5月28日から30日までの3日間、アフリカ支援策を話し合う「アフリカ開発会議」(TICAD/Tokyo International Conference on African Development)が横浜市で行われました。「アフリカ開発会議」は、日本が主体となって国連機関や世界銀行などと共催する国際会議。第1回は1993年、その後5年ごとに開催され、今回で4回目になります。
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アフリカ52カ国の代表、42カ国の元首が出席
 会議にはアフリカ42カ国から首脳級を含む52カ国の代表が参加しました。また、アジア諸国や欧米の支援国、関係国際機関の代表者も参加しています。
 日本は今回の「アフリカ開発会議」の重要テーマとして「成長の加速化」「人間の安全保障の確立」「環境・気候変動問題への対処」を掲げました。 具体的には今後5年間で、アフリカ向けの政府開発援助(ODA)と、日本の投資額をそれぞれ倍増することを約束し、さらに緊急食糧援助に加えて、コメ生産を10年で倍増する支援も行います。また、日本の技術指導により、干ばつに強く収量も多いコメの生産を普及させるなどの中長期的な農業の発展に寄与する方針です。地球温暖化対策でも日本は資金援助を約束しました。
レアメタルの産出国としても大きな将来性が
 「アフリカ開発会議」のもともとの目的は、アフリカ諸国に対して日本の支援姿勢を打ち出し、アフリカ地域との友好関係を強化することでした。しかし近年は、原油や希少金属(レアメタル)を産出する地域としてアフリカが注目を集め、また国連に多くの議席を持つ地域としても、日本にとって重要な存在になりつつあります。
 レアメタル(希少金属)とは非鉄金属の中でも、流通量・使用量が少ない希少な金属のことです。私たちが聞いたことのあるものとしては、リチウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケルなどがそれに当りますが、近年ではハイテク機器などに必須のものとなり、その重要性が増しています。
 現在日本に輸入されているレアメタルの中でも、クロム、マンガン、バナジウムはアフリカからの輸入割合は極めて高く、日本はクロム57%、マンガン44%、バナジウム68%を南アフリカから輸入しています。南アフリカだけではなく、他のアフリカ諸国でもレアメタルが埋蔵されている地域は多い見込みで、今後開発が進めばアフリカ諸国は資源供給国としてもさらに重要な存在になるでしょう。資源輸入国の日本としては、それらの国と友好関係を深め、開発に参加し、相手にとって重要な国となる必要があります。
高まるアフリカ諸国の重要性
参考写真 アフリカに対しては中国やインドなども高い関心を示してしています。それらの国々も、将来の資源大国としてのアフリカ諸国に強いプレゼンス(存在感)を示すことを目的としています。
 特に中国は胡錦濤国家主席や温家宝首相らがアフリカを訪問するなど、トップ外交を展開しています。またインフラなどの整備に関しても大規模な援助を行っており、友好国としての関係を深めながら資源獲得へと着々と手を打っています。
 「アフリカ開発会議」と同じような趣旨の会議は中国も開催しており、2006年に北京で開かれた会議には、約40のアフリカ諸国から大統領や首相が参加し、中国のアフリカに対する存在感の大きさを示しました。
 経済発展が始まったとはいっても、まだまだアフリカ諸国には貧困や紛争があり、エイズなどさまざまな感染症に苦しむ地域がたくさんあります。7月の洞爺湖サミットでも、アフリカ支援は主要議題の一つになります。「アフリカ開発会議」の成果をサミットにつなげていくことが重要になります。
最終日には「横浜宣言」を採択:日本のクールアース推進構想に賛意
 最終日に採択された「横浜宣言」では、食糧価格の高騰に対し「TICAD参加者は、アフリカにおける貧困削減に与える悪影響に対して特別な関心を払った」と指摘。人口の増大や貧困、失業をアフリカ諸国における「最も喫緊の課題」と位置づけました。
 その上でアフリカの成長を加速化させるためには「元気で繁栄したアフリカに向けたパートナーシップの構築」が不可欠とし、今後5年間のアフリカ支援のロードマップを示した「横浜行動計画」においてインフラ網の整備や貿易・投資の促進、農業・農村開発などに対する、日本などの支援策を明記しました。
 環境・気候変動問題については、アフリカ諸国が「気候変動の悪影響および異常気象の頻発に対して極めてぜい弱」とし、「アフリカ諸国は依然として緩和および適応能力に関して備えが不十分」と指摘。アフリカ諸国を含む全ての国々が「2050年までに温室効果ガスの排出を半減するという目標に向けて行動する必要がある」との認識の下、行動計画において政策立案や緩和、クリーンエネルギーへのアクセス、気候変動への適応分野での支援を強化していくと表明しました。
 アフリカ諸国は、日本の「クールアース推進構想」を評価するとともに、100億ドル規模の資金支援を含む「クールアース・パートナーシップ」を歓迎するとしました。
第4回アフリカ開発会議に出席したアフリカ各国の元首級参加者
・南アフリカ(ムベキ大統領)・ガーナ(クフォー大統領)・ブルキナファソ(コンパレオ大統領)・ガボン(ボンゴ大統領)・ルワンダ(カガメ大統領)・ケニア(キバキ大統領)・マリ(トゥーレ大統領)・エチオピア(メレス首相)・スーダン(バシル大統領)・リベリア(サーリーフ大統領)・タンザニア(キクウェテ大統領)・エリトリア(イサイアス大統領)・セネガル(ワッド大統領)・ギニアビサウ(ビエイラ大統領)・マダガスカル(ラバロマナナ大統領)・中央アフリカ(ボゼジ大統領)・マラウイ(ムタリカ大統領)・モロッコ(ファシ大統領)・ベナン(ヤイ大統領)・ボツワナ(メラフェ大統領)・コモロ(サンビ大統領)