GISの活用の一例:航空写真で土地利用の変化を見る 
参考写真 各地の自治体が導入を進めている地図情報システム(GIS)について、興味深い記事が掲載されていました。大阪府富田林市で導入されたGISによって、未登記の課税物件が発見できたという朝日新聞の記事です。実際の市町村では、GISを導入しなくても、年に一回(または数年に一度)航空写真を撮影し、それを照合することで未登記の物件を発見する作業をしています。したがって、この記事自体は別に目新しい出来事を記載した内容ではありません。GIS導入の効果を自治体側が殊更強調して取材に応じたのかもしれません。
 しかし、こうしたGISを導入することによって、今まで固定資産税の徴収だけに使われていたような航空写真が、地図情報の一部として市民の公開されるメリットは大きいと言えます。たぶん、多くの自治体では、何十年前からの航空写真のデーターを保有しています。国土地理院も多くのデーターを公開しています。こうしたデータをレイヤー上で表示させることによって、現在の土地が20年〜30年前にどのような土地利用をされていたか知ることができます。例えば、新興の住宅団地を買い求めようとするとき、開発が行われる前は、田んぼだったのか、池だったのか、沢だったのかを簡単に知ることができ、購入の際貴重な情報となります。こうした、自治体の持つ貴重な情報を再活用できることも実はGIS導入の大きなメリットなのです。
(写真は、富田林市の地図情報システム(GIS)「e絵図@とんだばやし」からコピーした航空地図の一部。航空写真は2006年撮影と07年撮影の2種類がレイヤー上に配置され選べるようになっています。この写真は未登記の事例ではありませんが、上が06年撮影分で、下が07年撮影分です。06年にあった建物が07年には撤去されていることが明確に分かります)
参考:富田林市の地図情報システム(GIS)「e絵図@とんだばやし」
課税漏れ、航空写真と家屋図で発見 大阪・富田林市
朝日新聞(2007/10/13)
 大阪府富田林市が航空写真と家屋図などのデータを重ね合わせることができる市独自の地図情報システム(GIS)を開発したところ、固定資産税が未課税となっている倉庫や車庫などを約500件も発見した。市は個別に評価したうえで課税する方針で、少なくとも数千万円の徴収が見込めるという。課税物件を掘り起こす新たな手法として注目されそうだ。
 市は05年、上下水道や都市計画などの担当課が作っていた縮尺や表記がまちまちの地図を統合しようと、GISの開発に着手。パソコンの端末上で航空写真にすべての地図を自由に重ねることができるようになった。
 市税務推進室では06年から課税物件が記載された家屋図を重ねて調査。倉庫や車庫、増築したのに未登記となっている住宅など、家屋図に載っていなかったり、現状が課税内容と異なったりしている建物が約3千件見つかった。農作業機械の雨よけなど課税できない物件を除外し、課税対象は約500件に上った。
 市は今年度から建物の評価を進め、地方税法に基づいて過去5年分までさかのぼって徴税する。税額は少なくとも数千万円が見込めるという。
 市の税務担当者はこれまで、家屋図をもとに、職員数人のチームで市内を巡回するなどして未課税物件を探していた。職員数が少ないうえ、建物を外から見るだけだったため、確認漏れが多かったという。担当者は「労力もコストも大幅に削減できるし、税収も上がる」と喜ぶ。
 同府茨木市は、測量会社大手のパスコ(本社・東京)が開発したGISを利用。2年分の航空写真を比較し、新築物件の中から未課税の建物を毎年、数十件見つけていた。この手法では、以前からある未課税の物件は発見できないため、今年度は、富田林市と同様に航空写真と家屋図を照合して洗い出しを進めている。「数百件単位で見つかるかもしれない」(担当者)と話している。