5月23日、民主党など野党4党は、長寿医療制度(後期高齢者医療制度)廃止法案を参院に提出しました。
明確な対案を示さないで、批判の多かった老人保健制度にただ戻すだけという、この廃止法案の提出は極めて無責任と言わざるを得ません。
確かに、長寿医療制度の法案が成立して、1年半以上の期間があったにもかかわらず、国民や当事者であるお年寄りへの説明が徹底できなかったことへの反省は大いに必要です。また、私ども公明党も与党の一員として、もっと所得の低い方への配慮や障害を持ったお年寄りへの対応など、積極的に発言していくべきだったと反省しています。今、6月中旬の2回目の年金からの保険料天引きを前に、政府与党は負担軽減策や年金天引きのあり方など、運用面の改善を大胆に検討しているところです。
長寿医療制度は、お年寄りの医療制度が安定していけるよう、国庫負担、若い人たちの負担を明確にしていくことに、最大の眼目があります。この改革なしには、老人保健法、特に高齢者の加入割合が高い国民健康保険制度が破たんしてしまうことは、火を見るより明らかな状態です。
24日付の三大紙には、長寿医療制度廃止案に対する批判の声が掲載されました。
毎日新聞は「廃止法案を出した野党に注文がある。新制度を廃止した後の対案を早く示してもらいたい。行き詰まりつつあった従来の老人保健制度に代わる高齢者医療制度の創設を検討すると与野党で決めていたはずだ。廃止して元の制度に戻すという案では国民は納得しない。野党の医療改革への熱意が感じられないからだ。民主党は記者会見で『できるだけ早く党内で新制度を議論して制度設計したい』との考えを示したが、対案の提出時期は明らかにしなかった。対案を出さなければ、議論は深まらない」と、対案無き民主党の姿勢を厳しく糾弾しています。
また、朝日新聞は「廃止法案は、野党が多数を占める参院で可決されても、与党が多数の衆院では通る見込みがない。それでもあえて出したのは、この制度への不信や憤りを追い風に、福田政権を揺さぶることができると考えたからに違いない」と、民主党の廃止法案がそもそも高齢者の医療をどのように変革するかを問う法案ではなく、『政局』そのものの為にする法案であることを喝破しています。
さらに、読売新聞は「野党4党が後期高齢者医療制度の廃止法案を参院に提出した。ところが、新制度を撤廃した後にどうするのか、対案がない。とりあえず、従来の老人保健制度を復活させるという。これでは、あまりにも無責任ではないか」と糾弾。その上で、「新制度(長寿医療制度)で老人保健制度の問題点は改善しており、再び後退するのは望ましくない。利点は適切に評価してさらに磨き、欠点を迅速に改めていくべきだろう」と、国会のおける与野党の建設的な議論を促しています。
明確な対案を示さないで、批判の多かった老人保健制度にただ戻すだけという、この廃止法案の提出は極めて無責任と言わざるを得ません。
確かに、長寿医療制度の法案が成立して、1年半以上の期間があったにもかかわらず、国民や当事者であるお年寄りへの説明が徹底できなかったことへの反省は大いに必要です。また、私ども公明党も与党の一員として、もっと所得の低い方への配慮や障害を持ったお年寄りへの対応など、積極的に発言していくべきだったと反省しています。今、6月中旬の2回目の年金からの保険料天引きを前に、政府与党は負担軽減策や年金天引きのあり方など、運用面の改善を大胆に検討しているところです。
長寿医療制度は、お年寄りの医療制度が安定していけるよう、国庫負担、若い人たちの負担を明確にしていくことに、最大の眼目があります。この改革なしには、老人保健法、特に高齢者の加入割合が高い国民健康保険制度が破たんしてしまうことは、火を見るより明らかな状態です。
24日付の三大紙には、長寿医療制度廃止案に対する批判の声が掲載されました。
毎日新聞は「廃止法案を出した野党に注文がある。新制度を廃止した後の対案を早く示してもらいたい。行き詰まりつつあった従来の老人保健制度に代わる高齢者医療制度の創設を検討すると与野党で決めていたはずだ。廃止して元の制度に戻すという案では国民は納得しない。野党の医療改革への熱意が感じられないからだ。民主党は記者会見で『できるだけ早く党内で新制度を議論して制度設計したい』との考えを示したが、対案の提出時期は明らかにしなかった。対案を出さなければ、議論は深まらない」と、対案無き民主党の姿勢を厳しく糾弾しています。
また、朝日新聞は「廃止法案は、野党が多数を占める参院で可決されても、与党が多数の衆院では通る見込みがない。それでもあえて出したのは、この制度への不信や憤りを追い風に、福田政権を揺さぶることができると考えたからに違いない」と、民主党の廃止法案がそもそも高齢者の医療をどのように変革するかを問う法案ではなく、『政局』そのものの為にする法案であることを喝破しています。
さらに、読売新聞は「野党4党が後期高齢者医療制度の廃止法案を参院に提出した。ところが、新制度を撤廃した後にどうするのか、対案がない。とりあえず、従来の老人保健制度を復活させるという。これでは、あまりにも無責任ではないか」と糾弾。その上で、「新制度(長寿医療制度)で老人保健制度の問題点は改善しており、再び後退するのは望ましくない。利点は適切に評価してさらに磨き、欠点を迅速に改めていくべきだろう」と、国会のおける与野党の建設的な議論を促しています。
野党の廃止法案 「75歳」線引きの是非こそ論じよ
毎日新聞(社説2008/5/24)
医療制度のあるべき姿とは何なのか。後期高齢者医療制度が混乱したのは、その答えをあいまいにしたまま走り出したためだ。この失政を認めたうえで、政治家には「高齢者を切り捨てるのか」という声を正面から受け止めて、国会で医療改革の議論を早急にやり直すことを求めたい。
民主党など野党4党は23日、同制度の廃止法案を参院に提出した。来年4月に制度を廃止して、その後は元の老人保健制度に戻すという。これに対して、与党は新制度の改善策を近くまとめる。低所得者への保険料軽減策などが盛り込まれる予定だが、制度の骨格は変えない方針だ。
問われているのは75歳以上を独立の医療保険制度に入れたことの是非だ。そもそも病気になるリスクの高い高齢者だけを対象にした制度は保険原理にはなじまない。多くの元気で健康な人が病気の人たちを支えるというのが保険制度だが、後期高齢者制度はそうはなっていない。
75歳以上を独立させて医療制度を作ったことをどう判断するのか。与野党は、まずここの問題から議論をし直すべきだ。医療改革を政争の具にすることが絶対にあってはならない。
廃止法案を出した野党に注文がある。新制度を廃止した後の対案を早く示してもらいたい。行き詰まりつつあった従来の老人保健制度に代わる高齢者医療制度の創設を検討すると与野党で決めていたはずだ。廃止して元の制度に戻すという案では国民は納得しない。野党の医療改革への熱意が感じられないからだ。民主党は記者会見で「できるだけ早く党内で新制度を議論して制度設計したい」との考えを示したが、対案の提出時期は明らかにしなかった。対案を出さなければ、議論は深まらない。
与党は負担軽減策など、改善策を細切れで出すことで新制度の骨格は維持したいという考えだが、その場しのぎの対策では高齢者の不信を払しょくできるとは思えない。
高齢化によって増えていく医療費は、現役、高齢世代と公費でまかなうしかない。高齢者にも保険料を負担してもらわなければ、その分は現役世代が背負うことになる。公費をどこまで入れるかも含め、医療費負担のあり方を議論することが必要だ。
日本の総医療費を対国民所得比でみると、先進国のなかでは低い水準だ。しかし、政府・与党は医療費水準の抑制を続け、医師不足をはじめ医療崩壊ともいえる現象が起きている。
政府・与党の医療費抑制に危機感をもった高齢者は「早く死ねというのか」と本質を突いた批判をした。これに応えて、与野党は本気で議論をすべきだ。
高齢者医療―「廃止」の怒りも分かるが
朝日新聞(社説2008/5/24)
4月に始まったばかりの後期高齢者医療制度の廃止法案が、民主、共産、社民、国民新党の野党4党から参院に提出された。
来年4月から以前の老人保健制度に戻す。それに先立ち、保険料の天引きをやめ、会社員の扶養家族からは保険料を取らない。これが柱だ。
廃止法案は、野党が多数を占める参院で可決されても、与党が多数の衆院では通る見込みがない。それでもあえて出したのは、この制度への不信や憤りを追い風に、福田政権を揺さぶることができると考えたからに違いない。
たしかに、新制度に対する反発はすさまじい。「うば捨て山のような制度だ」「ほとんどの人の負担が減るなどという政府の説明はうそばかりだ」という声がお年寄りだけでなく、多くの国民の間に広がっている。
年金が宙に浮いたり、消えたりして不信感が高まっていたところへ、年金からの保険料の天引きが始まったのだから、怒りが爆発したのも無理はない。厚生労働省の担当者が解説書で「終末期の医療費を抑えることが大事だ」と無神経に書いたこともお年寄りの気持ちを傷つけ、怒りを広げた。
しかし、制度を「元に戻せ」と言うだけでは、問題は解決しない。
老人保健制度に戻れば、多くのお年寄りは市町村の運営する国民健康保険に再び入ることになる。今後、お年寄りが増えた時に、いまでも厳しい国保の財政が維持できるとは思えない。
後期高齢者医療制度も老人保健制度も、お年寄りの医療費を会社員の健康保険組合や国保の保険料と税金で支えることに変わりはない。だが、老人保健制度では、お年寄りの保険料も現役世代の保険料もまぜこぜで、だれがどう負担しているのかが分かりづらかった。現役世代の負担が際限なく膨らみかねないという不満もあった。
こうしたあいまいな点をはっきりさせておこうというのが新制度だ。
野党の中にも、以前の制度がよいとは思わないという声がある。民主党はかねて会社員や自営業者、お年寄りを一緒にした保険制度を主張している。しかし、一元化には、年金と同じように、どうやって自営業者らの所得をつかむかといった問題がある。
一方の与党も、野党を無責任だと非難するだけでは済まない。新制度を維持するというのなら、収入の少ない人の保険料を減免するのはもちろんのこと、保険料が上がったり、治療が制限されたりするのではないかというお年寄りの心配を取り除く必要がある。
いま税金の投入は後期高齢者医療費の半分と決められているが、必要に応じて増やすことを明確に打ち出すべきだ。財源問題から逃げていては、「うば捨て山」という批判がいつまでもつきまとい、制度が定着しない。
後期高齢者医療 混乱を増すだけの廃止法案
読売新聞(社説2008/5/24)
後期高齢者医療制度はその呼称を含め、配慮を欠く面が目立つ。不備や欠陥など問題点が多いことも確かだ。
しかし、新制度のすべてを否定して白紙に戻すというのは、混乱をさらに広げ、長引かせるだけだろう。
野党4党が後期高齢者医療制度の廃止法案を参院に提出した。ところが、新制度を撤廃した後にどうするのか、対案がない。とりあえず、従来の老人保健制度を復活させるという。これでは、あまりにも無責任ではないか。
生じている混乱の原因は、厚生労働省や自治体の対応のまずさにある。主に75歳以上が対象の大きな制度変更なのに、高齢者に配慮した説明や準備を怠ってきた。
そのため、感情的な反発が先行している。まずは冷静に、制度の長所と短所を検討の俎上(そじょう)に載せるべきだろう。ともかく廃止せよ、議論はそれからだ、という野党の姿勢は、拙劣の上に拙劣を重ねるようなものだ。
新制度が周知されていないのと同様、従来の老人保健制度に大きな問題があったこともまた、十分に知られていない。政府・与党はそこから説明が不足している。
これまでも75歳以上の人は、主に市町村の国民健康保険に加入しながら、老人保健制度の枠組みに入っていた。その医療費が膨らんだ分は、企業の健保組合などが拠出金で支援していた。
ただし、現役世代がどこまで支援するかが明確ではなかった。後期高齢者の医療費が必要以上に膨らまぬよう、誰が責任を持って取り組むかも判然としなかった。保険料も、市町村の財政事情によって大きな格差が生じていた。
老人保健制度の歪(ゆが)みが限界にあるのは与野党の共通認識だったはずだ。2000年の医療制度改革で参院が関連法案を可決した際、共産党を除く各党で「早急に新たな高齢者医療制度を創設せよ」との付帯決議を採択している。
新制度で老人保健制度の問題点は改善しており、再び後退するのは望ましくない。利点は適切に評価してさらに磨き、欠点を迅速に改めていくべきだろう。
野党の攻勢に、政府・与党は大あわてで制度の見直し作業に入った。ところが、負担増になる高齢者の救済策として、バラマキのように幅広い減免措置を検討している。これもまた拙劣だ。
政治が右往左往する間にも高齢化は進む。必要なのは建設的な議論であり、目先の人気取りで拙劣な対応を競うことではない。