今年度産のコメ価格は、昨年比で8%下落
 本年度(2007年度)産のコメの販売価格が大幅に下落しています。茨城産のコシヒカリ(A地区)の場合、平成17年度が60キロ当たり1万5835円であったものが、18年度1万5704円と下落し、今年は1万4411円と8.23%も下がっています。(コメ価格の指標となる公益法人の「コメ価格センター」の落札価格)
 価格下落の理由は、コメの供給過剰予測があります。9月15日現在の07年産米の作況指数は99(平年=100)で、10アール当たりの収穫量は平年並みとなる見込みです。しかし、主食用のコメの生産量は、農水省が目標としている828万トンを上回る856万トンになると見込まれています。これは、農水省の07〜08年のコメ全体の需要予想833万トンをも上回り、約23万トンの大幅な供給過剰になる計算です。多くの農家が、コメを作った方が転作するより収入が多いと考え、需要を超える作付けを行っている結果です。
 昨年度産米も過剰な作付けのため、JA全中によると10月末で約12万トンの在庫が出る見通しです。このため、06、07年産米を合わせると計約35万トンもの余剰米が出ると見込まれています。
 また、JA全農グループが、今年から農家に対する代金の支払い方法を変更したことも大きな影響を与えています。
 昨年までは、農協への集荷時に販売予想価格に近い金額の仮渡し金を支払っていました。今年度から一部を内金にし、残りは販売動向により支払う方式に変更しました。仮渡し金が販売価格を下回った場合、農家から返金を受けなくてはならないための苦肉の策でした。しかし、この内金の額(今年は7000円と設定されています)は、販売価格の下限と認識され、場合によってはこの水準にまでコメに価格が下落するのではと言う不安感を助長しました。
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内金・追加金払い方式での動揺広がる
 具体的には、JA全農は内金の水準として、「60キロ=7000円」というモデルを設定しました。茨城県の場合、昨年の内金は1万600円(平成18年9月支払い)であったものから比べると、3060円の差額が出たことになります。
 秋に手にする現金が減り、農業機材のローン返済など資金繰りに苦しむ農家も出ています。
 こうした混乱を回避するためにJA全農では、追加金を3000円と設定し、11月1日に支払うことを決定しました。内金は、市場で「コメ価格の下限」と見られていただけに、引き下げは価格下落の一因になったと指摘されており、全農は異例の引き上げに動いたといえます。
政府与党は政府に備蓄米の積み増しを要請
 コメの下落を最小限に抑えるために、自民・公明の与党は、政府に対し余剰米を買い上げて、備蓄米を34万トン積み増し、備蓄量を100万トンにまで上げることを要請しました。
 先に述べたように07年産米は、約23万トンの供給過剰になる見込。JA全中によると、これに加え06年産米が市場に約11万トン流通在庫としてあります。
 今年10月末の備蓄米は約67万トンになる見込みで、適正な在庫水準を100万トンとしていることから、自民党は、過剰生産分と流通在庫分相当の34万トンの積み上げを求めています。60キロ当たり1万〜1万5千円で34万トン買い上げた場合、約560億〜850億円の国庫負担が生じます。