10月18、19日の両日、京都府の綾部市で「全国水源の里シンポジウム」が開催され、北海道から鹿児島まで、全国から850人の関係者が参加しました。
このシンポジュームを主催した綾部市は、65歳以上の高齢者が住民の半数を超え、共同体としての機能が維持できずに、消滅の危機に直面している「限界集落」を対象にした全国初の「水源の里条例」を今年4月に施行し、先駆的な取り組みを始めました。定住促進や特産品の開発へ、今年度は約4000万円の予算を計上。各集落の住民たちも再生への”チャレジ”をスタートさせています。このシンポジュームをキッカケに、共通の課題を持つ自治体が情報交換し、国などに政策提言を行うための「全国水源の里連絡協議会」を立ち上げる予定です。
定住促進や特産品の開発へ、約4000万円の予算計上
京都府綾部市が今年4月に施行した「水源の里条例」は、(1)市役所から25キロ以上、(2)高齢化率60%以上、(3)20世帯未満、(4)水源地域に位置――の4条件を満たす市志、古屋、栃、大唐内、市茅野の5集落を「水源の里」に指定。5年間の時限条例で、短期間に定住策や就労の場創出のための特産品づくりなどの施策や予算を集中投入することにしています。
具体的には、2007年度予算で約4000万円を計上。水源の里の会議や、特産品の加工場としての機能も併せ持つ「老富会館」の改修を行ったほか、定住促進のための住宅整備補助金(補助率2分の1,150万円を限度)、定住支援給付金(1カ月5万円、12カ月を限度)などの支援策もスタートしました。都市交流イベント、貸し農園やオーナー制度の実施、農家民泊農林業体験事業にも積極的に取り組みます。なお、綾部市には計39の限界集落が存在しており、市は「水源の里」での成功例を他の34の限界集落でも応用展開したいとしています。
「限界集落を何とかしよう」との四方八洲男市長の考え方に呼応して、栃、大唐内、市茅野の3集落がある老富地区の女性たちが立ち上がりました。3集落が協力し5年ぶりに女性部を復活。特産品づくりへ、ススキなどが背丈以上に生い茂った耕作放棄地を総出で開墾し、フキ、ジャガイモ、ヒマワリ、里芋などを植えました。今年6月には、市内で催された二王公園まつりで、女性部が特産品のトチモチを販売し、大好評を得ました。
一方、市志でも“希望”が芽生え始めています。今春、大阪から新たな移住者が現れ、市志で有機農業に取り組み始めました。現在、手づくりで家を建ててています。その家が完成すれば、市志の「高齢化率100%」を改善させることになります。
(写真説明:綾部市市志地区では、水田に種を播いて無農薬・無化学肥料で自然に近い状態で山ブキを栽培する技術を独自で開発しています。一回播種すると同じほ場で何年もフキノトウ(3月)や山ブキ(5月)の収穫ができます。山ブキは京都市場に出荷されてます。)
参考:綾部市のホームページ
京都府綾部市の「水源の里条例」
このシンポジュームを主催した綾部市は、65歳以上の高齢者が住民の半数を超え、共同体としての機能が維持できずに、消滅の危機に直面している「限界集落」を対象にした全国初の「水源の里条例」を今年4月に施行し、先駆的な取り組みを始めました。定住促進や特産品の開発へ、今年度は約4000万円の予算を計上。各集落の住民たちも再生への”チャレジ”をスタートさせています。このシンポジュームをキッカケに、共通の課題を持つ自治体が情報交換し、国などに政策提言を行うための「全国水源の里連絡協議会」を立ち上げる予定です。
定住促進や特産品の開発へ、約4000万円の予算計上
京都府綾部市が今年4月に施行した「水源の里条例」は、(1)市役所から25キロ以上、(2)高齢化率60%以上、(3)20世帯未満、(4)水源地域に位置――の4条件を満たす市志、古屋、栃、大唐内、市茅野の5集落を「水源の里」に指定。5年間の時限条例で、短期間に定住策や就労の場創出のための特産品づくりなどの施策や予算を集中投入することにしています。

「限界集落を何とかしよう」との四方八洲男市長の考え方に呼応して、栃、大唐内、市茅野の3集落がある老富地区の女性たちが立ち上がりました。3集落が協力し5年ぶりに女性部を復活。特産品づくりへ、ススキなどが背丈以上に生い茂った耕作放棄地を総出で開墾し、フキ、ジャガイモ、ヒマワリ、里芋などを植えました。今年6月には、市内で催された二王公園まつりで、女性部が特産品のトチモチを販売し、大好評を得ました。
一方、市志でも“希望”が芽生え始めています。今春、大阪から新たな移住者が現れ、市志で有機農業に取り組み始めました。現在、手づくりで家を建ててています。その家が完成すれば、市志の「高齢化率100%」を改善させることになります。
(写真説明:綾部市市志地区では、水田に種を播いて無農薬・無化学肥料で自然に近い状態で山ブキを栽培する技術を独自で開発しています。一回播種すると同じほ場で何年もフキノトウ(3月)や山ブキ(5月)の収穫ができます。山ブキは京都市場に出荷されてます。)

限界集落 消えゆく前に手を打たねば
読売社説(2007/10/28)
65歳以上の高齢者が半数を超え、社会的な共同生活が困難な「限界集落」が増えている。
国土利用のあり方も踏まえ、各地域の実情に即したキメ細かな対策が急務だ。
京都府綾部市は、山間部に抱える限界集落を「水源の里」と名づけ、先に「全国水源の里シンポジウム」を開いた。参加した全国51市町村は、年内に全国組織をつくり、集落の活性化に向けて連携を強める。国土交通省も、集落の維持策を検討する委員会を発足させるなど、政府としても対策に乗り出した。
「限界集落」と言われる地域では、バス路線の廃止によって、買い物も通院もままならない。携帯電話もなかなか通じない。冬は雪に閉ざされる地区も多い。草刈りや冠婚葬祭など、集落としての共同作業や助け合いもできない。祭りなど地域文化も廃れてしまう。
耕作や山林管理も放棄される結果、洪水や土砂災害の危険性が高まる。サルやシカなどの獣害も増える。棚田などの伝統的景観も損なわれる。
農山村地域が持つ多面的な価値が消えていってしまうことになる。
国交省と総務省が実施した2006年の調査では、過疎地域の市町村にある6万2273集落のうち、高齢者が半数を超す集落が1割を超えた。
前回の1999年調査から7年間で191の集落がなくなり、今後消滅する可能性がある集落が全体の4%、2643に上っている。
地域社会の機能を支える取り組みは、これまでもなされてきた。
例えば、広島県三次市の旧作木村では、84の集落を12の行政区にまとめ、葬儀などで協力し合っている。岡山県高梁市の旧備中町では、お年寄りの診療所への送迎事業を行っている。
山形県最上地方の市町村では、独り暮らしの高齢者を対象に食料品などの宅配や雪おろしのサービスをしている。
綾部市は、限界集落の振興を目的として「水源の里条例」を昨年制定した。
空き家を使った定住策や都市との交流、特産品の開発を進める計画だ。特産物を生かして仕事を作り、新住民を呼び込むことが大切ということだろう。
そのためには、若者や団塊の世代、都市住民らにこの問題への関心を高めてもらうことが必要だ。農林業体験を取り入れた余暇活動「グリーン・ツーリズム」や、都市に住みながら農山村にも生活の拠点を持つ「二地域居住」といった取り組みも増やしてはどうか。
地道な努力を積み重ねて、「限界」の二文字を消していくことが大事だ。
京都府綾部市の「水源の里条例」