マニフェスト2007 6月14日、公明党は7月の参院選に向けた政策綱領「マニフェスト2007」を発表しました。
 今回のマニフェストは2005年8月に発表した衆院選向けの「マニフェスト2005」の改定版として、(1)参院選重点公約、(2)マニフェスト2007政策集、(3)当面の重要政策課題について―の3部から構成されています。公明党が実現をめざす具体的な施策や考え方などを網羅しています。
 第1部の参院選重点公約は、マニフェストの中で特に重要な21項目を抽出した上で、公明党が掲げる「未来に責任を持つ政治」の理念のもと、(1)国民の命に責任(命のマニフェスト)(2)暮らしの安心に責任(3)子どもたちの未来に責任(4)国民の安全に責任(5)勢いのある国づくり(経済、地域活性化に責任)(6)平和と環境に責任――の6つの公約を明確にしています。
 このうち、「国民の命に責任」では、医師などが搭乗し初期治療を行うドクターヘリを、5年以内に全国50カ所に配備し、救命率の向上や過疎地、離島の医療充実を進めると明記。また、医師不足対策として、国レベルでの緊急医師派遣体制を整備すると同時に、放射線療法や緩和ケアの普及などで「がんに負けない社会」構築を推進するとしています。
 「暮らしの安心に責任」では、年金記録問題への対応や年金制度の拡充を提示。具体的には、基礎年金番号に統合されていない約5000万件を早急に調査した上で、年金給付における5年の時効を廃止し、本来受け取ることができる年金を全額支給します。
 また、全年金加入者に保険料納付実績や給付額などを通知する「ねんきん定期便」について、08年4月から全加入者に納付履歴などが通知できるよう制度を拡充します。さらに、無年金・低年金の防止へ、年金保険料の事後納付期間を5年に延長することなども訴えています。
 「平和・環境に責任」では、地球温暖化の防止に向け、京都議定書にある温室効果ガス排出量の6%削減(1990年比)の達成や同議定書後の新たな枠組み構築のほか、核兵器廃絶の推進などによる軍縮の推進などもめざします。
 このほか、重点公約では、児童手当支給対象の中学校3年生までの拡大と支給額の増額、中小企業予算の倍増や農山漁村振興による地域活性化、防災対策、防犯ボランティアへの支援などを明記しています。
マニフェストのポイント
◆ドクターヘリを全国50カ所配備
◆「ねんきん定期便」で全員に納付履歴を
◆年金保険料の事後納付を5年に延長
◆京都議定書達成、その後の枠組み構築
◆児童手当の支給「中学3年まで」に
◆中小企業予算倍増で地域活性化

公明党マニフェスト2007「参院選重点公約」
1.国民の命に責任(命のマニフェスト)
(医師不足対策)
  • 医師不足地域に対して、緊急に医師を派遣する体制を国レベルで整備します。また、産科・小児科など医師が不足している特定の診療科に対して診療報酬の引き上げなどにより増員を図るとともに、女性医師の確保対策の一環として、院内保育所の整備や女性医師バンクの体制強化を進めます。

(がん対策の強化で、「がんに負けない社会」へ)
  • がん対策基本法に基づき、がん検診の充実、早期治療体制の整備を図り、全国どこでも高い水準のがん医療を受けられる体制を実現します。
  • 食生活の欧米化等で、手術より放射線治療などが有効ながんが増加していることに対応し、放射線療法・抗がん剤療法の普及と専門医の育成を推進します。
  • 患者自らが適切な治療法を選択できるようにするため、主治医に遠慮せず、気軽にセカンドオピニオン(別の専門医の診断)を受けられる体制を整備します。
  • 治療の初期段階から、がんの痛みをとる緩和ケアが受けられるようにするため、10年以内に、がんを担当する全ての医師に「緩和ケアの研修」を実施します。

(ドクターヘリの全国配備)
  • 「救急医療用ヘリコプター特別措置法案」に基づき、5年以内に全国50カ所(2006年度末時点で10道県11機)のドクターヘリの配備を進め、救急医療における救命率の向上や、過疎地や離島における医療の確保を推進します。
  • 日没後の救急対応が可能となるよう、山間部など医療過疎地を中心に夜間照明付きのヘリポート(災害広場兼用)の整備を推進します。
  • フライトドクターなどドクターヘリ関係医療スタッフの育成支援を実施します。
  • ドクターヘリ事業への都道府県負担を軽減するため、医療費の削減効果等を踏まえ、健康保険等の適用が可能となるよう早期に措置します。

2.暮らしの安心に責任
(年金記録問題への対応)
  • 基礎年金番号に統合されていない約5000万件については早急に調査を行い、2008年6月から確認のための手続きを実施し、受給者へは2008年8月まで、被保険者へは2009年3月までにお知らせします。また、5年の時効を廃止し、過去にさかのぼっての受給を確実に行うなど、本来受け取ることができる年金額を全額支給します。
  • 年金保険料を納めた領収書等がない場合でも、第三者委員会で合理的に納付していたことが推定されれば、積極的に年金受給権を認めるようにします。
  • 「ねんきん定期便」を拡充し、08年4月からすべての被保険者に対して、毎年、加入期間、納付履歴等を本人にお知らせできるようにします。

(年金財政の安定)
  • 年金制度の財政基盤を安定させるため、2004年の年金改革(「100年を見通す改革」)の道筋に沿って、2009年度から基礎年金国庫負担割合の2分の1への引き上げを実現します。

(無年金・低年金防止対策)
  • 現在2年の事後納付期間を5年に延長する制度を創設します。
  • 国民年金の上乗せ給付となる国民年金基金を、より加入、利用しやすい制度に改善します。

(社会保険庁改革)
  • 社会保険庁の抜本改革を行うため、現行組織を解体し、業務の効率化・民間手法の導入を進めつつ、国民サービスの向上を図る「新組織」へと移行します。

3.子どもたちの未来に責任
(子育て支援)
  • 児童手当の支給対象を中学3年生まで引き上げます。その次の段階として、支給額も第1子1万円、第2子1万円、第3子以降2万円への倍増をめざします。
  • 出産育児一時金を現行35万円から50万円への引き上げをめざします。

(いじめ・不登校対策)
  • 子どもからのSOSに即時に対応する「いじめレスキュー隊」、不登校児の居場所としての「ホットステーション」の設置、また、子どもたちの心のよりどころとなって不登校の防止に役立つ「メンタルフレンド制度」の導入など、いじめ・不登校対策を進めます。

(体験学習の実施)
  • NPOや地域ボランティアと連携し、補習授業、職業体験活動などを行う「放課後・土曜日子どもプラン授業」を拡充します。
  • すべての小学生が農山漁村で1週間以上の体験留学ができる機会を提供します。これにより、子どもの豊かな心を育み、地域コミュニティーの再生に貢献します。

(教育費の負担軽減)
  • 私立幼稚園の就園奨励費を拡充するなど、就学前の子育てにかかる負担軽減を推進します。
  • 有利子奨学金の月額貸与限度額を10万円から12万円に引き上げます。また奨学金返還時には、返還額の利子相当額を税額控除できる制度を創設します。

4.国民の安全に責任
(防災・減災対策の強化)
  • 大規模地震、大規模風水害・土砂災害、津波・高潮、豪雪対策等を戦略的・重点的に推進し、防災・減災対策を強化します。
  • 地球温暖化に伴う台風の大型化、集中豪雨、高潮等に備えるため、ゼロメートル地帯における海岸保全施設の老朽化・耐震化対策、中小河川の護岸・改修、土砂崩れ対策を推進します。

(治安対策の強化――「地域安全安心まちづくり推進法」の制定)
  • 凶悪犯罪から子どもや市民を守るため、全国で活動する防犯ボランティア団体(約3万2000団体)による「犯罪に強いまちづくり」への自発的な取り組みや防犯意識の向上のための活動に、国や自治体が積極的に支援することを責務とする「地域安全安心まちづくり推進法」を制定します。

(銃器対策等の強化)
  • 銃器や薬物等の水際対策の強化や、暴力団等組織犯罪の取り締まりを推進します。

(住宅セーフティーネットの確保)
  • 低廉な家賃で居住性能の高い賃貸住宅の普及の促進を図るため、民間賃貸住宅版の品質表示を制度化します。
  • 高齢者世帯等が旧住宅公団の賃貸住宅に安心して住み続けられるよう、国が責任をもって居住の確保の支援措置を実施します。

5.勢いのある国づくり(経済・地域の活性化に責任)
(地域の活性化)
  • 「経済成長戦略大綱」を強力に推進し地域を活性化します。「頑張る地方応援プログラム」や「地域資源活用プログラム」(5年間で1000件創出)の推進、地域中小企業応援ファンド及び不動産担保等に依存しない融資など金融の円滑化で、地域経済の活性化を図ります。
  • ビジット・ジャパン・キャンペーンを促進するなど観光立国を実現します。さらに、長期休暇の取得が可能となるよう施策を推進します。

(イノベーションの創出)
  • 「経済成長戦略大綱」の核心であるイノベーションを創出するため、産学官の連携強化による研究開発投資、人材育成など総合的・一体的な推進を図ります。
  • イノベーションへの民間投資の加速(研究開発、「人財」、IT)などを図ります。また、環境、バイオ、情報通信、ナノテクなどの重点戦略分野への重点投資を行います。

(中小企業を応援)
  • 中小企業支援の強化のため、中小企業予算の倍増をめざします。
  • 事業承継を円滑に進めるため、非上場株式の相続税負担の減免など抜本的な事業承継税制の整備を含め総合的な枠組みを作ります。
  • IT商店街の推進や少子高齢化等に対応した商業サービスの提供など、やる気のある商店街の取り組みを支援します。

(農山漁村の活性化)
  • 意欲のある担い手の支援を強化するため、品目横断的経営安定化対策を円滑に実施します。集落営農の組織化を進めるなど、地域の実情に応じた多様な担い手の育成に取り組みます。
  • 市民農園や体験農業など農山漁村をフィールドとしたグリーン(ないしブルー)・ツーリズムを積極的に推進します。農地保全や耕作放棄地の解消、また都市農業の一層の振興を図るため施策を講じます。
  • 遅れている森林の整備を早急に進め、国産材の活用を図るとともに、複層林化、針・広混交林化等を推進します。また、緑の雇用を推進します。
  • 水産基本計画に基づき、意欲のある漁業者を対象とする経営安定対策の導入を進めます。漁業の有する多面的機能を評価し、重要な役割を担っている離島等の生活環境の改善を図ります。

6.平和と環境に責任
(平和・軍縮の推進)
  • 核兵器をはじめ大量破壊兵器の廃絶をめざした平和外交を推進します。「包括的核実験禁止条約(CTBT)」の早期発効をめざし、批准国が一定数に達した段階で暫定発効の形をとるなど、様々な提案を発信します。
  • 武器貿易条約(ATT)の早期締結をめざし、小型武器を規制する国際的枠組みが構築されるよう取り組むとともに、被害の多発する国の武器回収や開発支援を推進します。
  • 対人地雷の探知・除去技術がさらに進むよう、わが国の技術を活用した機材の開発、人材の育成、ODAを含めた財政支援等を行うとともに、対人地雷除去と併せて犠牲者支援や開発援助を行うなど、世界の模範となる取り組みを進めます。

(地球温暖化防止策の推進)
  • 京都議定書の6%削減を実現します。生活の中に太陽光、風力などの自然エネルギーを生かします。エコハウス、エコビルを増やします。
  • ポスト京都議定書に関して、米国、中国、インドなどすべての主要排出国が参加する、実効性ある新たな枠組みを構築し、2050年までに温室効果ガス50%削減をめざします。
  • 国民総がかりで、家庭で簡単に実行できる省エネ対策など、二酸化炭素(CO穃)削減のための広範な国民運動を展開します。
  • 日中共同出資による「日中環境基金」(仮称)を創設し、環境問題等に長期的に取り組むための資金面でのバックアップ体制を構築します。地球温暖化対策の専門家や環境教育のリーダーを育成し、世界に輩出します。