新薬の登場で脳梗塞は治る病気に、しかし受け入れ病院のリストづくりは進まず
ある病院の院長から、救急医療の課題についてお話を聞く機会がありました。その際、話題に上ったのが「t-PA(アルテプラーゼ)」という新しい薬です。「t-PAは脳梗塞の特効薬で、発症後3時間以内に服用すれば、劇的に症状が回復する場合がある」とのことでした。
年間約8万人が死亡すると言われている脳梗塞。死をまぬがれても麻痺などが残り、寝たきりになることも多い怖い病気です。
脳梗塞は、脳の血管に血のかたまりが詰まることで起こります。その結果、脳の一部に血流が流れなくなり、そのまま時間が経てば脳は壊死してしまいます。これまで脳梗塞には決定的な治療法がありませんでしたが、t-PAという新薬のおかげで希望が見えてきました。
t-PAは脳に詰まった血栓を溶かす働きがあり、早期に使用すれば血流を回復させ脳の働きを回復させることができます。これまでは麻痺が残るようなケースでも救うことが可能になったのです。
国内の治験では、脳梗塞の発症後3時間以内にtPA治療を行うと、3か月後に、ほとんど後遺症なく社会復帰できた割合は37%でした。米国での治験もほぼ同じで、社会復帰の割合は処置しない場合より5割高くなりました。
ある病院の院長から、救急医療の課題についてお話を聞く機会がありました。その際、話題に上ったのが「t-PA(アルテプラーゼ)」という新しい薬です。「t-PAは脳梗塞の特効薬で、発症後3時間以内に服用すれば、劇的に症状が回復する場合がある」とのことでした。
年間約8万人が死亡すると言われている脳梗塞。死をまぬがれても麻痺などが残り、寝たきりになることも多い怖い病気です。
脳梗塞は、脳の血管に血のかたまりが詰まることで起こります。その結果、脳の一部に血流が流れなくなり、そのまま時間が経てば脳は壊死してしまいます。これまで脳梗塞には決定的な治療法がありませんでしたが、t-PAという新薬のおかげで希望が見えてきました。
t-PAは脳に詰まった血栓を溶かす働きがあり、早期に使用すれば血流を回復させ脳の働きを回復させることができます。これまでは麻痺が残るようなケースでも救うことが可能になったのです。
国内の治験では、脳梗塞の発症後3時間以内にtPA治療を行うと、3か月後に、ほとんど後遺症なく社会復帰できた割合は37%でした。米国での治験もほぼ同じで、社会復帰の割合は処置しない場合より5割高くなりました。
治療に求められる厳密な基準
しかしこの画期的な新薬t-PAには強い副作用があります。t-PAは梗塞を起こした部分を溶かして血流を回復させるのですが、脳の血管はある程度以上血流が止まると壊死してしまうため、一定時間以上経過した状態でt-PAを投与すると、脳出血を起こしてしまう恐れがあるのです。このため、t-PAの投与は発症から3時間以内に限られると厳密に決められています。
また、t-PAによる治療を行える病院は(1)CT・MRI検査が24時間可能であること(2)集中治療のため十分な人員を中心とするストロークチームおよびSCU(脳卒中集中治療室)またはそれに準ずる設備があること(3)脳内出血などの不慮の事故に際し、脳神経外科的処置が迅速に行える体制が整っていること(4)急性期脳梗塞治療の経験が十分あること──など、厳しい基準が設けられています。
また、老齢者は血管そのものが弱くなっているため、「75歳以上の患者には原則投与すべきではない」と、話しをして下さった院長は語っていました。
一刻も早い受け入れ体制づくりと早期発見のための啓発活動を
問題はこの基準に合致する病院が限られていることと、基準に合致する病院のリストがまだ整備されていない地域が多いことです。普通このような情報整備は都市部が先行すると思われがちですが、東京都もt-PAによる治療が行える病院のリストは作成していません。このため、救急車は脳梗塞と見られる患者を搬送しようとしても、t-PAによる治療ができる病院を素早く見つけることができず、さらに見つかったとしても距離が離れた病院まで搬送しなければならないなど、さまざまな困難を負うことになります。
t-PAが使えるのは脳梗塞の発症後3時間以内なのですが、投与しても脳出血を起こす恐れはないかなどの事前検査を慎重に行わなければならないため、病院に搬送されてから治療開始までにはかなりの時間がかかります。それだけに発症から一刻も早くt-PAによる治療ができる病院に運ぶことが必要なのです。
これまで救急の現場では、脳梗塞の患者が運ばれてきても、ほとんどなす術がなかったというのが実情でした。しかしt-PAの登場で脳梗塞の患者は救急医療で救うことのできる対象になりました。それだけに、一日も早いリストづくりと病院・救急隊の連携体制がつくられてほしいものです。
さらに、梗塞を起こしたことを患者や家族が認識することが中々難しいという問題もあります。国立循環器病センターの調べでは、発症後3時間以内に受診した患者は19%しかいません。脳梗塞と気づくのが遅れた、救急車を呼ばず自力で来院した、などが原因です。
脳梗塞の症状を良く理解して、早期発見につなげることが必要です。
しかしこの画期的な新薬t-PAには強い副作用があります。t-PAは梗塞を起こした部分を溶かして血流を回復させるのですが、脳の血管はある程度以上血流が止まると壊死してしまうため、一定時間以上経過した状態でt-PAを投与すると、脳出血を起こしてしまう恐れがあるのです。このため、t-PAの投与は発症から3時間以内に限られると厳密に決められています。
また、t-PAによる治療を行える病院は(1)CT・MRI検査が24時間可能であること(2)集中治療のため十分な人員を中心とするストロークチームおよびSCU(脳卒中集中治療室)またはそれに準ずる設備があること(3)脳内出血などの不慮の事故に際し、脳神経外科的処置が迅速に行える体制が整っていること(4)急性期脳梗塞治療の経験が十分あること──など、厳しい基準が設けられています。
また、老齢者は血管そのものが弱くなっているため、「75歳以上の患者には原則投与すべきではない」と、話しをして下さった院長は語っていました。
一刻も早い受け入れ体制づくりと早期発見のための啓発活動を
問題はこの基準に合致する病院が限られていることと、基準に合致する病院のリストがまだ整備されていない地域が多いことです。普通このような情報整備は都市部が先行すると思われがちですが、東京都もt-PAによる治療が行える病院のリストは作成していません。このため、救急車は脳梗塞と見られる患者を搬送しようとしても、t-PAによる治療ができる病院を素早く見つけることができず、さらに見つかったとしても距離が離れた病院まで搬送しなければならないなど、さまざまな困難を負うことになります。
t-PAが使えるのは脳梗塞の発症後3時間以内なのですが、投与しても脳出血を起こす恐れはないかなどの事前検査を慎重に行わなければならないため、病院に搬送されてから治療開始までにはかなりの時間がかかります。それだけに発症から一刻も早くt-PAによる治療ができる病院に運ぶことが必要なのです。
これまで救急の現場では、脳梗塞の患者が運ばれてきても、ほとんどなす術がなかったというのが実情でした。しかしt-PAの登場で脳梗塞の患者は救急医療で救うことのできる対象になりました。それだけに、一日も早いリストづくりと病院・救急隊の連携体制がつくられてほしいものです。
さらに、梗塞を起こしたことを患者や家族が認識することが中々難しいという問題もあります。国立循環器病センターの調べでは、発症後3時間以内に受診した患者は19%しかいません。脳梗塞と気づくのが遅れた、救急車を呼ばず自力で来院した、などが原因です。
脳梗塞の症状を良く理解して、早期発見につなげることが必要です。
脳梗塞の症状
〈1〉片方の手足など半身の動きが急に悪くなる
〈2〉突然ろれつが回らなくなる、言葉が出にくくなる
〈3〉片方の目が見えにくくなる、視野が狭くなる
〈4〉突然ふらつき、歩けなくなる
〈5〉意識がなくなる
〈2〉突然ろれつが回らなくなる、言葉が出にくくなる
〈3〉片方の目が見えにくくなる、視野が狭くなる
〈4〉突然ふらつき、歩けなくなる
〈5〉意識がなくなる