薬害肝炎、カルテない患者も救済を・衆院委で原告
日本経済新聞(NIKKEI-NET:2008/1/8)
 薬害肝炎問題で、被害者一律救済法案の衆院送付に先立ち、衆院厚生労働委員会が1月8日午前、開かれた。薬害C型肝炎訴訟原告団の山口美智子代表ら肝炎患者の参考人質疑が行われ、山口代表は法案に評価を示しながらも「これで全面解決ではない。カルテが廃棄された患者も救われなければならない」などと改めて訴えた。
 山口代表は参考人質疑の中で、C型肝炎ウイルスに汚染された血液製剤の投与を証明するカルテがなく、原告に加われなかった人がいたことを明らかにした。「自分と同じ血液製剤を投与され、同じ被害を受けたのに、裁判に訴えたくても原告になれなかった人がいる。自分は代弁者として被害を訴えなければならないと思った」と強調した。
 救済法案では、患者が救済の対象になるには、裁判所が、血液製剤の投与でC型肝炎になったことを認定することが必要。血液製剤フィブリノゲンと第9因子製剤(クリスマシン)の投与で感染した人は約1万2000人と推定されるが、そのうち投与証明のためのカルテがある人は、1000人程度とみられている。

参考写真 薬害肝炎訴訟をめぐり、患者全員を一律救済するための「薬害肝炎被害者救済特別措置法案」が、1月8日午後の衆院本会議で全会一致で可決、衆議院を通過しました。参院でも近く審議が始まり、週内に成立する見通しです。
 C型肝炎はウィルスに汚染された血液を輸血したことや汚染された血液を原料に薬(血液製剤)を作ったことが原因で広まりました。その意味で人為的な疾病であり、国や製薬会社の責任は重く、今回の特措法成立の意味は大きいと言えます。
 しかし、そのすそ野には、いまだ救われない薬害肝炎患者が多数いることを絶対に忘れてはなりません。
 特措法の前文では「甚大な被害が生じ、被害の拡大を防止し得なかったこと」について、国の責任を明記しました。
 給付金は、肝硬変や肝がんになった人が4000万円、慢性肝炎には2000万円、発症していない人には1200万円などと、症状に応じた一律の支払いを定めています。
 対象は、フィブリノゲンなどの血液製剤の投与がカルテなどで証明される患者で、約1000人あまり。その内、今回訴訟を起こしている原告団は207人です。
 しかし、薬害肝炎の問題の本質は、この1000人で終わるものではありません。血液製剤によるC型肝炎患者は1万人とも推定されています。その多くはカルテが不明で、今回の「一律救済」の範囲には入りません。さらに200万人ともされるC型患者全体では多くが感染ルートも分からず、新法でも救いようがありません。
 同じように予防接種など医療行為での感染例の多いB型肝炎の患者にも救いの手は伸ばせません。
 特措法の成立を第一歩として、ウィル性肝炎の撲滅を目指した総合的な取り組みが望まれます。