フジテレビの日曜日の人気番組「平成教育委員会」で、こんな問題が出題されました。「コペルニクスは海で沖をながめているとわかる、どんなことをあげて地球が球であると言ったか答えなさい」という問題でした。解答は「コペルニクスは『天体の回転について』の中で、陸から遠ざかっている船が、下の方から見えなくなっていくことをあげて、地球が球であるといっている」というものでした。この解答自体は、常識の範囲ですが、何かの回答者が「海の水平線を見ると丸く見えるから」と解答していました。これも正解ではと思いましたが、講師のユースケ・サンタマリアは「それは錯覚」と一刀両断。どうもスペースシャトルのように高高度から見ない限り、水平線は丸く見えないとのことです。
地球の測り方(2.水平線)
大阪市科学館:月刊『うちゅう』「窮理の部屋」のHPより引用
水平線を見ると結構遠くまで見渡せているような気がします。例えば砂浜の波打ち際に立って(海面から1.5mの高さで)水平線を眺めると、見えている水平線は約4.4km先になります。また、「水平線」とはいいますが、図1のように水平線は水平方向からわずか0.04度ですが下の方に見えます。これが、海面から高さ15mの展望台からだと水平線は14km先で水平方向から0.12度下になり、150mの小高い山の上からだと44km先で0.39度下になります。もっと極端な場合で、地上500kmだと水平線は2600kmも先で水平方向から22度も下に見えます。これは、地面描いた半径4mの円を、中心に立って見ているのと同じになります。これくらいだと水平線はまっすぐではなく、丸く上に膨らんだ形になっていることがわかるでしょうね。ただし地上500kmというと、だいたいスペースシャトルの飛んでいる高さになってしまいます。
つまり、スペースシャトルに乗って地上500kmまで上がれば、地球が丸いということが感じられそうです。しかし、150mの小高い山に登ったくらいでは、水平線は水平方向からわずか0.39度下にしか見えませんから、水平線が丸く見えるというのは…気のせいかもしれませんね。
確かに、水平線を写真に撮ってみましが、標準系のレンズで取るか、広角レンズでも画面の中央部に水平線を捕らえれば、水平線は一直線ですね。「水平線は丸く見える」という、今までの常識を少し修正したいと思います。
私は、大切で興味深いのは、人間が海岸に立って、知識や偏見(先入観)などもなく「丸く感じられるか」という点だと思います。
これはつまり、海に向かって180度程度の視野がある時のお話です。
海に向かって人間の見える範囲は5km弱程度ですので(これは有名なお話ですので大丈夫でしょう)、
海岸が真っ直ぐの時、前5キロ、右5キロ、左5キロ、どの方角を見ても水平線が「途切れる」はずです。これは海に実際に向かってみればよく分かります。人間は優れた動物ですので、海岸が真っ直ぐ続いているなら、海が弧を描いている以外にあり得ない、と考えます。本当は部分的に見れば真っ直ぐ見えていても、頭の中では弧を描くのです。それはある意味では「錯覚」という言葉かもしれませんが、正しい認識であり、決して偏見でもなく、人間が理知的な生き物であるからそうなるのだと思います。人間の視野は150度以上あるので、同時にこれを見て、脳の中で「丸い」と判断しても決して先入観があるから、とは科学的にも言えないように思います。いかがでしょうか。