12月14日、子どもらでにぎわう長崎県佐世保市のスポーツクラブで、37歳の無職の男が散弾銃を乱射し、水泳インストラクターの女性と中高生時代の同窓生の男性が射殺され、利用客の小学生ら6人がけがをするという事件が起きました。犯人は、翌15日早朝、自らの銃で命を絶つという結末となりました。
 この男は定職に就かず、夜中に不意に他人の家を訪ねるなど、近所では危険人物に見られていたといいます。男は銃を持って自宅の周りを歩き回るようなことをしていたとも報道されています。
 16日付の三大紙の社説は一斉に、「銃所持の厳格化」を訴えました。
銃乱射事件―なぜ凶器を持たせたのか
朝日新聞社説(2007/12/16)
 警察庁によると、06年末で散弾銃26万丁、ライフル銃4万丁、空気銃3万丁が許可を受けている。つまり、合法的な銃が30万丁以上も出回っているのだ。
 暴力団などが隠し持つ不法な銃を摘発するのはもちろん大事だが、この30万丁を軽視してはならない。合法的な銃についても所持させるかどうかをもっと厳しく審査する必要がある。
 いまの銃刀法の欠格事由では厳しくチェックできないというのなら、法律の規定を変えればいい。銃による悲惨な事件は今回限りにしなければならない。
散弾銃乱射 銃所有の許可基準を厳格化せよ
読売新聞社説(2007/12/16)
 銃刀法により、本来は狩猟や有害鳥獣の駆除のために認められた制度にもかかわらず、犯罪に使われるケースや暴発事故が絶えない。合法的な銃でも、持ち主がいつ逆上して取り出さないかと、周囲の人は不安でならないだろう。
 都市部では、猟銃を持つ必要もあるまい。保管場所を限定して第三者が一括管理し、使用目的も詳細にチェックするなど、許可基準の厳格化が必要だ。
佐世保乱射 銃の許可をもっと厳格にせよ
毎日新聞社説(2007/12/16)
 気がかりは、容疑者宅の近隣住民が、第一報を聞いた段階で容疑者の犯行と直感した、と口をそろえていることだ。日ごろから言動に不安を感じ、容疑者が猟銃を所持したことを知ってからは、警察に対策の必要性を訴えていたという。結果として県公安委員会の許可や警察の対応に手抜かりがあったと言わざるを得ない。警察などの関係者は防ぎ得た事件だったと重く受け止めるべきである。
 宇都宮市で5年前、男が隣家の主婦2人を猟銃で殺傷し、自殺した事件をめぐり、宇都宮地裁は今年5月、銃所持の許可が違法だったとして、県に4700万円の賠償を命じている。男を身辺調査した警察官が「許可には熟慮を要する」と報告したのに、許可を与えたことが問題とされた。
 その後、警察庁は審査を厳密にするように全国の警察本部に指示、11月に成立した改正銃刀法で条件外使用の罰則を強化していた。今後は現在3年の更新期間の短縮や、審査方法の見直しなどを検討すべきだ。

 一般市民の身近に30万丁もの銃が存在するという数字には驚かされます。今日のニュースでは、この男が2700発もの実弾を所持していた事実も浮上し、銃管理の甘さに背筋が寒くなる思いです。
 銃刀法の欠格事由のチェックを厳しくすることが必要です。第三者からの通報等があった場合は、警察はすぐさま審査を行い、問題があれば許可を取り消す仕組みを導入すべきでしょう。保管場所も読売新聞が主張するように、一括管理も検討に値します。実弾の管理は、必要以上の数量を自宅に保管できるようなシステムは早急に改める必要があります。
 銃と市民生活は両立しない。この位厳しい態度で、銃や実弾の管理を徹底してもらいたいものです。