6月12日、政府と自民、公明の与党両党は、長寿医療制度(後期高齢者医療制度)について、与党高齢者医療制度に関するプロジェクトチーム(PT)が10日にまとめた(1)低所得者の保険料軽減を7割から最大9割に拡大(2)世帯主らによる保険料納付の肩代わりを認めること――などを柱にした運用改善策を正式決定しました。
 政府・与党決定では、低所得層を対象とした保険料軽減対策について、2009年度以降は、7割軽減世帯のうち、年金収入が80万円以下の人の保険料の均等割を9割軽減にし、年金収入が153万〜210万円程度までの人の所得割を50%程度減額します。08年度については、7割軽減世帯は均等割が8.5割減額され、年金収入153万〜210万円程度の人の所得割を原則一律50%軽減することになります。
 年金からの保険料天引き(特別徴収)については、これまで国民健康保険料を確実に支払っていた人は、自分の口座からの引き落としを選択できる。また、保険料の肩代わり納付は、年金収入が180万円未満の人で、申請をすれば世帯主や配偶者の口座から引き落としができるようになります。
 このほか、(1)医師が患者と延命治療の方針などを事前に話し合い、文書に残した場合に支払われる診療報酬「終末期相談支援料」は、凍結を含め必要な措置を取る(2)罰則的な措置がある「資格証明書」の発行は、相当な収入があるにもかかわらず保険料を納めない悪質な場合に限り行う――ことなどを明記しました。
長寿医療の改善策:低所得者の負担を一層軽減
坂口力公明党副代表が語る
Q:最近の世論調査では、廃止よりも「制度を維持して改善せよ」との声が多くなっている。
A:公明党は長寿医療制度の骨格は正しいと、重ねて主張してきました。しかし、運用面でいくつかの問題点が出 ているため、その改善に取り組んでいるところです。世論調査でも私たちの考えが支持されつつあると理解して います。
Q:厚生労働省の実態調査について、「低所得者ほど負担が増える」と報じられた。従来の説明と逆だが。
A:私は厚労省の説明が悪かったと思います。もう少し丁寧に、その内容を説明しておくべきでした。
全国的には低所得の皆さんの保険料額が低下していますが、一方で東京23区や名古屋市のような都市部では、 高所得の人の方が保険料が下がっていたケースもありました。厚労省が発表した内容も全体的には間違いないと 思いますが、与党プロジェクトチームが改善した部分を含めると、全体で75%の世帯で保険料が下がることに なります。
Q:与党としての負担軽減策のポイントは。
A:主な点は大きく分けて二つです。一つは低所得の方に対して、さらなる保険料の軽減を行うこと。今まで年間 80万円ほどの所得の方で、月額約1000円となっていましたが、今回の改善で350円前後になります。そ れから年間210万円くらいまでの所得の方に対しても、軽減策が行き届くようにしました。
もう一つは東京都、高知県、沖縄県のように、今まで一般財源から国保(国民健康保険)財政にたくさんの財源 を投入してきた地域は、保険料を比較すると今回の方が上がったという方が多くなっています。私たちはこうし た地域にも配慮して、引き下げを行いました。
その結果、例えば東京都は下がった人が44%だったところが、(改善後は)71%まで上昇します。全国的に も地域格差がかなり改善されるのではないでしょうか。
Q:天引きについても改善が求められたが。
A:公明党は皆さんの気持ちを十分に汲み、年金からの天引きだけではなく、他にも保険料を納めていただく方 法はないか、と主張してきました。
その結果、本人の通帳やご主人、息子さんの通帳からの振替も可能になり、選択の幅を広げました。
Q:「保険料の軽減措置の判定基準を、世帯単位から個人単位に」という意見があったが、この取り扱いは入らな かった。
A:地方議員の皆さんからも、たくさんの声が寄せられました。私たちも正論だと思います。
できなかった理由は、介護保険や国民健康保険といった社会保障の他の分野でも、世帯単位の所得の中から計算 することになっているからです。しかしこの(長寿医療)制度は個人で入るものであり、息子さん家族と同居し ている方にも、今回からは保険料を払ってもらうわけですから、支払いも切り離して計算するというのが正しい と思いますので、今後も努力していきます。
Q:軽減策に必要な予算は、今年度だけで500億円超。財源はどうするのか。
A:低所得の皆さんの保険料を下げる必要があるので、約500億円は覚悟しなければなりません。財源は他の制 度との重複をなくすなど工夫することで絞り出せると思いますが、どう生み出していくのか十分に検討して、制 度改革を進めていきたいと思います。
Q:与党の制度改善に対して、凍結してから見直せとの意見もある。
A:凍結論や廃止となると、以前の老人保健制度が復活し、地域格差や所得格差の問題が再び発生します。だから 凍結も廃止もできません。今の線を進めながら、運用面を直していくことが正しいのです。