2008年に入って、食糧の値上がりが目立ち始めています。原材料の小麦などの値上がりによる影響が出ているものですが、実は価格上昇は日本だけではありません。とくに穀物類は輸出規制を始める国も出始めており、これまでの「多少高くてもお金を出せば何とかなる時代」は終わりつつあります。食糧自給率39%のわが国にとって厳しい状況。果たして食糧危機はどのぐらい進んでいるのでしょう。
世界各国で食糧が高騰
世界銀行によると、コメ、小麦、トウモロコシなどの価格は、2005年に比べて平均で83%上昇しています。その原因は、新興国の需要増大、天候不順による穀物の生産減少、バイオ燃料への転用などさまざまです。
穀物の生産・輸出国でも、自国の食糧を確保するために輸出規制を始めた国も増えており、コメの輸出規制は現在、インド、エジプト、中国、ベトナム、カンボジアなどの国が行っています。コメの消費量の約20%を輸入に頼るフィリピンでは、ベトナムの輸出規制の影響で深刻なコメ不足に陥っています。国民のデモも起きており、このままコメの値上がりを解消できないと、政権にも影響を及ぼしかねません。
オーストラリアは干ばつの影響で小麦の生産量が例年の半分に激減しました。この影響でエジプトでは主食のパンの原料である小麦価格が高騰し、暴動に発展しました。オーストラリアの減産分はアメリカからの輸出でなんとか対応できましたが、この影響でアメリカの小麦在庫率は2000年当時の約40%に比べ、10%と最低水準まで落ち込みました。このような動きは、資金の投資先を探している国際投資グループの動きを誘い、市場に投機的なマネーが流入することになります。結果として穀物の相場はさらに高騰することになるでしょう。
肉食の増加も食糧危機の原因に
食生活が豊かになると肉食が増える傾向にあります。この肉食の増加も食糧危機の一因となります。
現在の世界の人口は、約62億人ですが、世界の穀物の総生産量は年間約20億トンあります。これを一人当たりで割れば300キロ以上もの量になります。もし公平に世界中に穀物を分配することができれば世界中から飢餓がなくなるだけの充分な量です。しかし、この穀物の多くは牛などの肥育に回され消費されます。肉牛には牧草を食べて育ったグラスフェッドという種類と、穀物を食べて育ったグレンフェッドという種類があります。脂肪のサシが入っておいしく価格も高いのはグレンフェッドの方ですが、この肉牛を育てるためには肉1キロについて8キロのトウモロコシが必要になります。つまり、肉を食べるということは、その8倍の穀物を消費しているということで、大変エネルギー効率の悪いことでもあるのです。
世界では、飢餓に苦しむ人々が大勢いるのですが、一方、先進国や新興国の食生活は豊かになり、肉食がふえることで、人を養う穀物の量はますます減り続けています。
クルマが人類の食糧を奪う、バイオ燃料
ある大手食品メーカーのトップは、バイオ燃料の原料として小麦やトウモロコシなどを使うことは、世界の食糧危機を加速することになると警告しました。それによると、石油製品需要の増加分20%をバイオ燃料で代替すると、食用に回す穀物はなくなってしまうということです。
バイオ燃料についての懸念は他からも表明されており、2007年には国連の食糧の権利に関する特別報告官が、食糧危機の回避策として、バイオ燃料の開発を5年間凍結するという案を提唱しています。バイオ燃料に関しては、今後は食糧以外の原料を使った生産法の開発などの研究を推進する必要があるでしょう。
世界的な食糧価格の高騰に対しては、世界銀行と国際通貨基金(IMF)が緊急支援に乗り出すことを決定しました。7月に北海道で開催される洞爺湖サミットでも、この問題を取り上げることが決まるなど、食糧危機は国際的にも深刻に受け止められています。
世界各国で食糧が高騰

穀物の生産・輸出国でも、自国の食糧を確保するために輸出規制を始めた国も増えており、コメの輸出規制は現在、インド、エジプト、中国、ベトナム、カンボジアなどの国が行っています。コメの消費量の約20%を輸入に頼るフィリピンでは、ベトナムの輸出規制の影響で深刻なコメ不足に陥っています。国民のデモも起きており、このままコメの値上がりを解消できないと、政権にも影響を及ぼしかねません。
オーストラリアは干ばつの影響で小麦の生産量が例年の半分に激減しました。この影響でエジプトでは主食のパンの原料である小麦価格が高騰し、暴動に発展しました。オーストラリアの減産分はアメリカからの輸出でなんとか対応できましたが、この影響でアメリカの小麦在庫率は2000年当時の約40%に比べ、10%と最低水準まで落ち込みました。このような動きは、資金の投資先を探している国際投資グループの動きを誘い、市場に投機的なマネーが流入することになります。結果として穀物の相場はさらに高騰することになるでしょう。
肉食の増加も食糧危機の原因に
食生活が豊かになると肉食が増える傾向にあります。この肉食の増加も食糧危機の一因となります。
現在の世界の人口は、約62億人ですが、世界の穀物の総生産量は年間約20億トンあります。これを一人当たりで割れば300キロ以上もの量になります。もし公平に世界中に穀物を分配することができれば世界中から飢餓がなくなるだけの充分な量です。しかし、この穀物の多くは牛などの肥育に回され消費されます。肉牛には牧草を食べて育ったグラスフェッドという種類と、穀物を食べて育ったグレンフェッドという種類があります。脂肪のサシが入っておいしく価格も高いのはグレンフェッドの方ですが、この肉牛を育てるためには肉1キロについて8キロのトウモロコシが必要になります。つまり、肉を食べるということは、その8倍の穀物を消費しているということで、大変エネルギー効率の悪いことでもあるのです。
世界では、飢餓に苦しむ人々が大勢いるのですが、一方、先進国や新興国の食生活は豊かになり、肉食がふえることで、人を養う穀物の量はますます減り続けています。
クルマが人類の食糧を奪う、バイオ燃料
ある大手食品メーカーのトップは、バイオ燃料の原料として小麦やトウモロコシなどを使うことは、世界の食糧危機を加速することになると警告しました。それによると、石油製品需要の増加分20%をバイオ燃料で代替すると、食用に回す穀物はなくなってしまうということです。
バイオ燃料についての懸念は他からも表明されており、2007年には国連の食糧の権利に関する特別報告官が、食糧危機の回避策として、バイオ燃料の開発を5年間凍結するという案を提唱しています。バイオ燃料に関しては、今後は食糧以外の原料を使った生産法の開発などの研究を推進する必要があるでしょう。
世界的な食糧価格の高騰に対しては、世界銀行と国際通貨基金(IMF)が緊急支援に乗り出すことを決定しました。7月に北海道で開催される洞爺湖サミットでも、この問題を取り上げることが決まるなど、食糧危機は国際的にも深刻に受け止められています。
飽食やめ自給率向上へ努力を、コメ活用へ指針決定
一方、こうした世界的規模の食料価格の高騰の中で、日本の食料の安定供給をどう図るべきかが大きな課題となっています。その指針となる「21世紀新農政2008」が、今月(2008年5月)、食料・農業・農村政策推進本部(本部長・福田康夫首相)でまとめられました。これは農水相が主催する有識者会議、「食料の未来を描く戦略会議」のメッセージを基にしたもので、国内で100%自給可能なコメをパンや麺の原料や飼料として活用することや、食品の製造工程で排出される食品残さの飼料化の促進などが打ち出されました。
2007年1月の衆院本会議で公明党の太田昭宏代表は、食料自給率の低下に関し、「食料安全保障の観点から由々しき事態」として、耕作放棄地対策や意欲ある農業者支援、さらに食品残さを飼料として活用するエコフィードの一層の推進などを主張しました。早急に、全国的な普及・啓発と具体的な取り組みを進めなければなりません。
指針ではまず、人口増加や経済発展、それに砂漠化の進行と異常気象の頻発や水資源の不足などによって、国際的な食料供給が不安定化している状況を指摘。わが国独自の世界食料需給予測モデルの開発などに取り組むことで、国内外の食料事情に関する情報の把握・提供体制の強化を打ち出した。また、食料自給率の向上と、農業に関する国際交渉の戦略的な対応によって、わが国の食料安全保障を確保するとしました。
1960年度に79%(カロリーベース)あったわが国の食料自給率は、国民所得の向上に相反して、2006年度には39%と半減しました。主な原因は、食の西欧化と“飽食”です。肉類の消費は1960年度と比べて5倍強、油脂類も3倍強に増えました。先にも述べましたが、肉類の生産には餌として大量の穀物が必要で、牛肉1キログラム当たりでは、トウモロコシに換算すると11キログラムにもなります。膨大な穀物消費を自前でまかなうためには、今の2.5倍の農地が必要ですが、耕作地はあまりに狭い現実があります。結局、今の豊かな食卓を支えるために、小麦や大豆、トウモロコシを海外から大量に買い付けることが、食料価格をつり上げる一因ともなっています。
深刻な「食べ残し」
さらに深刻なのは、「食べ残し」の問題です。国内の食品廃棄物は、2004年に世界が貧困国に行った食料援助量の約3倍に当たる、年1900万トンに達しています。しかも、家庭から出る生ごみの4割は、食べ残し、あるいは手付かずのまま捨てられた食品です。肥・飼料としてリサイクルできる割合の高い産業ごみと違い、腐敗や異物混入の恐れがある家庭ごみは再利用もできません。
コメやパンがあまりに高価なため、手が出ずに飢えにあえぐ世界の人々。“飽食”ともいえる私たちの生活をもう一度、真摯に見なおす時が来ています。
参考:21世紀新農政2008〜食料事情の変化に対応した食料の安定供給体制の確立に向けて〜

2007年1月の衆院本会議で公明党の太田昭宏代表は、食料自給率の低下に関し、「食料安全保障の観点から由々しき事態」として、耕作放棄地対策や意欲ある農業者支援、さらに食品残さを飼料として活用するエコフィードの一層の推進などを主張しました。早急に、全国的な普及・啓発と具体的な取り組みを進めなければなりません。
指針ではまず、人口増加や経済発展、それに砂漠化の進行と異常気象の頻発や水資源の不足などによって、国際的な食料供給が不安定化している状況を指摘。わが国独自の世界食料需給予測モデルの開発などに取り組むことで、国内外の食料事情に関する情報の把握・提供体制の強化を打ち出した。また、食料自給率の向上と、農業に関する国際交渉の戦略的な対応によって、わが国の食料安全保障を確保するとしました。
1960年度に79%(カロリーベース)あったわが国の食料自給率は、国民所得の向上に相反して、2006年度には39%と半減しました。主な原因は、食の西欧化と“飽食”です。肉類の消費は1960年度と比べて5倍強、油脂類も3倍強に増えました。先にも述べましたが、肉類の生産には餌として大量の穀物が必要で、牛肉1キログラム当たりでは、トウモロコシに換算すると11キログラムにもなります。膨大な穀物消費を自前でまかなうためには、今の2.5倍の農地が必要ですが、耕作地はあまりに狭い現実があります。結局、今の豊かな食卓を支えるために、小麦や大豆、トウモロコシを海外から大量に買い付けることが、食料価格をつり上げる一因ともなっています。
深刻な「食べ残し」
さらに深刻なのは、「食べ残し」の問題です。国内の食品廃棄物は、2004年に世界が貧困国に行った食料援助量の約3倍に当たる、年1900万トンに達しています。しかも、家庭から出る生ごみの4割は、食べ残し、あるいは手付かずのまま捨てられた食品です。肥・飼料としてリサイクルできる割合の高い産業ごみと違い、腐敗や異物混入の恐れがある家庭ごみは再利用もできません。
コメやパンがあまりに高価なため、手が出ずに飢えにあえぐ世界の人々。“飽食”ともいえる私たちの生活をもう一度、真摯に見なおす時が来ています。
