平成19年度の包括外部監査の結果が、2月27日、県議会に報告されました。包括外部監査とは、1999年度から都道府県などに導入が義務付けられた制度で、外部の公認会計士や税理士が県行政について総合的に監査するシステムです。19年度の監査人は、公認会計士の今野利明氏でした。
 今年度対象となった部門は、県農業総合センター農業研究所、林業技術センター、霞ケ浦環境科学センター、環境放射線監視センター、工業技術センター、衛生研究所など17の県の試験研究機関です。
参考写真 研究機関に共通する監査意見として、全体経費の約7割を占める研究員の人件費が試験研究予算に含まれておらず、県(本庁)の人件費として別に処理されているため、研究達成のための全体コストが算定されていない、などと指摘しました。また、研究成果が県民にどう還元されたか見えにくく、具体的な数値目標を設定し、達成度を公開するよう検討すべきである。研究テーマに基づき、備品等を購入した後に主任研究員が移動してしまうケースが見られる。研究計画(通常3年)と人事異動はリンクされておらず、研究員のあり方を人材育成の立場から再考すべきである、などと意見を述べています。
 個別の監査結果では、水産試験場では、調査船によるサンマ漁場調査を行い、獲ったサンマを市場で販売していますが、収支は1100万円の赤字となっており、費用対効果で疑問とされました。また、茨城県全体のサンマの漁獲高(金額)に占める、調査船の運航コストは、平成17年度11.3%にも達しており、なぜサンマだけこのような調査が必要なのか疑問であると述べています。
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 このほか、農業総合センターでは約4700万円もする質量分析機がしばらく使われておらず、再整備には100万円かかる事例。畜産センターは、総合気象観測装置(400万円)が1年目で故障し、修理に費用がかかるために、その後は民間気象会社からデータを入手している事例。養豚研究所は精密な作業を行うマイクロマニピュレーター(約200万円)を持っているが、使える人がいないため使用していない事例など、問題があるとしています。
包括外部監査結果を報告:研究コスト算定が必要
常陽新聞(2008/2/29付)
 地方自治法に基づく県包括外部監査結果がまとまり、2月27日開会の第1回定例県議会に報告された。初めて県内の17の試験研究所を対象に実施。共通する課題として、試験研究の成果とそれを生み出すコストの比較による研究の効率性が分かりづらい点を指摘。水産試験場のサンマ漁獲の必要性や窯業指導所の生産物の販売について疑問符を付けた。
 県は農業総合センター農業研究所や畜産センター、林業技術センターなど17の試験研究所に年間約50億円を支出し、試験研究所は土地・建物など不動産を365億円、備品113億円を保有。財務事務の執行と経営管理について合規制を見るとともに、経済性、効率性、有効性の観点から外部監査の必要性を認めた。
 水産試験場ではサンマの漁場観測で調査船を出し、漁獲したサンマを市場を通して売却。レーダーなどの調査で分かる内容と考えられるとともに、売却して漁業手当を出していることから、費用対効果、行政目的からも研究課題としての妥当性に疑問が残ると指摘した。
 窯業指導所では、湯のみや中皿などを販売目的に生産されているフシがあると指摘。生産・販売は本来の研究業務ではなく、民業圧迫になりかねないとし研究業務に専念すべきと指摘している。
 研究課題の評価では、霞ケ浦環境科学センターと衛生研究所の内部評価で個別評価が適切に総合評価に結びついてない実態や繊維工業指導所の指導助言を行っている外部の研究者が外部評価委員として参加していることが指摘された。
 共通する点では、試験研究費の約70%を占める人件費を各試験研究課題に配分した上で研究にかかわる全体コストの算定の必要性を指摘。研究員の試験研究課題別、作業内容別時間の把握ができる体制が必要としている。また、研究成果をホームページや論文による公表だけでなく、県民に還元する立場から具体的な形で見えるよう数値目榎などを設定して達成度合いを示すべきとしている。
 このほか、備品の取得に際してのトータルコストの検討やリースへの振り替え、現品確認の必要性。毒物、劇薬などの管理規則の制定や特殊勤務手当の再検討、赴任旅費や出張旅費の見直し、時間外勤務の削減などの必要性を指摘している。