参考写真 2月25日、茨城県と茨城県警本部は、暴力団員による生活保護費の不正受給を防ぐために、「暴力団員の生活保護からの排除にかかわる協定」を3月にも締結する方針を固めました。
 全国的に生活保護費の不正受給が問題化するなか、北海道滝川市では、元暴力団員の男らが2億円以上の生活保護費をだまし取ったとして逮捕される事件が起こりました。
 県や県警は、不正に受給した生活保護費が暴力団の資金源になっている可能性もあるとみて、連携を強化していきます。
 現状では、厚生労働省の通知により、暴力団構成員は、原則的に生活保護を受けられないことになっています。厚生労働省はこれまで、各福祉事務所に対し、暴力団員と疑われる者について警察からの情報提供を求めるよう指導してきました。
 協定では、情報の流れを一本化。各福祉事務所からの照会内容を県が集約、県警に公文書で申請するようシステム化します。こうすることによって、福祉の窓口では県警の回答文書をしめし、暴力団の申請時の圧力を封じることが出来ます。
 県内の暴力団は山口系、松葉会系など5団体、118組織、約1630人に上ります。県警へは昨年、県福祉事務所や各市町村から、生活保護に関する暴力団情報の問い合わせが31件あり、うち2人について生活保護申請を却下しています。
生活保護不正許すな 通院費詐取受け厚労省が実態調査
産経新聞(2008.2.22)
 北海道滝川市の生活保護世帯の夫婦が、通院時の介護タクシー代など2億円を超える通院費をだまし取ったとされる事件を受けて、厚生労働省は全国で同様のケースがないか実態調査に乗り出した。滝川市の事件のほかにも大阪府岸和田市で飛行機を使った支給例が発覚するなど、「常識的には考えられず、制度の信頼を揺るがす事態」(厚労省)となっている。生活保護制度を悪用したケースが目立っていることで、通院費などの支給の妥当性の是非をめぐる議論も起きている。
 厚労省は実態調査のため、全国の自治体に対し、継続的に通院費を支給している対象者のうち、直近1カ月の支給額が3万円を超えるケースについて、通院日数や1回あたりの最高支給額、交通手段などについて報告を求めた。3月をめどに取りまとめ、不適切な事例には是正を求める。
 生活保護の不正受給は増加傾向にあり、昨年度は約90億円と過去最悪になった。所得格差などが背景になって生活保護世帯の件数そのものが昨年度、過去最高の107万世帯(月平均)に達していることが、不正受給件数を押し上げる要因ともなっている。
 不正の8割近くが、働いて得た収入を申告しなかったり、過少申告していたケース。このうち全国で13件が刑事告発されている。
 また、通院費の実態調査とは別に厚労省では、滝川市の事件に関して、市の対応に不備があった支払いや、明らかな不正申請による支払い分について、補助金適正化法に基づいて国負担分の返還を市に求める方針だ。すでに市に対しては、支給実態の精査を求めており、支給を決めた判断に関する責任の有無についても検証していく。
 市の調査によれば、夫婦には総額2億5500万円の生活保護費が支払われた。生活保護費用は4分の3を国が負担しており、国の負担分は単純計算で1億9000万円。ただ、厚労省では、本来夫婦に正当に払われるべき保護費も含まれているとみており、それらを差し引くなどして返還額を詰めていく。
 通院費の支給にあたっては、主治医の意見や、病院への通院の記録、実際にかかった費用の領収書などが必要だが、今回の滝川市の事件ではこれらの書類はすべて整っており、市側も支払いを拒否できなかったという。
 さらに、遠距離通院が長期化した場合には、入院の必要性や、病院所在地への転居などが検討されるが、市では「主治医が入院の必要はないと判断した上に、夫婦ともに転居には消極的だった」としている。
 厚労省では「夫婦につけ込まれた部分がなかったといえるだろうか。悪質な請求には毅然(きぜん)と対応する一方で、本当に保護が必要な人には支援が行き渡るような運用をしていく必要がある」と話している。