国会混乱の責任は、野党民主党の審議拒否
 ガソリン税収を今後10年間、道路特定財源に充てる「道路整備費財源特例法改正案」は5月13日午後の衆院本会議で、憲法59条の規定に基づき、衆院の3分の2以上の賛成で再可決、成立しました。
 衆院本会議に先立ち、政府は13日午前の閣議で、この法律の規定にかかわらず道路特定財源制度を廃止して2009年度から一般財源化する基本方針を決定しました。今後、政府・与党は一般財源化後のガソリン税の使途などの調整を開始することになります。
 「道路整備費財源特例法改正案」は、ガソリンにかかる揮発油税などの国税を道路整備費に充てる特別措置の根拠となる法案です。4月30日に再議決で成立した税制改正法が歳入面の法律であったのに対し、歳出面にかかわる法案です。
 同改正案は、この特別措置を2008年度から10年間延長すること以外にも、ガソリンにかかる国税である揮発油税の税収の4分の1を都道府県や市町村の予算に回し、地域の課題に応じた道路整備に使う「地方道路整備臨時交付金」(1985年度から措置。2008年度予算6825億円)の根拠法にもなっています。
 地方自治体は、既に道路特定財源からの交付金や補助金などを前提に予算化しているため、法案が成立しないと予算執行上、大きな影響が出ます。
 さらに、過去の道路整備に伴う借金の返済や破損した道路の修繕経費などは、歳入が減っても支払わなければなりません。そのための予算を他の分野から流用すると、例えば福祉や医療、教育経費に影響が出ます。事業凍結が長引くと、中小企業の多い地域の雇用や経済にも影響します。
 また、法案には、(1)国が直接全国の道路を造る直轄事業の地方負担金(2)自治体の道路整備への国の補助事業に必要な地方負担分について無利子で貸し付けを行う地方道路整備臨時貸付金(3)高速道路料金引き下げやスマートインターチェンジなど利用者の便益を図るため、日本高速道路保有・債務返済機構の債務の一部を国が承継すること――なども盛り込まれています。
 地方財政や地方経済、国民生活に関わる事柄が含まれていることから、一日も早い成立が望まれていました。
 法案は3月13日、衆院を通過し参院に送付されました。ところが法案が参院の委員会に付託されたのは、1カ月以上たった4月16日。その後も、参院で主導権を握る民主党による審議引き延ばしもあり、たった6時間余り審議しただけで、委員会、本会議も民主党など野党の反対多数で否決されました。このため、与党は憲法59条の規定に基づき、13日の衆院本会議で3分の2以上の多数により再可決されたものです。
 また、道路特定財源を08年度から10年間維持する同法案が、政府・与党の09年度からの一般財源化方針と矛盾するとの指摘があるため、政府は同法案の再可決に先立ち、「道路特定財源制度の規定は09年度から適用されない」などと明記した基本方針を閣議決定しました。
橋本県知事:やっと交付金事業が執行可能になりほっとしている
 この改正案の成立を受けて、茨城県の橋本昌県知事は、「今回の再可決により、やっと今年度の交付金事業が執行可能になりほっとしている。今後、一般財源化を進めるにあたっては、必要な道路を整備するための財源を確保するとともに、地方への手厚い措置を期待したい。また、地方公共団体における4月分の減収については、国の責任において全額補てんされるよう強く望んでいる」とのコメントを発表しました。