地球温暖化対策の一環として、コンビニの深夜営業を規制しようという自治体が現れました。京都市や埼玉県などが24時間営業の自粛を求めていく方針です。こうした自治体の真意は、コンビニだけではなく、いまの日本の「なんでも便利、なんでも24時間」というライフスタイルを見直して、CO2排出削減につなげたいということと考えられます。
温暖化対策でコンビニ深夜規制、21自治体で「検討」
読売新聞(2008/6/21)
 地球温暖化対策の一環として、コンビニエンスストアなどの深夜営業の規制を検討する動きが全国の自治体に広がりつつある。14都府県と7政令市が深夜規制を検討中か、検討を予定していることが読売新聞の調査で分かった。
 深夜規制の動きに対して、コンビニ業界は防犯機能や災害時のライフライン機能などを主張して猛反発している。年中無休、24時間営業のコンビニは消費者のライフスタイルに定着しているだけに、規制の妥当性を巡って今後、議論を呼びそうだ。
 読売新聞が全国47都道府県と17政令市を対象に行った調査によると、埼玉県と京都市、東京都と神奈川県、横浜市の5都県・政令市がすでに深夜規制を検討中、宮城県、福島県など11府県・5政令市が規制の是非を含めた検討を予定している。
 検討中の自治体のうち、埼玉県はすでにコンビニに24時間営業の自粛を要請することを表明。神奈川県も「環境負荷の少ない販売方法という趣旨は条例に盛り込みたい」(環境農政部)としている。
 検討予定の自治体でも、「条例による営業規制は有効な手段」(仙台市)、「民間部門に対する何らかの対策が必要」(佐賀県)と規制の有効性を指摘するところが多い。長野県は2007年の条例で深夜営業自粛を求める努力規定を設けている。
 一方、「民間の自由な経済活動を規制していいものか」(高知県)、「特定の業者だけを悪者にしても根本的な解決にはならない」(千葉市)と規制に否定的な自治体も多かった。
 規制の動きに対してコンビニ業界は反発を強めている。日本フランチャイズチェーン協会の土方清会長(サークルKサンクス会長)は20日、「24時間営業は生活者のライフスタイルの変化に対応した結果だ」と反論。午後11時〜午前7時まで営業を中止しても日本の温室効果ガスの0・009%の削減にとどまるとの業界試算を示したほか、深夜多くの女性がコンビニに駆け込むなど防犯効果があると強調した。

参考写真 各自治体が温暖化対策に積極的に取り組むのは、7月の洞爺湖サミットを契機として温暖化対策を進めたいという背景があります。政府は2008年初めに「環境モデル都市」の募集を行っており、京都市はこれに応募する際の取り組みとして「コンビニ等の深夜営業の見直し」をテーマのひとつにあげました。この中には現在の“夜型のライフスタイル”の見直しということがあります。京都市の地球温暖化対策室によれば、コンビニだけではなく、飲食店など深夜営業なども含んで、総合的な施策を考えるということです。
 埼玉県でも、コンビニに深夜営業の自粛を求めることになりましたが、この背景にも県の「地球温暖化対策地域推進計画」があります。コンビニだけではなく、24時間営業の自粛やネオンサインの消灯も求めていく考えで、深夜営業の見直しは、温暖化防止のためにいまからやらなくてはならないレベルにきているという認識があります。
埼玉県:コンビニなどに深夜営業の自粛要請へ
毎日新聞(2008/6/16)
 埼玉県は、二酸化炭素(CO2)排出削減のため、コンビニエンスストアやスーパーなどに深夜営業の自粛を要請する方針を固めた。年度内にまとめる地球温暖化対策地域推進計画(改訂版)に盛り込む。県によると、同様の自粛要請は「都道府県では例がない」という。
 県によると、農村部にあるコンビニのフランチャイズ店で客が来ないのに本社の指示で店を開けているケースが多い。県は「CO2削減の効果は大きくないが、夜型ライフスタイルを変革する象徴的な位置づけになる。何らかの形で自粛を要請する」としている。
 県が設置している有識者による地球温暖化対策地域推進計画に関する専門委員会では、委員から、深夜営業自粛の義務化を求める声が出ている。だが、「消灯しても冷蔵庫が稼働していては効果が薄い」「深夜営業は雇用の受け皿になっている」など慎重論もある。
 県は、要請対象を不採算店に絞るかや、閉店せずに照明を暗くしてもらうだけにするかなど、具体的な要請内容を検討している。
 埼玉県の方針に各社は「地域住民の合意があれば従う」(大手コンビニ関係者)との声がある一方、▽深夜の納品も多く、日中は物流コストがかかる(ローソン)▽「深夜営業のコンビニは交番代わり、防犯の役割もある」(セブン−イレブン・ジャパン)−−などの反発もある。

 東京都では石原都知事が記者会見で「自粛していくことが好ましい」と、この方向を支持する考えを表明しました。
新聞アンケートでは「深夜営業なしでいい」が83%
 コンビニは、毎日3500万人以上が利用しているといわれています。朝日新聞が2008年1月7日に発表したアンケート調査では、 「コンビニ店などの深夜営業がなくてもかまわない」と回答した人が84%にも達しました。この調査は「暮らしと地球環境」をテーマにした「定期国民意識調査」で、「地球温暖化を防ぐためなら○○のない世の中でもがまんできるか」という問いに対して、○○に当るものを選ぶものです。その結果、地球温暖化防止のために「がまんできるもの」として選ばれたのは、1位「自動販売機」84%、2位「コンビニ店などの深夜営業」83%という結果が出ました。
業界からは反対意見が続出
 日本フランチャイズチェーン協会(JFA)は、6月20日に記者会見を行い、「コンビニは社会的なインフラとなっており、24時間営業のビジネスモデルは継続する。その上で各社が判断する」と、自粛要請に反発しました。JFAによると、
・午前7時から午後11時まで、一日16時間に営業を短縮しても、冷蔵・冷凍庫は稼動し続けるから、その分のエネルギー消費量は変わらない。
・物流が営業中の昼間に集中するため配送効率が落ち、配送車のCO2排出量が増える
などの理由から、差し引き4%程度のCO2削減にとどまると試算しています。これは日本全体の排出量の0.009%を削減する量に過ぎないとのことです。
 また、24時間営業のコンビニは、すでに社会のインフラとして定着しているとして、コンビニの防犯拠点としての役割もあげています。2007年度に女性のコンビニへの駆け込みは1万3000件以上あったそうで、深夜営業をやめればそのような機能も失われてしまうという意見です。
深夜営業をやめると社会への影響は
 さらん、JFAによれば、全国のコンビニは2008年2月末時点で4万2246店あり、そのうち24時間営業を行っている店舗は3万9878店と、94.4%にのぼります。コンビニの深夜時間帯の売上げは約15%、閉開店間際の売り上げ減も考慮すると、16時間営業にした場合、約20%の売上げ減になるそうです。
  コンビニで働いている人は約100万人、これに配送や弁当の製造などでコンビニ業界で収入を得ている人を入れると約130万人が働いていることになります。協会は、営業時間を短縮した場合、大量の既存雇用者が失職することになると懸念しています。
具体的な取り組みはこれからの課題
 現実的な問題として、自治体がコンビニに対して、深夜営業の自粛を強制することは困難です。条例を制定して規制することも考えられますが、憲法も含めて上位法との整合性をとることは難しいと思います。
 現在は行政側が、深夜営業を含むいまのライススタイルのあり方に一石を投じたという段階です。実際に深夜のライフスタイルを考え直し、温暖化防止につなげていけるかどうかは、今後の施策にかかっています。最近話題になっているサマータイム導入なども含めて、生活のタイムシフトをどう実現していくか、今後の大きな課題となると思われます。
参考:コンビニエンスストアの深夜営業に関するJFAの考え方について