参考写真 全国で初めて議員報酬の「日当制」を導入した福島県の矢祭町では、3月23日、町議選が行われます。地元紙などの報道によると、現在、立候補を表明しているのは定数いっぱいの10人です。矢祭町の議員は、本会議や町の公式行事に参加した場合に、1日3万円の町議報酬が支払われます。昨年12月の町議会で議員提案され、賛成7、反対2で可決されました。これにより新年度から、議員1人当たりの年間の報酬は約330万円から約90万円に下がります。この日当制の導入は、報酬目当てで議員になる人を減らし、意欲的な主婦やサラリーマンが立候補しやすくなることも期待しているといわれます。そのため、改選後の議会では、夜間や休日の開催を検討する予定です。
参考写真 現在立候補を表明している現職10人は、全員が農業や建設業などの本職を持っています。議員報酬で生活費を賄っているわけではなく、本業の時間を割いて議会活動にあてている人たちです。日当制でも、生活は成り立ちません。本業を持たない人は選挙に出馬することも出来なくなるでしょうし、議員活動はボランティア感覚で片手間になってしまわないでしょうか。また、実際には最も多いサラリーマン層を代弁する人が立候補出来なくなるという弊害もあります。会社に勤務したまま、議員職を両立できる環境が日本にはまだありません。特に、政党を名乗って政治家を志す人は、まず100%会社勤務のままでは議員活動は出来ないでしょう。
 日当制は、だれでもが政治に参加できるという民主主義の大原則にふれることにはならないでしょうか。
参考:矢祭町議会議員の報酬及び費用弁償に関する条例

(2008/3/18更新)
 3月18日、矢祭町議選が告示され、定数を1オーバーする11名が立候補しました。井手よしひろ県議は、この日矢祭町を訪れ、役場や「もったいない図書館」等を視察。選挙戦の模様も直接目の当たりにしてきました。2時間あまりの視察でしたが、遊説カーや街頭演説の現場には一度も出会いませんでした。矢祭町では、静かな選挙戦が繰り広げられていました。
北海道栗山町議会の挑戦−−プロの町議を目指す
 矢祭町と反対に、議員のプロ化を目指す自治体もあります。2年前に全国初の議会基本条例を制定しました。議員は町政への住民参加を促そうと、町の内外かまわずどこへでも出かけ、報告会や意見交換会を開いています。
 活動は議会など公式日程だけで年間100日近くあり、議員からは「正直言って皆、本業どころじゃない」との声も上がっていると言うことです。
 月額報酬は19万6000円、政務調査費は年間9万6000円しかありませんが、町民からは「政務調査費をもっと高くしたら」という声が出るほどだそうです。
 また、三重県議会なども議会の通年開催に取り組み、他の本業を持った議員ではつとまらないようなプロの議員を求めています。
 地方議員に求められる議員の資質。それは、住民の声を代弁し、行政に新たな視点を提示できる専門職であるべきだと考えます。
参考:北海道栗山町議会
【特報 追う】人はなぜ議員を目指すのか…「日当制」で候補者減少? 福島・矢祭町
産経新聞(2008/3/7)
 昨年12月、全国で初めて町議報酬の固定制を改め、「日当制」を導入した福島県矢祭町。しかし今月23日に投開票される矢祭町議選は、初の無投票となる可能性が出てきた。町議会事務局は「日当制導入が一因かもしれない」という。「志がある人に立候補を」との理念で日当制を導入した町議会だが、立候補者の減少という現実をどのように受け止めているのだろうか−。
 2月26日に町役場で開かれた町議選(定数10)の立候補予定者説明会。日当制実施を新年度に控えた町議選として注目が集まったが、出席したのは現職7、元職1、新人1の9陣営。12陣営が参加した前回に比べ、3陣営少なかった。
 立候補予定者が減ったのは、3人の現職議員が今期限りでの引退を表明したため。引退する近藤誠副議長と菊池友幸議員は引退の理由について「日当制導入は無関係。後進に道を譲るため」と話す。両議員は昨年12月町議会で「日当制導入条例案」に賛成した。また片野隆議長も今期で引退する意向だ。
 4日に左官業の男性が出馬を表明し、立候補予定者数は定数と同じ10人になった。しかし、他に立候補届け出書を町選管に取りに来た人はおらず、立候補の準備をしている人の話もない。
 町議会の鈴木正良事務局長は「次の町議選が無投票になる可能性はかなり高いが、民意反映のためにも選挙はあったほうがいい」と気をもむ。
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 こうした事態について、日当制導入に反対した圷(あくつ)豊明議員は「日当制にすれば立候補者が減るのは当然だ」と手厳しい。
 圷議員は「条例案は昨年12月20日に提案され、28日に採決された。結論ありきだった」と批判し、十分な審議を尽くさず日当制を導入したのは誤りだったと語気を強める。
 「収入に関係なく立候補できるのが民主主義の原点。だが日当制にして報酬が下がれば、立候補できない人が出てくる。改革とは呼べない」と主張する。
 実際、同町の現職はすべて農業などとの“兼業”。次の町議選に立候補を予定する新人2人も同様だ。
 こうした指摘に片野議長は「報酬が下がれば候補者は金のかからない選挙を心がけるだろう。また本当に志のある人ならば、報酬とは無関係に立候補するはずだ」と、日当制の理念を強調した。
 ただ「まだ戸惑いがあるのは間違いないだろう。議会のあり方を日当制に合わせたものにする必要がある」と課題意識を持っている。「たとえば、平日の昼に議会を開いている現状では、サラリーマンや家庭を持つ女性が参加しにくい。議会を夜間や休日に開くことも考えるべきだ」という。
 しかし、UターンやIターンで矢祭町に移り住み町議に専念したいと考える人には、低報酬が妨げになる恐れもある。記者がそう問うと、片野議長は「町で正業を見つけてもらうしかない」と答えた。
 「まだわれわれも、今後どうなっていくかは手探り状態。方法論は今後の議会が見いだしていくべきもの。その意味で、議員報酬日当制の意義が判明するのは、次回よりも、次々回の町議選になるだろう」と片野議長は展望を語った。
 立候補者が減って議会が立ちゆかなくのか、それともふるさとを思う志に満ちた議会となるのか。矢祭町の決断がどのような果実を実らせるのか、注目していたい。