用の事例はなし
さて、茨城県においては平成16年度の調査で小学校は7自治体で、中学校は5自治体で学校選択制が導入されています。ただし、この場合の選択制は隣接した学校や特定の学校の選択を許すもので、自由選択制やブロック選択制を採用している自治体はありません。
学校選択制の採用にあたって、特に小学校への導入に関しては、慎重に検討する必要性があると考えます。それは、小学校において必要以上に学校格差が開くことに抵抗を感ずるからです。子どもたちには、過度の競争意識を与えるより、地域に密着した教育環境を与える方がよいと思います。また、小学校は地域のコミュニティの拠点施設でもあります。児童を通して、学校と保護者、そして地域が密接に関われる環境は非常に大切です。小学校の自由選択制によって、地域のコミュニティが決定的な打撃を受けることを大いに危惧します。
足立区に見る学校選択制 実態は「近く・友人・兄弟」
産経新聞(SANKEI Web 2007/5/16)
1月の教育再生会議第1次報告で提唱された公立小中学校の選択制。都市部を中心に多くの自治体で採用されている。「子供に合った学校が選べるようになる」と評価される半面、地域の学校の意識が薄くなるなどのデメリットも指摘されている。東京都足立区の学校選択制について聞いてみた。
都市部中心に
教育再生会議の第1次報告では「『ゆとり教育』を見直し、学力を向上する」という取り組みの1つに「地域実情に留意のうえ学校選択制の導入など、子供にあった教育内容や教育方法を保護者が選べるようにし、子供の能力・適性、興味・関心、進路希望などに応じ、すべての子供がそれぞれに伸びるようにする」と推進している。選択制は学校が近くに接して建てられている都市部で導入される傾向にあり、小学校では埼玉県で18自治体(平成19年度)千葉県では9自治体(18年度)が実施している。
東京都では今年度、中学校で19区8市、小学校では14区6市で実施されている(一部重複。ブロック、隣接校のみ選択も含む)。
足立区では14年度から区立小中学校の選択制を導入、19年度の新入生は小学生で約2割、中学生で約3割が学区外の学校を選んでいる。
足立区教育委員会は「保護者から学校選択範囲が広がった、と評価されている」としている。
いじめや部活
同区では、16年度まで入学校を選択した理由を新入生の保護者にアンケートしてきた(複数回答)。小学生の1位は「学校が近く、通学しやすい」(75・1%)、2位は「兄、姉が通学している」(37・4%)、3位が「子供の友達が同じ学校へ行く」(36・0%)。中学もほぼ同じ理由で、現在でも大きな変化はないとみられる。
一方、区内の保護者らから、学区外の小学校を選ぶ理由としてこんなケースが聞こえてきた。
(1)幼稚園の時、友達関係がうまくいかず友達とは別の学校を選んだ(2)両親が共働きで、昼間預かってもらう祖父母の家がある学区の学校を選んだ(3)幼稚園時代の友人が多く行く学校を選んだ(4)学年に1クラスしかないため、クラス換えができる大規模な学校を選んだ−
さらに中学校では、希望する部活動がある、または部活動が盛んだとの理由も多い。
小学6年生を持つ父親は「子供の人間関係で選んでいる保護者が多い。主体的に選ぶほど学校に価値があるとは思えない」として、再生会議が掲げるような学校の教育内容や教育方法で保護者が選択することなど不可能だと厳しい見方を示した。
予算への不安
再生会議では地域全体で子供を育てることも提唱している。
だが、別の父親は自宅のある学区内の小中学校を卒業したが、「学校に他学区の子供が増え、地域の学校という意識が薄くなった」と話し、近所でもそうした声が上がっているという。
「兄弟が別の学校へ行ったため、授業参観が大変になった」「野球部が盛んなので選んだら顧問が異動してしまった」などの不満も出た。
さらに昨年末、区と東京都が行う学力テストの結果で、学校予算の一部を増減するとの方針を発表した。多くの抗議が寄せられ、点数の伸び率で配分すると方針転換した。だが、個人ではどうしようもない学校全体の成績で予算が変わることへの不安もあった。
保護者から「私立も都立の中高一貫校もある時代。このままでは、区立校を敬遠する子供がさらに増える」との指摘が出ていた。
対策について同区教委では「それぞれの学校が特色づくりに努力してほしい」と話している。