道路問題で連合会長と県知事が「さや当て」
朝日新聞(2008/4/28)
 「無駄遣いの道路を一生懸命つくっている」とくぎを刺せば、「交通危険個所がまだ3千カ所もある」と切り返す――。27日に開かれた第79回県中央メーデーで、道路特定財源問題を巡り、連合茨城の会長と県知事が牽制(けん・せい)し合う一幕があった。ガソリン税など暫定税率を元に戻す衆議院の再議決を目前に控え、互いの本音が出た格好だ。
 メーデーは水戸市三の丸の旧県庁舎前の広場で開かれ、労働時間の短縮や賃上げを求める労働組合など55団体の約千人が参加した。
 主催者の連合茨城の児島強会長は冒頭のあいさつで道路特定財源問題に言及。「日本の道路整備率は世界一。無駄遣いの道路を一生懸命につくっている。余剰が出れば福祉や教育に回せばよい」と指摘。「廃止の一点張りでなく、経済活性化に向けた議論も分かりやすくして頂きたい」と民主党に注文した。
 会長の隣で苦笑していた橋本昌知事は続くあいさつで、「日本の道路はものすごくよいというお話だけは、そうではありません。県内には交通危険個所が3千カ所もある」とやんわりと反論した。暫定税率と特定財源が廃止された場合、「どう穴を埋めてくれるのか。皆様方には、組織内で認識を深めて頂ければありがたい」と訴えた。知事は道路特定財源の存続論者で、組合員を前に持論を展開した格好だ。

 メーデーでの連合茨城会長の「日本の道路整備率は世界一。無駄遣いの道路を一生懸命につくっている。余剰が出れば福祉や教育に回せばよい」との発言は、にわかに信じがたい。
 道路がどの程度整備されているかを示す物差しは「道路密度」といわれます。道路密度は、道路延長を国土面積で割った指標であり、同一条件の下で道路が量的に充足しているかどうかを判断するためにも利用されています。
参考写真 民主党は、国際道路温盟(IRF)の資料を引用し、日本の道路密度はイギリスやフランスの約2倍、アメリカの約3.5倍であるなどとして、日本の道路整備はかなり進んでいると主張しているのです。
 しかし、IRFの資料では、通路延長の対象が国によって異なることを見落としてはならなりません。
 例えば、民主党が比較の根拠とした約120万キロメートルという日本の道路延長は、市町村道も含まれています。一万、ドイツの道路延長には、市町村道は含まれていません。そもそもの基準が違うのですから、各国を単純比較することはできません。
 前提が導っデータを基にした民主党の主張には無理があり、日本の道路整備が十分などとは、極めて無責任な主張です。
 同じIRFの貿料から、各国の高速道路と主要道路を取り出し、その総延長から道路密度を算出すると、イギリスは0.21(キロ/平方キロ)、イタリアは0.17、ドイツは0.15であるのに対し、日本は0.16であり、決して日本が諸外国に比べて道路整備が進んでいるわけではないことが分かります。
 さらに、2級道路(日本では都道府県道)以上の道路延長で道路密度を比較し求めた場合でも、フランス0.73、イギリス0.68、イタリア0.57に対して、日本は0.50であり、道路密度が必ずしも高くないことは明らかです。
 「日本の道路整備率は世界一。無駄遣いの道路を一生懸命につくっている」この一節は、連合会長に取り消していただかなくてはいけません。この議論は、橋本知事に軍配が上がったような気がします。