社保庁労組、残業へ 年金相談、休日も返上
朝日新聞(2007/6/8)
 年金記録のずさん管理の問題で、社会保険庁の職員でつくる「全国社会保険職員労働組合」(約1万1000人、旧自治労国費評議会)は、相談業務に対応するための残業や休日出勤を積極的に受け入れる方針を明らかにした。労組が長時間労働を容認するのは異例だが、労働条件の改善を優先したことが「宙に浮いた年金」につながったとの批判を受け止め、信頼回復を優先する。
 同労組は取材に対して「真摯(しんし)な反省」を明確にしており、今後、集会などでも謝罪を表明していく。自民党などが主張する労組の責任論をかわす狙いもありそうだ。
 同労組は、年金の未統合記録を積極的に解消してこなかったことについて「利用者の立場に立った対応に不十分さがあった」と反省。窓口の相談時間の延長や、休日の説明会や出張相談会の開催に、労組として積極的に協力することなどを4日、社保庁に申し入れた。労組は「労働条件よりも信頼回復が最優先。説明会では利用者に謝罪することも呼びかける」としている。
 この問題では、自民党などが「パソコン導入は労働強化につながらないものとする」といった労使の申し合わせがあったと批判している。労組は「申し合わせは20年以上前のものですでになく、内容も当時としては常識的だった」と主張。しかし、職員の入力ミスの多発も指摘されており、反論よりも謝罪を強調することで批判を鎮めたい考えだ。

参考写真 年金の記録漏れ問題が報道される中で、その根本原因が社会保険庁の労組と管理者の問題であることが次第に明白になってきました。今回の問題のそもそもの発端は、あまりにも正確性を欠く、ずさんな年金記録にあります。
 昭和50年代に、手書きの台帳からコンピューター化されることになりました。その課程で、信じられないミスが続発していったと思われます。そしてその背景に、自治労傘下の労働組合・国費評議会のコンピューター化への反対闘争があります。国費協議会が反対したのは、コンピューター化すると、合理化が進み、人員削減につながり、結果的に労働強化になるという理由からでした。国民のためのサービスの提供や合理化が、国費評議会にすれば組合員の労働強化になると考えたのです。社会保険庁と国費評議会が結んだオンライン端末機導入に関する覚書では、「職員は45分操作したら15分休憩をとる」、「窓口装置の1人1日のキータッチは、平均5,000タッチ以内、最高10,000タッチ以内とする」など、世間の常識が通用しない異常なものでした。ちなみに、私の家内はデータ入力を専門とする会社に、いわゆるキーパンチャーとして勤務していましたが、60分で15分休憩、一日最低でも3万タッチは入力していたそうです。(以下の写真は、昭和54年5月12日に結ばれた社会保険庁総務課長と全日本自治団体労働組合国費評議会事務局長との確認事項の一部)
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参考写真 こうした国費評議会の反対のために、コンピューター入力が遅れ、平成9年1月の基礎年金番号導入時には、複数で確認するクロスチェックができなくなっていたということです。このことが事実ならば、コンピュータの入力作業で、クロスチェックが行われていないということは、全く信じ難いことです。非常識きわまりない行為です。様々な入力ミスがこうした経過で発生したのです。
 自民党の中川秀直幹事長が指摘するように、国費評議会の存在が今回の年金記録漏れ問題の根底にあります。「コンピューター導入反対、年金見込み額試算を行わない、資格記録も交付しない、ファクシミリ番号も公表しないという国費評議会の国民無視の極めて異常な闘争こそが、社会保険庁が国民に不便をかけ続けてきた根源的な理由」です。
 もちろん、こうした国費評議会の横暴をゆるした社保庁幹部の責任も看過できません。当然、歴代の首相も監督責任があります。このような異常な職場風土を一掃するためには、社会保険庁を解体し、職員も管理者もゼロからスタートする必要があります。
 国費評議会は、こうした不祥事を受けて今年4月1日から「全国社会保険職員労働組合」と改称しました。しかし、その本質は全く変わっていません。
 民主党の最大の支持母体は連合であり、連合の中で最大の組織が自治労です。民主党の社会保険庁改革案は、社会保険庁職員は、国家公務員の身分のまま一人もリストラされることなく、「歳入庁」に移行するというものです。少なくても、こうした民主党の政策では、社保庁改革は一歩も前進しません。
参考:社会保険庁と職員団体との「確認事項」等の破棄について(PDFファイル3281Kb)