今国会の最大の争点ともなっている、ガソリン税など道路特定財源の暫定税率について、全国の地方自治体からは一斉に、暫定税率維持を強く求める声があがっています。各自治体は、暫定税率が廃止されれば、住民生活に大きな支障が出ることを訴えるとともに、廃止を声高に叫ぶ民主党の無責任な姿勢を批判しています。
参考写真 暫定税率による税収は、国と地方がそれぞれ実施する道路整備事業に使われます。暫定税率が廃止されると、全国の自治体で年間1兆6000億円もの歳入欠陥が生じ、地方財政や住民生活に重大な影響を及ぼします。
 茨城県は橋本昌知事が記者会見で、道路特定財源の暫定税率の存続の意義を明確に語っています。さらに、ホームページでは暫定税率が廃止されると378億円の道路財源が減少し、特に建設費が73%減額となり、現在の約1/4へと、大幅な縮減となると試算しています。その結果、高規格幹線道路の整備費が約60%の減となり、圏央道の開通時期は、5年〜10年以上の大幅な遅れ、東関道水戸線(潮来〜鉾田間)は、事業着手が極めて困難になるなどの影響があるとしています。
参考:「元気ないばらきづくり」には道路特定財源の暫提税率の維持が必要です
 福岡県は県のホームページで、(1)暫定税率が廃止されると、道路整備のための予算が県と県内市町村で約700億円の減収になる(2)その場合、道路の新設、着工中の整備事業の継続、既存道路の最低限の維持・補修さえできない事態に陥る(3)教育、福祉などの予算を回さざるを得なくなり、住民サービスが低下する――と訴えるとともに、ガソリン税の引き下げは「世界的な環境政策の流れにも逆行する」と指摘しています。
参考:道路特定財源に関する福岡県からのお願い
 福岡県前原市は2月1日、「広報まえばる号外」を全戸配布しました。同市では、道路を新設しなくても、道路の維持管理などで年間5億8000万円の予算が必要ですが、暫定税率が廃止されると1億6000万円を超える減収となり、その分が新たな市の負担になります。市は号外で「(暫定税率廃止は)地方財政を直撃し、みなさんの生活に大きな問題が生じる」として、税率維持への理解を住民に求めています。
 山梨県はホームページで、(1)通学路の50%に歩道がない(2)築後50年以上の老朽化した橋が約600ある(3)災害などによる通行止めが全国平均の約3倍発生している――ことなどを強調。
参考:道路特定財源の暫定税率期限切れに伴う影響について
 福井県もホームページで、(1)高規格幹線道路の整備により、救急医療の「空白地域」を縮小させることができる(2)豪雨や豪雪時にも安全な生活幹線道路の確保は不可欠――などをあげ、「安全・安心の確保のための道づくりがまだまだ必要です」と訴えています。
参考:福井県の道路特定財源の暫定税率廃止による影響
 慢性的な交通渋滞に悩む首都・東京では、3本の首都圏環状道路(中央環状、外環、圏央道)の全線開通や、都下各地域の幹線道路の整備などが大きな課題となっています。救急医療活動などの障害となっている「開かずの踏切」対策も緊急の課題です。都はホームページで「東京の道路整備は今が正念場」「渋滞解消や電線地中化などを進めるためには、暫定税率の維持が必要不可欠」と強調しています。
参考:東京の道路整備には道路特定財源が必要
地方6団体:民主党の無責任な 姿勢を厳しく批判
 全国知事会、全国市長会、全国町村会など地方6団体は1月21日、暫定税率廃止に反対する緊急共同声明を発表したのに続いて、同30日には、道路特定財源関連法案の早期成立に関する要請を発表するなど、暫定税率の維持を強く求めています。
 この中で地方6団体は、民主党が暫定税率の廃止を叫び、廃止後も道路整備は従来の水準を維持するとしていることについて、「(水準維持のための)具体的な方法や法改正も含めた実現のための道筋が明確に示されていない」と指摘し、民主党の無責任な姿勢を厳しく批判。
 さらに、万が一、暫定税率が廃止された場合には、「道路行政への影響のみならず、地方行財政運営そのものへの甚大な影響や国民生活の混乱について強い危機感をいだいている」と強調し、民主党に対して「こうした現実を真摯に見つめ、今国会における道路特定財源関連法案の早期成立に協力するよう強く求める」としています。