参考写真 7月15日、燃料費などの高騰による窮状を訴え、全国の漁船20万隻が一斉に休漁しました。日比谷では全国から3000人を超える漁業関係者が集結して決起集会を開催、政府に燃料費補てんなどの対策を求めてデモ行進しました。これまでイカ漁船の休漁やマグロ漁船の休漁など、同じように燃料代の高騰に対する休漁はありましたが、全国の漁船が一斉に休漁したのは始めてのことです。一般の販売店、消費者への影響はどうだったのでしょうか、また解決すべき問題とは何なのか、整理してみたいと思います。
怒り頂点「出漁できん!」 県内漁業者も気勢
茨城新聞(2008/7/16)
休漁、港は終日閑散
 燃料費高騰を受け、一斉休漁した十五日、都内で開かれた全国集会では、怒りも頂点に達した県内漁業者らがシュプレヒコールを上げた。水色のタオルを頭に巻いた漁師たちは「出漁できん!」などと書いたプラカードを掲げ、霞が関をデモ行進した。一方、漁港では全船がイカリを下ろしたまま。市場も終日静まり返った。小売店では「現段階で大きな影響はないが、今後休漁日が増えれば分からない」として、対応を検討している。
 集会には本県から四十人が参加。十三日に実施した県内一斉休漁や決起集会に続き、全国から集まった漁業者と一緒に「国は漁業を守れ」「食卓を守れ」などとシュプレヒコールを上げた。
 強い日差しが照り付ける中、鉢巻き姿の漁師らは「燃油暴騰で出漁できないぞ」などとこぶしを突き上げながらデモ行進した。
 一方、港ではすべての漁船が係留されたまま。普段なら水揚げや競りでにぎわう市場も終日閑散とした。
 神栖市のはさき漁協に所属する小浜史久さん(38)は「いつもなら沖でヒラメやカレイを捕って水揚げしているころだ。原油関連のマネーゲームの犠牲になるのは納得いかない」と憤った。
 日立市から参加したのは、稲川徳雄さん(73)と勝雄さん(38)親子。「出漁しても赤字。油代のためだけに働いているようだ。なんとか親子で乗り切りたい」と窮状を訴えた。
 茨城沿海地区漁連によると、県内の漁船約千百隻が休漁。出漁すれば得られた水揚げ額は、海水面漁業だけで一億一千万円程度と試算される。
 食卓への影響は、一日の休漁ではさほど大きくないとみられている。スーパーのカスミは「品薄にならないよう産地と連携していきたい」としている。

築地市場への影響は
 東京の築地市場では、15日の水揚げがないため市場は品薄気味となり、いけすの鮮魚などを加えても入荷は6割程度にとどまり、通常は20〜30分間かかる競りもわずか5分で終了したそうです。一斉休漁ですぐに影響を受けるのは、アジ、サバ、イワシ、サンマ、イカなどの近海物の魚です。これらの魚は傷むのが早く、冷凍物より鮮度のいい生のものが市場で好まれているため、漁船が漁に出ないとすぐに手に入らなくなってしまいます。一方、マグロなどは冷凍技術の発達である程度は保存しておくことができるので、すぐには在庫がなくなることはありません。魚の流通過程では、業者による多くのストック機能があり、15日の一斉休漁が大きな影響を及ぼすことはありません。しかし、この問題を見過ごしていいわけではなく、これを契機に漁業者の訴えを真摯に受け止め、流通、原油高などさまざまな方面で解決していけるよう、総合的な施策が求められています。
漁に出たら赤字になる
 いま、漁業に携わる人々は、燃料代の高騰と獲れた魚の価格の安さとの板挟みで苦しんでいます。海へ出るための燃料は車のガソリンと同じように急激に値上がりしているのに、魚の価格は一向に上がらず、漁に出るたびに赤字になってしまうことが少なくないからです。どのぐらい遠くに漁場があるかによって、かかる燃料代はさまざまですが、あるイカ釣り漁船の例でいえば現状の1回の出漁経費は、燃料代15万円。これに氷代、箱代などを入れれば、20万円の売り上げはほとんど残らないといいます。
なぜ魚の価格が上がらないのか
 漁業者が手にする魚の代金が上がらないのは、魚の価格を決める仕組みにあります。漁船が獲った魚は港の市場に水揚げされ、競りによって値段が決められますが、ここで魚を獲った当事者は価格決定に口を挟むことはできません。つまり仲買人の意思によって魚の値段は決められるわけです。では仲買人は、どのような根拠で値段を付けるのか。その根拠は「消費地の市場ではこのぐらいの値段がつくだろう」という経験による推測です。同じように消費地の市場では、「街の鮮魚店やスーパーに卸すにはこのぐらいの値段が妥当だろう」という見通しで価格が決まります。最後に鮮魚店やスーパーの担当者が「これぐらいの値段なら売れるだろう」という判断のもと購入し、値段がつけられ店頭に並ぶわけです。消費者は高いと思えば買いません。もし売れ残ったら、次回からはお店の人はもっと安い値段の魚を探すことになります。
魚の価格を決めているのは消費者
 つまり、漁業者が受け取る魚の代金は、最終的には消費者が決定しているということになります。しかも途中に現地の市場、消費地の市場、街の鮮魚店、スーパーの鮮魚売り場とたくさんの手を経るため、その間のマージンも多く、消費者が100円で買う魚1匹で漁業者が手にするのは24円というのが実態です(水産庁2005年の調査)。農業では小売価格の40%が生産者の手に入るといわれていますから、漁業は農業に比べても不利といわざるをえません。では、農業のように産直化などを進めて消費者と直結すればいいのかというと、ことはそれほど単純ではありません。魚は農産物よりもはるかに傷みやすく漁獲も不安定ですから、ひとつの漁業者や港単位でも消費者に安定して供給することはできません。それらを調整して全国の水揚げを集め、安定して供給する役割を果たしているのが消費地の卸売り市場なのです。また、消費者の魚離れも価格が上がらない原因になっています。卸売り関係者は、いま以上に価格を上げていけば、消費者の魚離れが加速するのではないかと危機感を持っています。漁業者の窮状を解決するには、まず、コストを圧迫している原油高の問題を一刻も早く解決することと、流通と消費者が魚の価格についてもう一度考え直すことも必要です。
(この記事は公明党のホームページの内容を参照して記載しました。写真は7月2日、大洗漁協西念幸吉組合長から話を聴く井手県議ら公明党議員です)