参考写真 現在開会されている茨城県議会平成20年第1回定例議会では、消防の広域化の議論が、大きく取り上げられています。
 災害の大規模化や住民ニーズの多様化など、消防を取り巻く環境は、大きく変化しています。たとえば、高層建築物の増加などで、大型の梯子車の配備などが必要になりました。救急件数の増加により、救急車の配備台数の増加も必要となり、その効率的な運用も課題となっています。一方、消防の担い手である消防団の確保は年々困難になっており、消防マンパワーの不足が深刻化しています。
 茨城県内には、全体で26の消防本部が存在します。内訳は、市町村単独の消防本部が19(水戸市、日立市、つくば市、土浦市消防本部など)、一部事務組合による組合消防本部が7つ(茨城西南地方広域市町村圏事務組合など)となっています。
 消防本部の規模は、様々な視点を考慮して30万人程度の管轄人口が望ましいとされていますが、茨城県の場合、26消防本部の内14本部が所管人口が、10万人以下となっています。
 国においては、市町村消防の広域化を推進するため、平成18年6月14日に消防組織法の改正が行われ、都道府県は、消防庁長官の定める基本指針に基づき、広域化の対象となる市町村の組合せを含む「消防広域化推進計画」を策定することが義務づけられました。
 さらに、18年7月12日に消防庁長官から「市町村の消防の広域化に関する基本指針」が示され、都道府県は遅くとも平成19年度中に推進計画を策定すること、対象となった市町村は広域化に向けた取組を行い、平成24年度末を目途に広域化を実現することとされました。
3月までに「消防広域化推進計画」を策定、25年春には5広域消防本部体制に
参考写真 このような経緯を経て、茨城県では県内の消防本部を5つに再編・広域化することを内容とした「茨城県消防広域化推進計画」を、3月末までにとりまとめます。5つの広域消防は、県北・県央・県南・県西・鹿行の地域ごとに設置される見込みです。
 4月以降、各広域消防の単位で「広域消防運営計画」を策定し、平成25年春には、消防本部の広域化を実現することになります。
 ただし、この消防の広域化も様々な困難な課題を抱えています。広域消防の消防本部をどこに設置するか、市町村の費用負担の割合をどのように算出するか、既存の消防施設(市町村消防本部庁舎)などの費用負担をどうするか、医療・福祉圏との整合性をどのようにとるか、など、どれ一つをとっても難しい問題です。長い間、市町村を単位に地域に密着した運営が行われている自治体消防。その広域化は総論でも賛成でも、各論では各消防本部ごとの意見の乖離は大きいと思われます。真に、県民の安心と安全を守る消防体制整備を目指した、建設的な議論を期待します。

(2008/4/26更新)
 4月25日、茨城県の消防広域化計画が公表され、5つの風呂億語との具体的な組み合わせが明示されました。
参考:茨城県が消防広域化推進計画を公表
「広域化」を着実に推進、国民の安心支える消防体制に
公明新聞(2008年3月6日)
自治体消防制度60年
 消防組織法が施行され、市町村消防を原則とするわが国の自治体消防制度が発足してから、明日7日で60周年を迎える。国民の安心・安全を確保する消防行政は、国の基本的な責務であり、安定した国民生活の基盤となる。この60年の間に災害の多様化・大規模化が進むなど、消防行政を取り巻く環境は大きく変化しているが、大規模地震・大規模災害に対する備えや消防防災・危機管理体制の強化、地域防災力の強化、救急救命の充実・高度化など、環境の変化に的確に対応した消防防災対策を今後とも積極的に展開してほしい。
 消防行政の中で、その根幹を担う市町村消防体制の強化策として、現在、進められているのが「消防の広域化」である。市町村合併の進展により、消防本部はやや減少したものの、管轄地域の人口が10万人未満=60%、10万〜20万人=22%と、依然として小規模な消防本部が多数を占めている。
 小規模消防本部は出動体制や消防車両、専門要員の確保などに限界があり、大規模な災害などに対応し切れないなど、現在の消防ニーズに十分にこたえられない状況がある。そこで市町村の消防の広域化を推進するために、2006年の通常国会で消防組織法を改正。同改正法に基づき、12年度末の広域化実現をめざして都道府県による「消防広域化推進計画」の策定作業が行われている。
 広域化の実現により期待できるメリットは数多く挙げられる。まず、消防車などの初動出動台数の充実、応援体制の強化、現場到着時間の短縮などが図られるほか、大規模災害、特殊災害への対応も可能となり、住民サービスの向上につながる。また現場要員の増強も容易となり、救急救命士、火災原因調査専従員などの育成も進む。さらに、これまでは個別に小規模で必要最小限の設備しか整えられなかったが、特殊車両の増強、高機能な設備の一元的整備などができるようになる。
 実際、2000年に四つの消防本部を統合し、佐賀広域消防局を設置した佐賀地域では、消防本部の事務集約により、職員を効率的に配置できるようになり、警防要員の増員が可能に。長期の研修期間を要する救急救命士も多数養成でき、消防学校、消防大学の長期入校も容易になったという。
 また、大規模火災、多数負傷者事故への対応力も強化され、2004年7月に佐賀市の中心部で火災が発生した際には、消防車19台、消防隊員98人が現場に急行。同年10月の台風23号の通過時には、早朝から夕方にかけて76件の救急・救助活動を行っている。
 「消防広域化推進計画」は、47都道府県の大半がこの3月中に策定することになっている。策定された推進計画に基づき、来年度から対象市町村による広域化の検討が具体的に開始されることになる。12年度末(推進計画策定後5年度以内)の実現に向けて、都道府県、市町村が引き続き積極的に取り組むことで、住民のニーズに十分こたえる、機能的な消防の広域化が実現することを期待したい。
取り組む課題多い
 広域化以外にも、緊急消防援助隊の充実強化、被災地情報の収集能力の向上、テロ災害対応装備の整備、地域防災の要である消防団員の充実強化など取り組むべき課題は数多い。公明党は、“一人の命を守る党”として、消防防災対策の一層の充実に全力で取り組んでいく決意だ。