7月10日、年金記録の管理問題を調べている総務省の「年金記録問題検証委員会」は、主な原因がシステム問題と社会保険庁の組織の「ガバナンス(組織の統制)の決定的な欠如」や「安易な事務処理の蔓延」にあったとする中間報告をまとめ公表しました。今後、委員会内に(1)コンプライアンス(法令順守)、(2)業務運営、(3)年金システム、を検証する3つのワーキンググループを設置し、総勢100人強の態勢で社保庁職員らによる保険料着服の調査や、年金記録のサンプル調査も行うことにしています。
参考写真 中間報告では記録問題の原因として、原簿からコンピューターへの入力ミスや原簿の廃棄などの事務処理上の問題や、年金受給時に本人の申し出があるまで記録の統合をしない申請主義の弊害、閉鎖的な人事システムなどを指摘。「国民の権利を保全する職務に不可欠な自律精神の欠如した組織・人員が温存された」と厳しく指摘しています。
 また、使い勝手の悪い旧式の記録管理システム(レガシーシステム)を、長年使い続けてきた点にも触れ、「社保庁はもとより、システム設計や導入にかかわった業者側の問題点も検証する必要がある」とし、システム会社の責任に言及しています。 当面の調査事項としては、持ち主の分からない「宙に浮いた年金記録」5000万件や、コンピューター未入力の厚生年金記録1430万件の中から一定数を抜き出したサンプル調査を実施。コンピューター上の記録がどれだけ正確かを確認するため、原簿と突き合わせる調査も行います。さらに、記録の保管や廃棄の実態、保険料納付記録が見つからない「消えた年金」の一因となった可能性のある社保庁職員らによる着服事件の再点検、効率的な事務運営を妨げたと言われる労働組合の存在など、計20項目以上を挙げています。
 以下、中間報告で指摘された記録問題の原因について、具体的内容を引用します。
3 年金記録問題発生の主な原因、背景
これまでの厚生労働省及び社会保険庁からのヒアリング等により浮かび上がった年金記録問題発生の主な原因、背景には、以下のようなものがある。
【問題1】年金記録管理のシステム・事務処理に関する問題点
今回の年金記録問題の根本的な原因は、年金制度発足以来、年金記録及びその管理の正確性がどのように確保されてきたかという点にある。その正確性の問題は、年金記録管理のシステムや事務処理に関する問題に起因しているところが大きい。
例えば、届出書から紙台帳へ転記したり、パンチ入力をしたり、市町村や企業等と社会保険事務所との間で記録をやり取りしたときなどに、年金記録が不正確に記録された場合があった。また、紙台帳管理の時代の年金記録を後にコンピュータへデータ入力したとき、簡易な漢字入力方式で入力したデータを後に機械的にカナ文字に変換したとき、年金記録管理をオンラインへ移行したときなど、年金記録管理の事務処理が大きく変更された際にも、同様に年金記録が正確に記録されない場合があり、その結果、記録の誤りが累積していったとみられる。このようなこともあって、平成9年1月に基礎年金番号を導入して以来行われてきた基礎年金番号への名寄せの精度に問題が生じ、記録の正確性に問題が生じたものと考える。
コンピュータによって収録・管理される年金記録の原簿の作成のために使われた様々の名簿、マイクロフィルム等の管理は、原簿への記録の転記等の正確性を十分に検証した上で、その取扱いを決定すべきであるが、そういった取扱いのルールが記録の正確性の十分な検証の下に行われたか否か疑問が生じており、現在では年金記録が正確かどうかの確認が難しくなるという新たな問題を惹起することにつながっていると考える。
「レガシー」と呼ばれる旧式の年金記録管理システムについては、導入当時としては決して旧式システムではなかったが、統計分析や業務管理等の用途まで十分に考慮して設計していなかったこと、及びその後このような問題を抱えながらシステムのソフト部分を新しいものに更新せず旧式のものを現在に至るまで使い続けたことが、年金記録問題をこのように大きくした一因と考えられ、社会保険庁はもちろんのこと、システムの設計や導入等に関わった業者側の問題点も検証する必要がある。また、例えば、厚生年金について、年金記録の情報としてカナ氏名の届出が始まったのが昭和54年、住所の届出が始まったのが平成8年と遅かったことなど、年金記録の管理等に係るその他の問題も、社会保険庁が年金記録問題を解決することを困難にしているという意味で、年金記録問題の背景の一つといえる。
より基本的には、年金記録管理の業務を全国で標準化し、社会保険事務所、社会保険事務局、社会保険庁それぞれの単位で進捗管理を行い、その結果を評価し、問題点を改善するというレベルの業務サイクルが社会保険庁内部において確立されていなかったとみられる。
【問題2】社会保険庁の組織上の問題点
社会保険庁の組織上の問題点については、ガバナンス(ここでは「組織の適正・公正な運営と的確な業務遂行のための仕組み・ルール」をいう。)の決定的な欠如が存在する。具体的には、身分は国家公務員であって人事権や経費負担は国にありながら、業務については都道府県の組織に属して都道府県知事の指揮命令を受けるという地方事務官制度やこれに付随する問題が、指揮命令系統のゆがみをもたらした。地方事務官制度自体は、平成12年3月末で廃止されたが、そのことに起因する組織上の問題は、今なお解消されていないと考えられる。
また、人員構成の問題がある。厚生(労働)省本省で採用される擬鐃Πは社会保険庁の在籍期間が一般的に短く、一方、社会保険庁本庁採用の脅鏥擇哭啓錣凌Πがおり、また都道府県ごとの閉鎖的な人事が行われる地方事務官として採用された脅鏥擇哭啓錣凌Πがいる。このような人員の三層構造の問題が放置されてきたために、擬鐃Πは実務に即した適正な組織管理ができず、それぞれの現場では独自の判断で全体との連携を欠いた事務処理を行うようになった。
そういったガバナンスの欠如や人員構成上の問題に加えて、年金記録の正確性は年金裁定の請求があったときに確認すればよいという安易な姿勢に立った事務処理が蔓延し、国民の権利を保全する職務に不可欠な自律精神が欠如したいわゆる親方日の丸的な体質の組織・人員が温存された。
また、職員団体によるオンライン化反対闘争や業務改革に後ろ向きの多数の覚書・確認事項が示す、既に強く批判されている職員団体の行動がみられた。
さらには、職員による保険料の着服等の不正行為があった事案も報告されているなど、コンプライアンスの意識が低い組織となってしまったと考える。

参考:総務省行政評価局「年金記録問題検証委員会」のHP