フィブリノゲン投与記録「確認」9000人、再調査で拡大
読売新聞(2008/2/15)
薬害C型肝炎問題で、舛添厚生労働相は15日、感染の原因となった血液製剤「フィブリノゲン」を投与された患者に関する記録が、現時点で確認できただけで約9000人分保存されていることを明らかにした。
最終的には1万人に達する見込み。被害者救済法に基づく給付金受給には投与の証明が必要だが、年月とともに記録が廃棄されるケースが多く、証明できるC型肝炎患者・感染者は1000人程度と推計されてきた。今回、投与記録が確認された人のうち感染者の数は不明だが、給付金対象者は推計人数を上回りそうだ。
厚労省が昨年11月に実施した医療機関に対する調査の中間まとめで判明した。厚労省は2004年、旧ミドリ十字(現田辺三菱製薬)の同製剤納入先約6700か所について、カルテなど投与に関する記録があるかどうか調べた上で医療機関名を公表したが、今回は、問題の高まりを受け、記録の有無を再調査した。
再調査結果によると、1994年以前のカルテや手術記録、分娩(ぶんべん)記録、処方せんなど何らかの記録が保存されていた医療機関は1622か所で、全体の25%。04年調査の際、記録があるとした医療機関は約470か所と全体の7%で、大幅に増えた形だ。
製剤を投与された個人を特定できる記録を保存していたのは644か所で、患者数は計8896人。うち全体の41%に当たる3632人は医療機関から本人に投与の事実が告知され、検査を受けるよう勧めていた。19%を占める1711人はすでに死亡していた。記録のあった患者で、投与年月がわかる患者数は8711人。最も多かったのは1987年で1914人だった。
同製剤は出産や手術時の止血剤として投与され、投与患者約28万人のうち約1万人がC型肝炎に感染したとされる。被害者の救済策として、国は先月、被害者救済法を施行し、患者・感染者に給付金を支給することにした。ただし、投与事実の証明があることが条件となるため、04年調査の7%という数字から推定し、給付金を受給できる人は「最大で1000人程度」とみられていた。国はこれを目安に、給付金のための費用を約200億円と見込んでいた。
しかし、予測より多くの記録が保存されていることがわかったことで、給付金対象者が増える可能性が高まった。薬害C型肝炎集団訴訟の全国弁護団副代表、山西美明弁護士は「04年の調査はずさんだったのに、これまで放置してきた国の責任は重い」と話している。
舛添厚労相は「きちんと議員立法で決めたことなので、カルテなどがあれば給付する。数がどう増えようときちんとやる」と述べた。
つくば市で「薬害肝炎訴訟を支援する会・茨城」が説明会
薬害C型肝炎被害者救済法が成立したことや、フィブリノゲン投与記録「確認」が新たに見つかったことなどを受け、2月17日、「薬害肝炎訴訟を支援する会・茨城」が主催する説明会が、つくばしないで開催されました。
血液製剤「フィブリノゲン」などの投与でC型肝炎ウイルスに感染した被害者や遺族を対象に給付金の支払いを決めた新たな法律が成立したために、弁護団は「対象になる人は、原告団に加わって」と呼びかけています。
原告になるには、投与をカルテなどで証明しなければならず、肝炎患者の参加者からは「出産した医療機関が廃院し、問い合わせようがない」「手術を受けたのが昔のことで、病院に記録がないと言われた」などと確認作業の難しさを訴える声も聞かれています。
弁護団は「カルテ以外にも手術や分娩(ぶんべん)の記録が残っている場合があり、医師の記憶に基づく投薬説明が証明になる可能性もある。心当たりのある人は粘り強く交渉してほしい」と説明しています。
「薬害肝炎訴訟を支援する会・茨城」03−5363−0138