4月24日、県議会文教治安委員会の閉会中審議が行われ、小風明県警本部長より、3月に土浦市内で発生した連続殺傷事件について検討プロジェクトチームの調査結果の説明がありました。
井手よしひろ県議は、小風本部長に対して捜査本部内に二次的な事件の発生を抑止する体制があったのか、プロファイリングの専門家は配備されていたのか、「見当り捜査」など基本的な捜査能カの低下は見られないのか、など3点を質問しました。
小風本部長は、犯人逮捕と二次犯罪を防ぐことは車の両輪との認識を持ち、地域への情報提供などを積極的に行っていきたいと答えました。また、プロファイリングの専門家については、茨城県警本部には配備されていない現状を踏まえ、今後、導入を検討するとしました。
今回の土浦の事件では、新らたなパターン犯罪に対して、県警本部の対応が非常に遅れているという感を否めません。前例踏襲主義を廃し、新らたな捜査体制の整備が強く求められています。
井手よしひろ県議は、小風本部長に対して捜査本部内に二次的な事件の発生を抑止する体制があったのか、プロファイリングの専門家は配備されていたのか、「見当り捜査」など基本的な捜査能カの低下は見られないのか、など3点を質問しました。
小風本部長は、犯人逮捕と二次犯罪を防ぐことは車の両輪との認識を持ち、地域への情報提供などを積極的に行っていきたいと答えました。また、プロファイリングの専門家については、茨城県警本部には配備されていない現状を踏まえ、今後、導入を検討するとしました。
今回の土浦の事件では、新らたなパターン犯罪に対して、県警本部の対応が非常に遅れているという感を否めません。前例踏襲主義を廃し、新らたな捜査体制の整備が強く求められています。
捜査に厳しい意見続出 連続殺傷検証 県議会に報告
読売新聞(2008/4/25)
検証結果を報告する小風本部長 土浦市の連続殺傷事件を巡る捜査の反省点を公表した県警は、24日に開かれた県議会文教治安委員会に検証結果を報告した。委員からは「無差別殺傷を想定していなかったのか」「二次犯罪を防げなかったのは、検挙を優先しすぎたからではないか」など厳しい意見が相次いだ。
委員会には県警から約20人の幹部が出席。委員の約10人の県議からは、特に情報発信のあり方について質問や意見が集中し、小風明・県警本部長らが「捜査本部に(広報担当部署は)システム的にない。犯罪捜査と犯罪予防の情報発信は両輪であると徹底したい」「情報発信の手段や対象が限定的だったのは反省しなければならない。より直接的に伝わる工夫をしていきたい」などと答えた。
「無差別殺傷を想定していなかったのか」という問いには「視野には入れていたが、大勢の人がいる場所より、目立たない場所で犯行の可能性もあると見ていた」と回答。「プロファイリング(犯罪情報分析)のような捜査手法を取り入れても良かったのでは」という意見には「結果が出るまでにかなり時間がかかる実態はあるが、心理学的な知識を持った者の捜査への活用を視野に入れたい」と答えた。
土浦市内の連続殺傷事件の捜査活動の検証結果
1 捜査等の経過
第2 検証結果
1 情報発信について
○被疑者の自室を確認した段階で、二次犯罪の危険性等も考慮し、土浦市教育委員会への注意喚起の依頼及び「ひばりくん防犯メール」の発信を行った。また、公開手配後には、防犯ボランティア等への注意喚起及び荒川沖地区周辺のインターネットカフェ等への手配書配布を行った。
◎しかしながら、発信手段及び対象が限定的であり、少なくとも被疑者が立ち回る可能性を予測したJR荒川沖駅へは、事実関係の通報や協力依頼、注意喚起を行うべきであった。また、公開捜査に踏み切った段階や荒川沖地区周辺への立ち回り事実を認知した段階で、近隣住民や通行人へ立て看板、チラシ等により注意喚起や情報提供を依頼すべきであった。さらに、報道機関への広報に際しても、二次被害防止を注意喚起する表現を検討すべきであった。
2 3月23日の捜査体制について
(1)全体の捜査体制について
○21日の被疑者から母親への「犠牲者が増える予定だよ」旨のメール内容を周知した上での二次犯罪防止を視野に入れた駅の固定警戒等を指示した刑事部長通達や22日の被疑者の動向を踏まえ、23日は、交替要員も含め約240名の捜査員を確保し、第2事件発生時点では約170名の捜査員が18駅での見当たり捜査、電車への警乗による被疑者検索等を実施した。
(2)荒川沖地区周辺における捜査体制について
〇第1事件被害者の葬儀場、被疑者宅内外及びJR荒川沖駅を含む荒川沖地区周辺を最重点箇所と認識し、本部捜査第一課特命斑、機動捜査隊等を流動警戒班として投入し、葬儀場での不測の事態の絶無を期すとともに、被疑者を発見した場合の機動力の活用を図った。また、JR荒川沖駅には、前日と比べて増員した8名を配置した。
この結果、第2事件発生時点では、荒川沖地区周辺全体で警察車両14台、捜査員40名による被疑者の発見捕捉体制を整備した。
(3)JR荒川沖駅における捜査体制について
○捜査本部はJR荒川沖駅捜査班に、改札口外側付近、改札口内ホーム等、駅東口、駅西口各2名の構成での見当たり捜査を指示した。
◎しかしながら、被疑者がJR荒川沖駅から外に出る場合には必ず改札口を通過することや前日の動向を踏まえ、改札口付近に、より集中的に固定配置して見当たり捜査に専従させるべきであった。また、捜査員の配置後には、捜査本部幹部が同駅に赴き、配置状況の適否を確認し調整する予定であったが、その途中に第2事件が発生したところであり、捜査員の配置前に捜査本部幹部が現場確認し、班員への具体的な任務付与ときめ細かな指示をすべきであった。
3 制服警察官の配置について
○駅での凶悪事件の発生を警戒するとの視点よりも、被疑者を発見した際には追尾をし、捜査本部や機動捜査隊等と連携の上、人通りが少なくなった時期・場所で捕捉検挙するとの視点を優先し、JR荒川沖駅捜査班については、秘匿性を重視した私服員のみを配置した。
◎しかしながら、本件のように二次犯罪が想定される場合においては、あらゆる事態に対応することを第一義とし、制服警察官の存在がもたらす注意喚起効果、犯行抑止効果及び制服警察官を目にして不審行動を取る者の把握等捜査上の効果等を勘案し、被疑者の発見検挙を目的とする捜査員とは別に、当該活動を阻害しないような場所を選定しての制服警察官の配置も検討すべきであった。
4 見当たり捜査について
○捜査本部は、3月23日の配置時点での最新の顔写真を使用した手配書を捜査員に配布し、丸刈りになる可能性や眼鏡着用などの変装も示唆した。これを受けて、一部の捜査員は、配布された手配書を基に変装を想定した自作の手配書を複数枚作成していた。また、3月22日には、被疑者からの110番の後に駅事務所に捜査員を派遣し、暫定的に駅事務所内で防犯ビデオを再生確認したが、画像不鮮明等により、同日中にはビデオに写された被疑者を特定できず、詳細な分析をするために同ビデオテープを押収したものの、第2事件の発生までには分析ができなかった。
◎しかしながら、手配書については、変装を想定した各種パターンを含む手配書の作成配布を組織的に行うべきであった。また、ビデオテープについては、事後に詳細な分析をしたところ、第2事件敢行時と同様の人相着衣の被疑者を確認できたところであり、有効と目される捜査資料の収集は、迅速な入手と活用に努めるべきであった。
5 装備資機材の携帯について
○捜査本部は、各駅の捜査班に対し、主として被疑者の発見と当該情報を捜査本部に速報する役割を期待し、発見後の被疑者の動向を継続して逐次報告させる通信手段としては携帯電話が適切と判断した。他方、無線機携帯による秘匿性阻害の可能性も懸念し、無線機携帯の指示は行わなかった。
◎しかしながら、班員相互の即時一斉連絡手段としての無線機を、秘匿性に配意した方法で携帯させ、携帯電話と組み合わせることにより、あらゆる事態に迅速に対応できるようにすべきであった。また、機動捜査隊等とも直接情報共有ができる無線機の携帯も検討すべきであった。
なお、被疑者の銃器所持が予想される事案ではなかったこと、多数の通行者がいる駅構内でのけん銃の使用は極めて困難であったこと、機動捜査隊や自動車警ら隊等がけん銃を携帯していたことから、各駅の捜査班には、けん銃携帯の指示は行わなかったが、この判断に問題はなかったと考える。
3月19日 (水) | 午前9時15分ころ | 土浦市中村南地内における殺人事件(第1事件)発生 |
午前10時35分ころ | 土浦市内のタクシー、バス業者への協力依頼土浦市教育委員会への注意喚起依頼 | |
午前11時25分ころ | 土浦市教育委員会への注意喚起依頼 | |
午後1時33分 | 「ひばりくん防犯メール」による注意喚起 | |
午後5時 | 捜査本部設置 | |
3月21日 (金) | 午前11時41分 | 被疑者の携帯電話から母親の携帯電話に電子メール着信 |
午後4時30分ころ | 公開捜査に使用した被疑者の顔写真入手 | |
午後6時50分ころ | 公開捜査開始 | |
午後7時15分ころ | 防犯ボランティア代表者への注意喚起等 | |
3月22日 (土) | 午後0時42分 | 被疑者からの110番通報(JR荒川沖駅北東側付近) |
午後1時38分 | 被疑者からの110番通報(JR取手駅付近) | |
3月23日 (日) | 午前11時5分ころ | 土浦市荒川沖東地内における殺人及び殺人未遂事件(第2事件)発生 |
午前11時16分 | 被疑者逮捕 |
第2 検証結果
1 情報発信について
○被疑者の自室を確認した段階で、二次犯罪の危険性等も考慮し、土浦市教育委員会への注意喚起の依頼及び「ひばりくん防犯メール」の発信を行った。また、公開手配後には、防犯ボランティア等への注意喚起及び荒川沖地区周辺のインターネットカフェ等への手配書配布を行った。
◎しかしながら、発信手段及び対象が限定的であり、少なくとも被疑者が立ち回る可能性を予測したJR荒川沖駅へは、事実関係の通報や協力依頼、注意喚起を行うべきであった。また、公開捜査に踏み切った段階や荒川沖地区周辺への立ち回り事実を認知した段階で、近隣住民や通行人へ立て看板、チラシ等により注意喚起や情報提供を依頼すべきであった。さらに、報道機関への広報に際しても、二次被害防止を注意喚起する表現を検討すべきであった。
2 3月23日の捜査体制について
(1)全体の捜査体制について
○21日の被疑者から母親への「犠牲者が増える予定だよ」旨のメール内容を周知した上での二次犯罪防止を視野に入れた駅の固定警戒等を指示した刑事部長通達や22日の被疑者の動向を踏まえ、23日は、交替要員も含め約240名の捜査員を確保し、第2事件発生時点では約170名の捜査員が18駅での見当たり捜査、電車への警乗による被疑者検索等を実施した。
(2)荒川沖地区周辺における捜査体制について
〇第1事件被害者の葬儀場、被疑者宅内外及びJR荒川沖駅を含む荒川沖地区周辺を最重点箇所と認識し、本部捜査第一課特命斑、機動捜査隊等を流動警戒班として投入し、葬儀場での不測の事態の絶無を期すとともに、被疑者を発見した場合の機動力の活用を図った。また、JR荒川沖駅には、前日と比べて増員した8名を配置した。
この結果、第2事件発生時点では、荒川沖地区周辺全体で警察車両14台、捜査員40名による被疑者の発見捕捉体制を整備した。
(3)JR荒川沖駅における捜査体制について
○捜査本部はJR荒川沖駅捜査班に、改札口外側付近、改札口内ホーム等、駅東口、駅西口各2名の構成での見当たり捜査を指示した。
◎しかしながら、被疑者がJR荒川沖駅から外に出る場合には必ず改札口を通過することや前日の動向を踏まえ、改札口付近に、より集中的に固定配置して見当たり捜査に専従させるべきであった。また、捜査員の配置後には、捜査本部幹部が同駅に赴き、配置状況の適否を確認し調整する予定であったが、その途中に第2事件が発生したところであり、捜査員の配置前に捜査本部幹部が現場確認し、班員への具体的な任務付与ときめ細かな指示をすべきであった。
3 制服警察官の配置について
○駅での凶悪事件の発生を警戒するとの視点よりも、被疑者を発見した際には追尾をし、捜査本部や機動捜査隊等と連携の上、人通りが少なくなった時期・場所で捕捉検挙するとの視点を優先し、JR荒川沖駅捜査班については、秘匿性を重視した私服員のみを配置した。
◎しかしながら、本件のように二次犯罪が想定される場合においては、あらゆる事態に対応することを第一義とし、制服警察官の存在がもたらす注意喚起効果、犯行抑止効果及び制服警察官を目にして不審行動を取る者の把握等捜査上の効果等を勘案し、被疑者の発見検挙を目的とする捜査員とは別に、当該活動を阻害しないような場所を選定しての制服警察官の配置も検討すべきであった。
4 見当たり捜査について
○捜査本部は、3月23日の配置時点での最新の顔写真を使用した手配書を捜査員に配布し、丸刈りになる可能性や眼鏡着用などの変装も示唆した。これを受けて、一部の捜査員は、配布された手配書を基に変装を想定した自作の手配書を複数枚作成していた。また、3月22日には、被疑者からの110番の後に駅事務所に捜査員を派遣し、暫定的に駅事務所内で防犯ビデオを再生確認したが、画像不鮮明等により、同日中にはビデオに写された被疑者を特定できず、詳細な分析をするために同ビデオテープを押収したものの、第2事件の発生までには分析ができなかった。
◎しかしながら、手配書については、変装を想定した各種パターンを含む手配書の作成配布を組織的に行うべきであった。また、ビデオテープについては、事後に詳細な分析をしたところ、第2事件敢行時と同様の人相着衣の被疑者を確認できたところであり、有効と目される捜査資料の収集は、迅速な入手と活用に努めるべきであった。
5 装備資機材の携帯について
○捜査本部は、各駅の捜査班に対し、主として被疑者の発見と当該情報を捜査本部に速報する役割を期待し、発見後の被疑者の動向を継続して逐次報告させる通信手段としては携帯電話が適切と判断した。他方、無線機携帯による秘匿性阻害の可能性も懸念し、無線機携帯の指示は行わなかった。
◎しかしながら、班員相互の即時一斉連絡手段としての無線機を、秘匿性に配意した方法で携帯させ、携帯電話と組み合わせることにより、あらゆる事態に迅速に対応できるようにすべきであった。また、機動捜査隊等とも直接情報共有ができる無線機の携帯も検討すべきであった。
なお、被疑者の銃器所持が予想される事案ではなかったこと、多数の通行者がいる駅構内でのけん銃の使用は極めて困難であったこと、機動捜査隊や自動車警ら隊等がけん銃を携帯していたことから、各駅の捜査班には、けん銃携帯の指示は行わなかったが、この判断に問題はなかったと考える。