2月20日、平成20年度の予算案を審議している衆院予算委員会の地方公聴会が水戸市内で行われ、井手よしひろ県議も傍聴しました。
 この地方公聴会は、道路特定財源の議論が大きな焦点となっているこの国会審議の中で、地方の意見を聞くべきだとの民主党など野党の強い要望で実施されたものです。
参考写真 陳述人として橋本昌県知事、連合茨城の児島強会長や日立市都市計画審議会の山本忠安会長(日立商工会議所会頭)、茨城大学の佐川泰弘教授の4人が意見を披瀝しました。陳述後には、自民、民主、公明、共産、国民新の各議員から、各々の陳述人に質問が寄せられました。
 橋本知事は、地方交付税や臨時財政対策債が5年間で計約4000億円減らされた結果、県財政が危機的な状況に陥っていることが報告されました。「このままでは地方自治体はやっていけなくなる」とのことばが印象的でした。
 道路特定財源に関しては、県内の道路整備率は35.9%と全国最低で、暫定税率が廃止されれば建設費は488億円から127億円に、約4分の1に激減すると説明。橋本知事は暫定税率が撤廃された場合には、「道路整備にも最低レベルの出費は必要で、その分、医療や教育の分野にも当然影響がある」としました。さらに、橋本知事は道路特定財源の暫定税率について「1人当たりの自動車保有台数は地方の方が多く、一般財源化されれば、貧しい地方が豊かな東京のために税を使うことになる」として維持を主張しました。
参考写真 一方、連合の児島会長は道路特定財源や暫定税率の廃止・見直しを求め、「国民の期待は社会保障の充実や教育政策などに集中している。徴収側ではなく、納税側に立って議論していただきたい」と述べました。
 日立商議所の山本会頭は、「地域間格差是正のため道路整備は必要不可欠」と述べたうえで、著しい交通渋滞が続く日立地区の現状を訴えました。
道路はネットワークとしてつながることで、初めてその真価を発揮するもので、計画的な整備が必要であるとしました。また、道路特定税源は、単に道路整備だけではなく、高速道路の料金引き下げやスマートIC整備など、柔軟な活用が重要であると強調しました。
 茨大の佐川教授は「我慢を続けている国民にとって聖域が設けられることは納得できるものではない」とし、道路特定財源の一般財源化を求めました。
 道路以外の課題では山本会頭が、公明党が強く主張して法案が提出された「中小企業の事業承継税制」を高く評価し、関連法案の早期成立を求めました。
 4人の意見陳述の後、予算委の山本幸三氏(自民)、猪口邦子(自民)、笹木竜三氏(民主)、富田茂之氏(公明)、塩川鉄也氏(共産)、糸川正晃氏(国民新)の6氏が質問。
 公明党の富田委員は、茨城県には、救急車両が他の車とすれ違い出来ないような国道があることに触れ、「県内でも道路整備の格差が大きいのではないか」と指摘、道路ネットワークの形成が重要との考えを訴えました。これに対し、橋本昌茨城県知事は、「実際に県北と県南とでは道路整備の格差がある」と述べ、道路整備には暫定税率の維持が不可欠との見解を示しました。また、富田氏は、救急医療体制について、千葉県が2機目のドクターヘリを導入することを検討しているとし、「(茨城県も)千葉県ともよく連携していくべき」と提案しました。更に、昨年12月の県議会で、民主党を含む各党が合意し、道路特定財源の暫定税率の存続を求める意見書を採択したことに触れ、小島会長に、民主党の地元議員と国会議員との意見の統一がみられない事への見解を質しました。
 閉会後、団長の中山成彬氏(自民)は「(民主党の茨城県議が暫定税率維持を求める県議会意見書に名前を連ねるなど)民主党にねじれがあることが分かった。地方交付税については、地域間の水平調整ではない財源調整が求められているのかな」と話しました。(この部分は常陽新聞2008/2/21付け記事より引用)
 初の衆院予算特別委員会の地方公聴会を傍聴して印象に残ったことは、地方の現状について、野党国会議員があまりに不勉強であるということでした。民主党の笹木議員の「全国で無駄な道路はないと思うか」という質問は、地方公聴会で地方の代表に対して行う質問ではありません。具体的に、茨城県内の現状を調査し、「この道路にはこれだけの予算が使われているが、これだけの効果しかない、これは無駄遣いではないか」といったやり取りが本来求められるべきだと思います。知事に対して、「無駄な道路はないか」と質問して、「無駄な道路があります」と答える知事がどこにいるでしょうか?笹木議員の質問には、傍聴席から失笑が漏れ、役員が静粛を呼びかける一幕もありました。さらに、この笹木委員への他の陳述人の答弁は、「私は会津出身のなので(戊辰戦争の影響で)感ずるのかもしれませんが、山口県の道路にはムダがあるような気がします」(発言の主旨、正式な文言ではありません)と、まさに、井戸端会議のような内容。これが、予算委員委員会での質疑なのかと失望の声が聞かれました。
 また、国民新党の糸川議員の陳述人への質問は、「道路特定税源で老朽化した水道管の取り替えや耐震化を行ってはどうか」との質問。その質問の前提は、あたかも県が水道管の管理を行っていることを前提としているかのような質問でした。一般的に、県が直接、一般家庭や事業所への水道事業を行っている事例はあまりないはずです。陳述人も、正直言ってどう答えて良いのか分からず、公聴会全体の緊張の糸が切れた感じがしました。
(写真は陳述人として意見を述べる橋本昌県知事ら:写真は茨城県広報広聴課より提供いただきました)