6月25日、環境省は「国内における毒ガス弾等に関する総合調査検討会」を開催し、神栖市で地下水が有機ヒ素で汚染された問題で、汚染の原因は旧日本軍の毒ガス兵器ではないという調査報告を発表しました。高濃度の井戸水汚染が確認された2か所とも、A地区内に投棄された有機ヒ素を含むコンクリートのような塊が汚染源とほぼ断定した最終報告書を取りまとめました。
 2005年6月に公表した中間報告書では、分析対象がA地区周辺のみだったため、塊については「汚染源の可能性が高い」との推測にとどまっていました。今回の報告書で、環境省は汚染源の調査を終了させます、
参考写真 このコンクリート塊は05年1月、掘削調査で、A地区の中心となる井戸から南東90メートルの地点で発見されました。
 環境省は、A、B両地区を流れる地下水を採取し、流れる量や方向を観測。そのデータをコンピューターで分析した結果、汚染された地下水は、A地区から2年ほどでB地区にまで浸透していくことが判明しました。さらに塊の撤去後、周辺で採取した地下水の汚染濃度が低下し始めていることから、同省は「塊が汚染源だったと考えられる」と結論付けたものです。
 また環境省の調査の結果、市内にあった旧軍関連施設では、今回の汚染物質である有機ヒ素化合物は利用、保管していなかったことも確認されました。
(写真はA地区の井戸から南東90メートルの地点で発見されたコンクリート塊)
汚染メカニズムのまとめ
環境省「国内における毒ガス弾等に関する総合調査検討会」
  • 地下水モニタリングの状況から、B地点やABトラック南西地域においては、A井戸周辺や掘削調査地点周辺で確認されている高濃度の地下水汚染は確認されていない。
  • 地下水汚染シミュレーションで汚染状況を再現した結果、A井戸周辺、B地区、ABトラック南西地域等で確認されている地下水汚染については、A井戸南東90m地点で発見されたコンクリート様の塊が汚染源である可能性が考えられる。
  • 以上により、B地点やABトラック南西地域には別の汚染源が存在する可能性は低く、A井戸南東90m地点において、平成5年6月以降に投入されたと推定されるコンクリート様の塊が地域全体の地下水汚染源である可能性が高い。
  • 旧軍関連施設および旧軍毒ガス兵器等に関する情報収集調査の結果を踏まえると、DPAA(ジフェニルアルシン酸)は神栖市内にかつて存在した旧軍関連施設において製造・保管されていたものではない。